電子請求書ツールの適用に得意先を巻き込む4つのテクニック

「せっかく電子請求書ツールを導入したのに、得意先が対応してくれない…」
「請求書の電子化を検討しているけど得意先が受け入れてくれるか分からず、かえって作業が増えないか不安…」

そんな悩みを抱えていらっしゃいませんか?

このようなお悩みを抱えている企業に向けて、“電子請求書の活用を得意先に受け入れてもらうためのテクニック”を紹介します。本記事は“得意先”に対するアプローチ方法やメリットに焦点を当てていますが、仕入先相手でも使えることがありますので、参考にしてみてください。

なお、電子請求書に関する概要や電子帳簿保存法については、「もう請求書を紙に印刷し印鑑を押す必要はない?電子請求書とは~概要とサービス紹介~ 」、「働き方改革を知る(7)業務効率化の1ヒント 電子帳簿保存法とは 」をご覧ください。

 

請求書の電子化は、自社と得意先双方にメリットがある

請求書の電子化は自社だけでなく得意先にもメリットが多く、上手く活用できれば双方にとってプラスになります。得意先にとっての主なメリットを見ていきましょう。

債務情報を早期に正しく確認できる

紙で請求書を受領する場合は、郵送されてから届くまでのタイムラグが当然発生します。しかし、電子請求書の場合、請求情報をメールや電子化ツールにて即日渡すことが可能なため、内容を確認できるようになるまでのタイムラグはかなり短くなります。

更に請求書の電子化ツールを利用した場合、請求書発行側の機能には請求済み、請求予定などのわかりやすい請求書発行状況の表示機能やアラート機能などがあります。

これにより、例えば請求書発行側で、請求のタイミングが得意先や商品によって異なっていて管理が煩雑になり、請求情報が追い切れない…といった状況を防ぐことができます。請求書受領側(ここでは得意先)としては、例えば、月末で締めてから遅れて請求書が届くという事態を回避したり、原本の到着が間に合わないため、先にFAXでコピーを送ってもらうことを依頼しなければならない、という状況も回避できるのです。万が一遅延が発生してしまっても、電子対応していれば紙で郵送するよりも早く対応することができるでしょう。

 

データ入力作業や請求書開封作業の手間を削減できる

紙で請求書を受領し、そのデータを何かしらのシステム等に入力する場合、システムに紙のデータを転記する作業が発生します。届いた紙の請求書データと、システムに入っている請求予定のデータが合っているか確認する作業もあります。まず紙の情報を確認しデータ化する工程から始めなくてはならないのは手間ですし、紙で届いた請求書をいちいち開封して請求情報を突合するというのも、骨の折れる作業です。

データで請求情報がもらえれば1から手入力する手間はなくなりますし、勿論郵送物の開封作業もありません。もしかすると、余裕ができた分はRPA等のITツールと組み合わせ、データの二次利用に繋げることもできるかもしれません。

電子請求書の専用ツールを利用する場合は、ツールの利用料が新たなコストになるのではという意見もあるかもしれませんが、導入企業(契約企業)は有料でもその得意先は無料で利用できるサービスは多く存在します。
取り扱っている請求書が大量にある企業ほど、データ入力作業や請求書開封作業のコストをカットできることは大きなインパクトになるでしょう。

 

このように請求書を受け取る得意先にもメリットがあり、請求書の電子化は自社と得意先共にプラスになります。

 

対応してもらえない4つの主な理由

ではなぜ未だに請求書の電子化について前向きに検討してもらえないケースが発生するのでしょう。電子請求書のやりとりを受け入れてもらえない代表的な理由をいくつか考えてみました。

そもそもPCがない

そもそもPCがなかったり、あるいはPCはあってもアクセスが制限されていたり、本社にしかPCがなく、別の場所に勤務している承認者がWebでデータを確認できないなども考えられます。
このように、PC環境によってどうしても対応できないケースはあります。

 

必要な書類の雛形が特殊

請求書のフォーマットが独自のものなので電子請求書ツールを利用されては困るというケースがあります。こちらも珍しくはありません。自社で独自の管理方法を生み出し柔軟に対応することが難しいような企業は、電子化は困難かもしれません。

 

会社として紙での送付や受領が義務付けられている

“会社として紙での送付や受領が義務付けられている”は、一度は聞いたことのある台詞ではないでしょうか。データでのやりとりが可能になるように法整備は進んでいます。しかし、重要書類は紙で確認・受領・送付ということが社内の規定として決まっている企業は多いです。

 

なんだかよく分からない

この理由は、主に得意先担当者の電子化に対する熱量の低さから来るものではないでしょうか。

例えば、電子帳簿保存法を理解されていないかもしれないですし、余計に手間が増えて面倒くさくなってしまうのではと懸念されているかもしれません。または、電子化しなくてはならないと思いつつも、うまく使えるか不安で一歩を踏み出せない状況にいらっしゃるかもしれません。

 

これらの理由の中で、4つめの「なんだかよく分からない」がネックなのであれば自分たちでもできることはありそうです。

 

得意先に活用を受け入れてもらうための4つのテクニック

それでは、どのように対応すれば電子化を受け入れてもらいやすくなるのでしょうか。
受け入れてもらうためのテクニックとして、4つほど列挙します。

ご案内は言い切りの言葉で記載する

請求書の電子化についてご案内する際、得意先に気を遣って「~へのご対応をご検討頂きたく思います。」といった、曖昧さの残る表現やお伺いを立てるような表現をするのはやめましょう。「~に変更することとなりましたのでお知らせいたします。」、「恐れ入れますが、ご対応の程宜しくお願い申し上げます。」といったように、電子化することは決定事項であることを明確にすることが大切です。

曖昧な表現にしてしまうと、「対応しなくても何とかやり過ごせそう」な印象を与えてしまい、得意先担当者の方がなかなか対応してくれない可能性もあります。
電子化することは決定事項であることをしっかりお伝えした上で、どうしても対応が難しい企業については個別対応する、という流れに持っていけるようにしましょう。

ただし、関係性を悪化させないよう言葉は慎重に選ぶ必要がありますし、協力して頂く立場であることに変わりはないので、その後のフォローはしっかり行えるように準備しておきましょう。

 

問い合わせサポート体制の構築と簡易操作マニュアルを作成する

受け入れ前の得意先の不安を解消し、運用を始めてからもスムーズに対応してもらうために、問合せのサポート体制の構築や簡易操作マニュアルを作成します。

得意先にとって今までのフローを変えることは大きな負担です。上手く運用に乗らず苦手意識を持たれてしまい、「もう使わない」と思われてしまうこともあるかもしれません。
そうならないためにも、得意先から質問されそうな内容は予め洗い出しておき、すぐに答えられるようにしておきましょう。FAQ(よくある質問)として資料にまとめ、得意先に公開するのも良いかもしれません。また、電子請求書の専用ツールを利用する際は、操作に関する簡易マニュアルを作成することも有効に働きます。ITツールの利用に慣れていない方もいるので、ログインの仕方など基本的な操作からスクリーンショット付きで説明書きがあると安心できます。

少し手間のかかる作業ではありますが、電子請求書の受け入れ先増加と関係性維持のためには有効な手段ですので、時間をかけるべきところです。

 

最初のうちは電子データと紙の請求書両方でやりとりする

こちらは「1度は電子化対応を断られてしまった得意先」への対処法になります。

先方理由で電子化対応を断られてしまった場合でも、余裕があれば、暫くは電子と紙の両方で請求書を送付しても良いかお願いしてみましょう。

紙とデータの請求書両方を運用しているうちに、本記事の【請求書の電子化は、自社と得意先双方にメリットがある】に記載している内容の観点から、データのほうが楽だということに気付いて頂ける可能性が高くなります。社内規定で紙が必須になっているような企業は難しいですが、担当者都合で紙のやり取りになっているような企業であれば、暫くして「今度からはデータのみで良いですよ」と言って頂けることも少なくありません。

 

得意先担当者と交流のある人に協力してもらう

上記の3点を駆使しても対応して頂けない場合は、直接交流のある人に頼るのも手です。

例えば、得意先担当者と定期的に交流のある営業担当者や協力会社の担当者に、何となく電子化対応についての話題を振ってもらうなど依頼をしましょう。意外と、「電子化してからこれだけ楽になりました」という生の情報があるだけでも、抵抗感が和らぐこともあります。

ましてや昨今は、非効率な働き方に疑問が投げかけられるご時世です。すぐの実現は難しくても、将来的な情報収集として事例や生の感想が聞きたい方は多いのです。

 

まとめ

いかがでしたか。

請求書の電子化について、全ての得意先に受け入れてもらうことは難しいですが、工夫次第では、受け入れ先の増加や運用の安定化に繋げることもできます。

得意先のPC環境や社内規定が壁になる場合は難しいかもしれませんが、「電子化ソフトの利用の仕方が分からない」、「PDFなどでもらった請求書が有効なのか分からない」、「請求書をクラウド保存することに不安がある」など、得意先担当者の気持ちの面で電子化への道が閉ざされてしまう場合は、こちらから積極的にアプローチし、安心して対応してもらえるような土壌をつくることに尽力していきましょう。

また、本記事は相手が“得意先”であることに焦点を当て記載しましたが、相手が仕入先でも、電子化すると「債権情報を早期に確認できる」「請求書送付の作業等にかかるコストがカットできる」「請求漏れを未然に防ぐことができる」等のメリットがあります。

 

請求書の電子化は、慣れていないと整備しなくてはならないことも多いですが、その先にある恩恵を享受できるよう、メリットを理解した上で導入を進めていきましょう。

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