加速する電子請求書 最近の動きとサービス紹介

どの企業にも発生する請求書の作成・受け取り。以前は紙でのやりとりが当たり前でしたが、近年では請求書やりとりをWEB上など電子で行う企業が増えています。さらに、テレワーク推進、電子帳簿保存法の改定、請求書フォーマット統一など、請求書の電子化を後押しする動きが多く出てきています。本記事では、電子請求書に関わりのある最近の動きと、実際に電子請求書サービスを検討する際のポイントや代表的なサービスを紹介します。

 

電子請求書とは

請求書を紙ではなく、PDFなどの電子データにて作成・受け渡しすることを指します。受け渡しの方法は、メール配信や専用システム上で行うなどのパターンがあります。電子請求書について、詳しくはもう請求書を紙に印刷し印鑑を押す必要はない?電子請求書とは~概要とサービス紹介~ をご参照ください。

 

電子請求書を後押しする動き

請求書の電子化には発行、送付にかかる作業工数および費用の削減、誤配送などの郵送トラブル防止、保管スペースの節約などのメリットがあり、導入する企業も増えていますが、最近はさらに請求書の電子化を後押しする動きが出てきています。今年の出来事を中心に4つ取り上げてみたいと思います。

 

1.テレワークの推進

新型コロナウイルス感染対策として、特に緊急事態宣言発令時には、多くの企業が出社制限やそのことに伴うテレワークでの業務遂行を推進しました。その中でテレワーク推進のボトルネックとなった業務のひとつに「紙の処理、ハンコ処理」があります。請求書をはじめとした証憑類を紙でやりとりしているために、作成や確認をしなければならない、社印を押印しなければいけないなど出社を前提とした紙+ハンコ業務がテレワークを大きく阻害していました。また、担当者の出社日数が減少したために請求処理が遅れる、受け取った側で紛失するというトラブルも増加したという話も耳にしました。

緊急事態宣言解除後は従来通りの出社前提に戻った企業もあるとはいえ、これからの働き方の選択肢として「テレワーク」は必ず残り、拡大すると見られています。請求業務に関係する方のテレワーク実施には、請求書電子化は必須事項ともいえるでしょう。

 

2.電子帳簿保存法の改定

請求書は、法律により保存期間が定められている証憑書類です。以前は紙での保存が義務付けられていましたが、電子帳簿保存法の制定により、一定の要件を満たした場合は電子データでの保存が認められるようになりました。電子帳簿保存は、以前は要件がとても厳しく実用が難しい状況でしたが、近年の相次ぐ改正により要件が緩和され、実施企業が増えています。2020年10月にも改正がありましたが、今回の改正は電子取引時の要件緩和がメインとなっており、電子請求書サービスを利用するのに有利なものとなっています。電子帳簿保存法改正について詳しくは電子帳簿保存法 2020年10月の改正とその対応について を参照ください。

 

3.官・民共同で請求書データ統一を推進

請求書やりとりを完全にデジタル化すべく、政府とソフトウェア企業など約50社により、請求書のデータ仕様統一に向けた協議が始まったとのニュースがありました(「請求書、完全デジタル化へ 仕様統一で政府・50社協議」2020年7月29日 日本経済新聞)。

請求書は取引先によってデータ仕様が異なる場合があり、受け取り側が各請求書にあわせて会計システムに情報を登録する、または発行側が特定の顧客専用仕様で請求書を発行するなどの手間が発生しています。データ仕様の統一が実現すれば、システム間連携が容易になり、電子請求書サービスをはじめとしたシステム利用による業務効率が向上することが期待できます。

 

4.インボイス制度への対応

上記で紹介した請求書データ統一検討の背景には、2023年10月より開始する適格請求書保存方式(インボイス制度)もあります(参考:国税庁 消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂))。インボイス制度とは、商品の仕入時にかかる消費税を控除することができる要件を定めたもので、低減税率など、複数の税率ごとに税額を表示するなどに対応した適格請求書の発行が必要となります。現在の請求書には消費税率の表示は義務付けられていないため、インボイス対応のために現在利用している請求書のフォーマットを変更する、業務フローを変更するなどの負担が予想されています。前述したデータ統一も、インボイス制度の開始をにらみ2023年にとりまとめることをも目標としているようですが、いずれにしてもインボイス制度への対応を目的としてシステム改修や変更を検討する企業もあるかと思います。これを機に、一歩進んで請求書の電子化に取り組むのも一考の余地がありそうです。

 

請求書サービス比較のポイントと代表的なサービス紹介

代表的な請求書サービスにはどのようなものがあるのでしょうか。「請求書を電子で発行し、取引先に配信する」ことがサービスの中心とはなりますが、配信の方法や周辺業務への対応など、サービスによって特長があります。サービス検討時のポイントとあわせて、代表的なサービスをご紹介します。

 

ポイント1:対応業務の範囲

どのサービスも基本的に「請求書を電子で発行し、配信する」という点は共通しています。しかし、請求後に発生する入金の照会・消込まで管理する、「発行」だけではなく「受け取り」の管理を行う、あるいは販売管理~請求書発行・送付までが1システムになっている…など、何を対象業務としているかはサービスによって様々です。また、販売管理システムや会計システムをすでに利用しているのであれば、例えば「請求データの確定までは販売管理で行い、請求書の作成、配送は電子請求書サービスで行う」など、対応業務の切り分けや連携を検討する必要があります。

電子請求書サービス機能と周辺システム・データ

ポイント2:請求書内容やフォーマットの変更要否

先ほど「請求データの統一を検討する動きがある」と紹介しましたが、現時点では請求書に記載している内容やフォーマットは企業によって様々で、得意先から指定されているケースもあるかと思います。ただし、電子請求書サービスはクラウドサービスとして提供されているものが多く、請求書内容やフォーマットを変更できない製品もあります。電子請求書サービスで提供される内容で対応できるか、対応できない場合はどのように運用するかなどを検討する必要があります。

 

ポイント3:電子請求書サービスを利用できない得意先への対応

電子請求書サービスは、発行側はもちろんのこと、受け取り側にも請求書回収のタイムラグ防止や紛失時の対応が容易などのメリットがあります。ただし、上にあげたフォーマットなどの問題、社内規定などで紙での発行受領が義務付けられている、先方担当者の抵抗が強い等の理由により、従来通り紙での請求書やりとりが必要になる得意先もあると思います。

その場合、理由や件数にもよりますが、従来通り担当者が手作業で郵送作業を行うとかえって手間がかかります。電子請求書サービスによっては、紙でのやりとりが必要な得意先に対して郵送代行サービスを提供しているものもあるので、あわせて検討してみるとよいでしょう。また、はじめのうちは電子請求書を受け入れてもらえなくとも、重ねて案内するうちに受け入れ先が増えていく傾向にありますので、長期的な視点で費用対効果を考えることをお勧めします。

 

それでは、実際の電子請求書サービスを3つほど紹介いたします。

BtoBプラットフォーム請求書(株式会社インフォマート)

40万社以上の利用実績を持つBtoBプラットフォームの電子請求書サービスです。請求書の発行だけでなく、請求書の受取も電子化することができ、請求業務を完全にペーパーレス化することが可能です。郵送が必要な得意先に対しての郵送代行サービスも提供しています。また、銀行口座と連携することで入金消込を自動化することも可能です。

BtoBプラットフォーム請求書についてはもう請求書を紙に印刷し印鑑を押す必要はない?電子請求書とは~概要とサービス紹介~ でも詳しく紹介しています。

 

楽楽明細(株式会社ラクス)

業務効率化につながる様々なクラウドサービスを提供しているラクス社の電子請求書サービスです。得意先の要望にあわせてWEB、メール、郵送、FAXでの請求書送付が可能です。請求書だけではなく、納品書・⽀払明細・領収書などの発行が可能です。自社で利用している帳票レイアウトを再現できる点も特長的です。

 

詳細情報は製品サイトをご確認ください。

https://www.rakurakumeisai.jp/

 

請求管理ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

オンライン決済からスタートし、企業のお金まわりの業務をロボット化するサービスを開発・提供するROBOT PAYMENT社の電子請求書サービスです。メール/郵送での請求書作成・送付に対応します。会計システムだけでなく、SalesforceやkintoneといったSFA、CRMシステムとのAPI連携が可能です。また、クレジットカード決済、口座振替、コンビニ決済といった決済管理にも対応しています。

 

詳細情報は製品サイトをご確認ください。

https://www.robotpayment.co.jp/service/mikata/

 

テレワーク推進や請求データ統一などの後押しを受け、請求書の電子化は今後も広がっていくものと思われます。今まで自社では電子請求書の導入は難しいと考えていた企業も、再考の余地があるかもしれません。改めて、請求書発行をはじめとした一連の業務を見直してみてはいかがでしょうか。

 

※BtoBプラットフォーム契約書は株式会社インフォマートの商標または登録商標です。
※楽楽明細は株式会社ラクスの登録商標です。
※請求管理ロボは株式会社ROBOT PAYMENTの商標または登録商標です。
※その他記載されている会社名・商品名などは、各社の商標および登録商標です。

※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2020年11月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。

筆者プロフィール

Ren.
Ren.ビーブレイクシステムズ
ERP「MA-EYES」RPA「WinActor」をはじめとするITツール営業担当。好きなお茶はジャスミン、お酒はハイボール、ロシア産飲料はウォッカではなくクワス。

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