第六回 請負?準委任?派遣?IT業でよく見る契約形態と気をつけるべきポイント

第四回 工夫次第で意外な効果も IT企業における勤怠/工数管理の意義とポイントにて、社外勤務をされている社員の勤怠管理について触れましたが、社外勤務をしている人は、自分がどのような契約でお客様先での業務を行っているか意識していますか。

 

今日のIT事業は、仕事を発注するお客様との契約という観点でみた場合に、大きく分けて3種類に分けることができます。「請負契約」、「準委任契約(SES)」、「派遣契約」の3種類です。エンジニアが日々行う業務は一見同じに見えても、契約形態によって適用される義務、それによって求められる管理内容は異なります。今回はこれら3つの契約形態の違いと、特に準委任契約と派遣契約において気をつけたいポイントについて見ていきたいと思います。

請負、準委任、派遣 その違いとは

 

IT業に従事したことのある方であれば、「請負」「準委任」「派遣」といった契約形態を耳にしたことのある方が多いのではないでしょうか。この3つの契約形態は、いずれも「仕事を依頼するお客様(企業)」「仕事を依頼される企業」「仕事を依頼される企業に雇用されている、実際の作業者(労働者)」という3つの立場が出てきますが、「仕事の完成責任」および「労働者への指揮命令系統」が異なります。

請負契約

請負契約は、労働の結果として仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)です。そのため、3つの契約の中で唯一、仕事を依頼される側が「仕事の完成責任」を負います。しかし、仕事の完成までのプロセスは仕事を依頼される側によってコントロールされるため、仕事を依頼する側は、実際に仕事を行う労働者に対して仕事の指揮命令はできません。

準委任契約

準委任契約は、一定の期間において、定められた業務の処理を行う趣旨の契約となります。一見請負契約と同じように思われますが、仕事の完成責任は負わず、仕事の遂行に対して善管注意義務(=依頼を受けた人の職業や専門家としての能力、社会的な地位などから考えて通常期待される注意義務)を負います。

請負契約と同様、業務処理のプロセスや仕事を依頼される側によってコントロールされるため、仕事を依頼する側は、実際に仕事を行う労働者に対して仕事の指揮命令はできません。

IT業でよく耳にするSES(システムエンジニアリングサービス)契約は、この準委任契約にあたります。

派遣契約

派遣契約は、業務の処理を、仕事を依頼する側のために労働に従事させることを目的としている契約です。仕事の完成責任は負いませんが、上記2つと違うのは、労働者が、仕事の指揮命令を、自身が雇用されている仕事を依頼された側(=派遣元)の企業からではなく、仕事を依頼する側(=派遣先)から受けるという点です。

つまり、労働者は、作業を行うにあたり、自身が所属する企業からではなく、企業の取引先=お客様から、仕事の指揮命令を直接受ける形になります。

 

契約形態による管理内容の違い

 

さて、以前の記事で触れたエンジニアの社外常駐は、基本的には「準委任」あるいは「派遣」の契約形式のときに発生します。しかし、契約が準委任であるか派遣であるかによって、管理すべき内容が異なってきます。

労働管理

給与の支払いや有給の付与・消化など、基本的な労働関係法については、準委任および派遣のどちらの契約にもとづいていても、基本的には雇用主である「仕事を依頼された側」が責任を負います。

 

一方、労働時間の管理や労働者の安全管理の責任は、契約によって所在が異なります。

 

準委任契約の場合は、雇用主である「仕事を依頼された側」に管理責任が発生します。したがって、社外勤務の社員の労働時間や安全管理を、何らかの形で雇用主が行う必要があります。

派遣契約の場合は、「仕事を依頼する側」である派遣先企業に管理責任が発生します。

つまり、派遣契約の場合、労働時間は派遣先で管理されるものの、給与の支払いや休暇取得の管理は派遣元が行うため、労働管理の役割分担が行われます。

 

 

その他、派遣事業に特有の管理内容

各派遣先に応じた労働管理以外にも、派遣事業を行う企業は、派遣事業を適切に行い労働者の保護やキャリアアップを促進するため、下記に関する管理を行うことが定められています。

 

  • 期間制限に対する管理(派遣先事業所単位、派遣労働者個人単位)
  • 雇用安定措置
  • キャリアアップ措置
  • 均衡待遇の措置
  • 各種法定帳票の提出(労働者派遣事業報告書、派遣元管理台帳、派遣先管理台帳など)

 

違反したらペナルティも 偽装請負に注意

 

さて、この「準委任」と「派遣」契約ですが、案件ごとにどちらの契約が適用されているか、注意して対応しなければなりません。というのも、準委任契約で間違った運用をすると、「偽装請負」とみなされペナルティを受けてしまうからです。

 

SES業務(準委任契約)の仕組み

準委任契約は、前述した通り、お客様先で作業を行う場合でも、仕事に関する指揮命令は労働者を雇用している「仕事を受けた側」の企業が行わなくてはなりません。具体的には、お客様から受けた仕事内容をもとに、仕事を受けた側の企業の管理者が、自社の労働者に対して業務の指示やその他の管理を行う、という構図になります。

 

 

偽装請負の状態

偽装請負とは、請負契約(=指揮命令は労働者を雇用している仕事を受けた側が行う)であるにも関わらず、お客様(=仕事を依頼した側)が近くにいるなどの理由から、実質として指揮命令をお客様から受けてしまう状態を指します。

実際に作業を行う労働者の立場が弱くなってしまうケースが多いため、偽装請負へのチェックは厳しくなっています。契約書が請負契約であっても、お客様による指揮命令があった場合は偽装請負とみなされ、受注側、発注側ともにペナルティを受ける可能性があるので注意が必要です。

 

 

 

違法に派遣労働者を受け入れると直接雇用とみなされる!?

また、平成27年の派遣法改正により、違法派遣と知りながら労働者派遣を受け入れている場合には、違法状態が発生した段階において、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用の申し込みをしたものとみなす「労働契約申し込みみなし制度」が始まっています。契約内容と実態が乖離していないか、今まで以上に注意してみておく必要があります。

 

いかがでしたでしょうか。業務の様子は同じように見えても、契約形態によって管理内容等に大きく違いがあり、準委任契約と派遣契約の運用には注意が必要です。また、派遣法は2015年に改正があり、まさに今年2018年に経過措置の終了を迎えるものや、法改正後、はじめて具体的な影響がでるものなどがあるため、派遣事業に関わる方にとって大きな節目の年となっています。自社での管理は適切か、今一度見直してみてください。