第七回 「待ったなし」から、企業成長につながる管理まで 働き方改革を見据えた勤怠管理のポイント

2018年6月29日に働き方改革法案が成立し、いよいよ政府主導の働き方改革も本格化してまいりました。これまでの記事で、勤怠管理にまつわる個別の内容を取り上げてきましたが、今回はそれらをまとめつつ、働き方改革時代に求められる勤怠管理のポイントを考えていきたいと思います。

 

 

勤怠管理の義務化に関するポイント「情報の客観性」「実態管理」がますます重要に

 

 

第六回 正しく理解できていますか?勤怠管理と勤怠管理の「義務化」で、勤怠情報はより客観性が求められるものになることを述べました。タイムカードや自己申告ではなく、パソコンの使用時間やICカードによる出退勤の記録などに基づく勤怠管理が今後重要性を高めていくこととなります。

最近では、長時間労働による過労死が問題になるなかで、過労死の認定根拠として、こうした電子記録やメールの受信記録などの情報も用いられるようになりました。今までの管理方法を見直し、自社の勤怠管理で客観性が担保されているか、また、勤務状況の実態が把握できているかの確認が必要といえます。

 

 

残業時間の上限に関するポイント 36協定の見直しと長時間残業の早期発見

 

 

労働基準法改正により、今まで青天井だった特別条項つき36協定で締結できる残業時間に上限が設けられることとなりました。(詳細は第五回 今後の働き方に影響大?今知っておきたい労働基準法改正案とはを参照ください)特別条項つき36協定によって、今後設けられる上限を超えた残業時間を締結している企業は、速やかに条項を変更する必要があります。

また、残業時間の上限を超えないためには、普段からの勤務状況を確認し、必要に応じて業務量を調整できるような体制づくりを行うことが重要です。月末にならないと各人の勤務時間が分からない、といった状況は避け、月途中でも残業の多い社員に注意を向けることができる仕組みづくりが望ましいです。

 

働き方の多様化に対応した勤怠管理のポイント 自社で採用する働き方の整理と、自社運用に耐えうる勤怠管理の仕組みづくり

 

労働基準法の改正により、フレックスタイム制の一部制度変更や高度プロフェッショナル制度の創立など、変則的な勤務制度が拡張しました。また、多様な働き方を支援する取り組みとして、テレワークなどをはじめとした、場所を限定しない働き方が広まりつつあります。総じて、「働く時間」「働く場所」を柔軟に選べる方向へと変化しています。

一方で、勤怠管理は、そのような勤務時間と勤務場所が変化する社員に対しても、例外なく行う必要があります。また、法的に認められているとはいえ、新しく成立した勤務制度が、必ずしも自社にとって有益であるとは限りません。

したがって、どのような勤務制度が自社にあっているかは、個々の企業で検討していく必要があります。ポイントとしては下記のような点が挙げられます。

自社、あるいは担当者の業務・性格にあっているか

例えば、工場の稼働時間が正確に決まっている製造業などで、工場の作業員にフレックスタイム制を適用するよりは、シフト制のほうが望ましいかもしれません。また、外回りが多い営業と、自社で作業を行う経理担当とは、適用される制度が異なる可能性は大いにあります。また、自分のペースで仕事をしたほうが成果を発揮する社員もいれば、指示を細かく受けながら仕事をしたほうが成果を発揮する社員もいるでしょう。そのような業務特性、社員の特性をみながら、勤務制度を柔軟に選択できることが望ましいです。

社員が要望している、あるいは納得感をもって受け入れられる制度であるか

高度プロフェッショナル制度等に代表される、みなし労働時間制やその他変則的な勤務制度は、運用方法によっては長時間労働を生んでしまう危険性があります。また、テレワークなども、自分の仕事のスタイルによっては喜ばない社員もいます。

自社にとってより使用者と労働者の双方にメリットがある制度を作っていくためにも、意見を積極的に取り交わしていく必要があるでしょう。また、前例がなく影響度合いが読めない制度に関しては、まず一部に適用してみて様子をみることも得策です。

多様な働き方を実運用できるための制度や風土を整えることができるか

本来権利として認められている年休の取得をためらってしまう労働者が多い問題がとりざたされ、年休の確実な取得が求められるように労基法が改正されたように、制度は実際に活用されなければ意味がありません。そのためには、新たな制度を導入する背景の説明や、制度導入によって期待できる効果、制度の適用方法など、制度に関する情報の周知をしっかりと行うことと、新たな制度をためらわずに活用できる風土づくりが大切です。

特に中小企業においては、時間外労働を抑制する取り組みに対して厚生労働省から助成金やコンサルティングサービスを受けることが可能なケースもあります。このような国からの補助を契機として、自社の制度改革を進めていくのも手でしょう。

 

※参考 働き方改革推進を支援する助成金(時間外労働等改善助成金)

コース名

※コース名をクリックすると、それぞれの詳細情報が記載された厚生労働省のページへ移動します

取組内容の概要
時間外労働上限設定コース ・時間外労働の上限設定に取り組む

・週休2日制の導入に向けて休日を増加させる

勤務間インターバル導入コース 休息時間が9時間以上の勤務間インターバルを

導入する

職場意識改善コース 労働時間等の設定の改善により、

所定外労働時間の削減や

年次有給休暇の取得促進等を図る

団体推進コース 事業主等団体が、事業主に雇用される労働者の

労働条件改善のため、時間外労働削減や

賃金引き上げに向けた取組を実施する

テレワークコース テレワーク導入に向けた取り組みを実施する

多様な働き方に対応した勤怠管理が可能な仕組みを整えることができるか

多様な働き方を許容すれば、当然、それぞれの制度に合わせた勤怠管理が必要となり、業務が煩雑になります。従来の管理方法でもれなく管理ができるか、管理できない場合はどれだけの業務負担増が見込まれるか、あらかじめ確かめておく必要があります。特に今までエクセルやタイムカード等で管理を行っているのであれば、自社で取り入れようとしている勤務制度に対応したシステムを導入するのもよいでしょう。、勤怠情報に対してより客観性が求められていることへの対応につながりますし、勤怠管理業務そのものの効率化も期待できます。

勤怠情報の活用のポイント 生産性向上や健康管理にも

各従業員が日にどれだけ労働したかがわかる勤怠情報は、単なるデータとして残すのみでは惜しいものです。第四回 工夫次第で意外な効果も IT企業における勤怠管理の意義とポイントで、勤怠情報が原価情報の元データになるとお話したように、勤怠情報は工数情報や案件毎の売上情報等と結びつければ、働き方改革の要のひとつである「生産性の向上」を測る指標のひとつになります。

また、ストレスチェックの義務化など、企業における従業員の健康管理の重要性が高まっていますが、もともとの勤怠情報も、残業時間や休暇等の情報から社員の勤務状況を把握し、健康状態に異常がないかを測るヒントになります。

このような活用のポイントは、いかに実態に即した情報を得ることができるか、という点にあります。長時間労働が常態化し法令遵守の意識が低い企業だと、申告され、企業がデータとしてもっている労働時間と、実質的な労働時間に乖離があるケースが多いですが、これでは実態に即した適切な対処はできません。適切なデータを取得できる仕組みを取り入れること、また、場合によっては、労働者が実態に即した適切なデータを提供できるように、勤怠管理以外の部分(評価制度や風土など)を変える必要があるでしょう。

 

さて、ここまで働き方改革にともなって求められる勤怠管理のポイントをあげていきました。まとめると、

  • 客観的、かつ実態に即した適切なデータを、できるだけリアルタイムに取得すること
  • 自社の現状や社員の要望等をふまえて、働き方の仕組みを構築すること

この2つが大きなポイントとなります。

また、勤怠情報は、今後の会社経営を考えていく上での重要なデータとして活用していくことも可能です。働き方改革に伴い勤怠管理を見直す必要のある企業の方は、この機会に、一歩先へ進んだ勤怠管理のしくみを考えてみるのはいかがでしょうか。