元SES担当者が語る!SES契約管理でシステムに必要な機能は?準委任契約との違いも解説
ビーブレイクシステムズの基幹業務パッケ-ジ(ERP)であるMA-EYES(エムエ-アイズ)はプロジェクト型で業務を行う企業を得意としており、その中でもシステム開発業への導入が過半数を占めます。
システム開発業のプロジェクト(契約)形態で多いのは、請負、準委任、派遣、物販です。
本記事は、主に準委任契約を主とした業務システムの導入に関してどのような機能が必要か?という観点で、元SES営業担当である筆者の経験をもとに解説します。
目次
SES契約とは?
SES契約はシステム・エンジニアリング・サ-ビス契約の略で、システムエンジニアをクライアント企業に常駐させ、システム開発や保守業務を行う契約形態です。中小企業やプロジェクト型の業務において、必要なスキルを持つ技術者を外部から活用できることが大きなメリットです。
これにより、自社での人材育成や派遣の手間を省くことが可能となります。
SES契約の特徴的な点として、システムエンジニアは常駐先の企業から直接的な指揮命令を受けない構造があります。
SES契約と準委任契約との違い
SES契約は準委任契約の一つです。準委任契約という言葉は法律上の名称で、準委任契約のIT業界に特化したサ-ビス形態のことをSES(エスイーエス)契約と称します。
”準”がつかない”委任契約”は法律行為の委任、例えば弁護士へ訴訟行為の代理を依頼するといった場合の契約になりますが、準委任契約とは、法律行為ではない行為、今回で言えばシステム開発の委託を行う場合の契約になります。
準委任契約には「履行割合型」と「成果完成型」の2種類があります。
- 履行割合型:
業務時間や技術の提供に報酬を支払う契約形態です。 - 成果完成型:
2020年4月1日に追加された契約形態で、成果物の納品をもって報酬が発生します。
SESのなかでも従来の履行割合型であれば、なにかプログラムやドキュメントと言った成果物を納品する義務が課せられるわけではなく、業務の遂行自体が目的となりますが、成果完成型では、納品物の納品が必要となります。
請負契約など、その他の契約については以下の記事をご覧ください。
・請負?準委任?派遣?IT業でよく見る契約形態と気をつけるべきポイント
SESを管理するシステムにはどのような機能が必要か
SES契約を管理するためのシステムには以下のような機能が必要になります。
- 契約への人の割当(アサイン)
- 精算方法の設定
- 勤務時間と精算対象時間の分離
- 工数による請求金額と人件費の計算
それぞれについて、具体的にどのようなものか解説していきます。
契約への人の割当(アサイン)
SES契約は「誰が作業するのか」ということが決まっている(契約と人が紐づいている)契約形式です。従って、プロジェクトへ作業担当者を設定する機能が必須です(*ここでは、契約=プロジェクトと定義します)。この段階で最適なシステムは、人材サ-ビス向けやプロジェクト型業務向けの製品等に絞られてきます。
また、プロジェクトの収益性を計算するためには、人件費の予定を管理する必要があります。
ここでポイントとなるのは、予定人件費は、1時間や1ヶ月のような期間の平均単価で計算します。単価は人ごとに変わりますし、同じ人でも昇進その他の理由により、年度内でも変動します。
また、顧客との契約内容とも無関係です。例えば、「契約は4月から6月の3ヶ月で、契約金額は一定だが、6月から給料が上がる」場合、“5月までは時間単価3000円、6月からは3100円”というような期間ごとの単価設定が、人ごとにできる必要があります。
SES契約の複雑な精算方法を適切に管理するためには、契約ごとの詳細な条件をシステムで把握し、容易に操作できるインターフェースが求められます。
精算方法の設定
SES契約は時間(工数)による従量課金が一般的です。派遣契約の場合は完全な時給が基本ですが、SES契約においては「基準時間を設けてその枠内であれば固定」という契約が多いです。
例えば契約条件についてお客様の担当者に尋ねた場合、「80の140~180の中割です」と回答があったとします。その場合は以下の計算で月額が決まります。
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他の業界ではあまり聞いたことがない計算方法ですが、このような形式がSES契約では一般的となっています。おそらく月ごとの営業日の違いや、1~2日の休暇のプラスマイナスを加味しても金額が一定になるようにした結果でしょう。
契約条件は、作業時間に関わらず固定の場合もあれば、時間幅が150~200だったり、中割ではなく上下割(140時間未満の場合は140で割り、180時間より多い場合は180で割った金額を単価とする)、180~200時間までの増加単価と200時間以上の増加単価が異なっていたり、契約内容毎に様々なパタ-ンがあります。
ごく稀にしか無いパタ-ンまで含めた全ての精算方法にシステムが対応している必要はないですが、基準時間制や固定などの時間精算の方法、基準時間、基準時間外の単価設定などの機能があると、SESの管理は容易になります。
勤務時間と精算対象時間の分離
SESでの精算工数時間と、エンジニアの就業時間は必ずしも一致しません。客先での仕事以外がなければほぼイコールになりますが、例えば人事面談のために自社で打ち合わせした時間は、就業時間には含まれますが、顧客に請求できる時間ではありませんので、差異が生じます。
これに対応するには以下のいずれかの機能が必要です。
①勤務表を二重で管理できること
②勤務表は1つだが、工数管理できること
①を標準機能で実現している製品はそもそもあまりないと思われるのですが、勤務表は契約先の独自の形式や、契約先が持っている管理システム等もありますので、わざわざ二重で管理してもシステム外の管理がどうしても多く残ることになり、システム化のメリットが薄れてしまいます。
従って、②の対応を行う会社が多いです。
具体的には、9:00に客先に出社し、17:30に客先を出て本社に向かい、19:00まで別の業務を行った場合、昼休みが1時間として総作業工数は9時間。そのうちSES契約内の作業時間は7時間半、その他の時間は1時間半となり、それぞれ工数を割り振ることで勤務時間と工数を分けて管理することができます。
こうした工数管理機能により、クライアントとの契約内容に基づいた適正な請求がスムーズに行えるようになります。
工数による請求金額と人件費の計算
これまで紹介した機能があれば、
- プロジェクト(契約)にエンジニアを割り当て
- 精算条件を登録し
- プロジェクトごとに工数を登録する
ということができます。
結果として、入力された情報から請求金額と人件費の計算が可能となります。
エンジニアの実績や作業時間に基づく請求金額の自動計算機能があれば、手動での調整が必要なくなるためミスを防止し、作業効率が大幅に向上します。
SES契約を管理する上で必須の機能と言えるでしょう。
あったら嬉しい機能
必須の機能以外にも、下記のような機能があるとより便利になるのではないでしょうか。
パ-トナ-を管理する機能
自社の社員のみならず、他の会社の社員をSES契約で受け入れる場合(パ-トナ-と呼びます)も発生します。そういった場合には、プロジェクトに社員と同様にパ-トナ-をアサインし、工数から支払予定金額を計算したりする機能があると便利です。
上記機能があればプロジェクトの収支をパートナーへの支払(外注費)も併せて確認できるため、赤字になるリスクを減らすこともできます。
翌月精算機能
会社によっては、「精算分は翌月の請求書で反映」というケースもあります。これは、月末まで作業して契約元の企業が労働時間を計算し請求すると、締めに間に合わなくなるので、一旦当月分は翌月に回す、という形を取っていると思われますが、このような翌月精算にも対応した機能があると便利になります。
分析機能
各エンジニアの実績を自動で算出し、月次レポートを生成する機能もあると便利です。経営陣への報告やプロジェクトの進捗確認が容易になり、戦略的な意思決定をサポートできます。
ぜひお問い合わせください
今回の記事ではSES管理に必要なシステムについて解説しました。当社のクラウド型ERP、MA-EYES(エムエーアイズ)は今回ご紹介したSES向け機能の多くを備えています。
また、MA-EYESはSES契約に特化した機能だけでなく、プロジェクト全体を効率的に運営するための様々な機能も搭載しています。例えば、迅速な請求書発行機能やリアルタイムでの進捗状況や工数データを可視化する機能などを備えています。
SES契約を管理する業務システムをお探しの企業ご担当者様は是非お気軽にお問い合わせください。
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筆者プロフィール
- 営業職。カレーが好きです。得意技は福岡日帰り出張。
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