企業に関連する重要な法改正をチェック【2024年1月以降】
今回は2024年1月以降に施行される企業に関する法改正のうち、主な法改正をピックアップしてご紹介します。
目次
◆所得税・法人税に関する改正
令和6年度税制大綱が2023年12月14日に公表されました。本大綱では、賃上げおよび国内投資の促進を重点として、赤字企業も含めて中小事業者にも好影響のある改正内容となっているようです。
また、子育て世代に対する手厚いサポートが図られています。定額減税と給付金、児童手当の拡充、住宅ローン減税の対象拡大など、さまざまなアプローチで子育て世代の経済的負担の軽減を目指しているようです。
この令和6年度税制改正大綱のうち、主要なものをピックアップします。
所得税の定額減税について
今回の大綱では、所得税の定額減税が盛り込まれています。所得税3万円と住民税1万円(合計4万円)の定額減税になります(給与所得者で年収2000万円を超える人は対象外)。児童手当の拡充に伴い、扶養控除の扱いを見直しています。
法人税に関する変更点について
法人課税に関する変更もいくつか盛り込まれています。たとえば賃上げ税制の拡充では、赤字の中小企業でも、5年以内に黒字転換するまで減税の優遇措置を繰り越せる制度を導入しています。
上乗せ措置の見直しにより、最大税額控除率が40%から45%に拡大されます。また、当期の税額から控除できなかった額は5年間繰り越せるようになりました。
参考:財務省「税制改正の概要」
◆電子帳簿保存法関連
電子帳簿保存法は税制改正によって、2022年1月から大幅に見直されて施行されています。特に電子取引のデータ保存については、2023年(令和5年)12月31日に宥恕期間が終了し、2024年1月1日からは、完全義務化されて電子取引の書類は紙保存することができなくなります。電子メールなどを使って電子データで請求書や領収書などのやりとりをしている法人・個人事業主に関わらず国税関係帳簿書類の保存をしなければならないすべての事業者は、書類の保存は対応をしなければなりません。
2022年1月に改正された電子帳簿保存法に取り入れられた、電子取引の情報を“磁気的記録”に保存することを企業に対して2年の間、猶予していました(宥恕期間)。
この期間が、2023年12月31日で終了しましたが、令和5年度税制改正大綱によって、新しい猶予措置が電子帳簿保存法の基本条項に組み込まれることになりました。具体的には、税務署長が「相当な理由がある 」と認めた場合、保存義務者は電磁的記録を紙で保存することができるようになります。この変更により、宥恕期間が2023年12月31日で廃止されることとなりました。
◆働き方改革関連
2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用された「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)により、時間外労働の制限が以前より厳しくなっています。運送・物流、建設業など一部の事業・業務で適用が猶予されていましたが、2024年4月1日からは運送・物流、建設業などにも制限が適用されることになっています。
運送・物流、建設業は、業務内容の性質によって長時間労働になりやすく、法律を守ることで労働力不足に陥るなどの問題が起こる可能性があると言われており、これが俗にいう「2024年問題」です。
労働力不足により企業の収益減少、運賃や工事費の上昇などが懸念されています。
参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」
◆労働基準法施行規則の改正
2024年4月より、労働条件の明示に関する規則が改定されます。
労働者と雇用者間での認識の不一致や、有期から無期に契約を変更する際のトラブルを未然に防ぐことが目的です。この改正で、有期契約労働者に対し「無期転換申込権」が発生する更新の際に、無期転換の申し込みが可能である(無期転換申込機会)ことを明示することが義務化されます。また、全ての労働契約の成立時や有期契約の更新の際に、就業する場所や業務の変更範囲を明らかに示す必要があります。
参考:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
◆金融商品取引法改正
金融商品取引法では、上場企業に対して企業情報の開示を義務付けています。
上場会社の開示書類の一つとして、3カ月ごとに開示が義務付けられてきた「四半期報告書」は、取引所規則に基づいて開示される決算短信と内容が重複するケースも多いことから、その必要性に疑問が呈されていました。
2024年4月1日に施行される改正金融商品取引法では、企業開示の効率化の観点から、四半期報告書が廃止され、決算短信に一本化される予定です。
参考:金融庁「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について」
◆障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則改正
現在、民間企業における障害者の法的な雇用率 は2.3%です。2024年4月には2.5%に、2026年7月には2.7%に引き上げられることが予定されています。
2024年4月からは従業員数が40人以上の企業は障害者を少なくとも1人採用する必要があります。
参考:厚生労働省「事業主の方へ ~従業員を雇う場合のルールと支援策~」
労働政策審議会障害者雇用分科会「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」
◆フリーランス保護新法
フリーランス保護新法は、働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的とした法律です。
各種の労働法が適用される労働者とは異なり、フリーランスは取引における立場が保障されていません。下請法によって一定の保護を受けられる場合もありますが、資本金要件を満たさず下請法が適用されないケースもあります。
フリーランス保護新法は、資本金の多寡を問わず以下の規制などを定め、取引におけるフリーランスの保護を図るものです。2024年11月までの施行が予定されています。
参考:内閣官房新しい資本主義実現本部事務局 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」
◆厚生年金保険法の改正で年金制度の機能強化
2020年に成立した「年金制度改正法」により、短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業規模が段階的に引き下げられます。2022年10月から中規模企業(従業員数101~500人)に、2024年10月からは従業員数が51~100人の中小企業も社会保険の適用範囲拡大の対象になります。
参考:厚生労働省年金局「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)」
◆健康保険法の改正でマイナンバーカードと健康保険証を一体化
2023年6月に、改正マイナンバー法が可決されました。これにより、2024年秋からは紙やカード形式の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として使用することが事実上必須となります。
2024年秋以前に発行された健康保険証については、有効期限(最も遅くても2025年秋まで)が来るまでは、これまで通り使用することができるようです。
参考:デジタル庁「マイナンバー法等の一部改正法案の概要」
厚生労働省「マイナンバー法等の一部改正法(令和5年法律第48号)について」
まとめ
今回は2024年以降に施行される法改正について紹介しました。改正により、社内規定の変更や業務の見直しなどが発生することもあると思います。法改正の内容を確認し、必要であれば施行までに対応できるよう準備をしましょう。
※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2024年1月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。
筆者プロフィール
- 家電量販店でウィンドウショッピングするのが好きです。
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