第二回 非製造業向けERPのベストプラクティスとは

様々な業種の企業がERPパッケージを導入しており、その業種に特化したERPパッケージも複数存在していることは「第一回 エンタープライズ・リソース・プランニング、ERPとはなにか」にて説明しました。今回は製造業に比べるとERPパッケージの導入が最近になって進んできた「非製造業向けのERP」の特徴や業界ごとのベストプラクティス※を実現するために重要な機能について解説します。

※ベストプラクティスとは各業界の標準となる最も効率的な業務の進め方のこと

非製造業とは

非製造業とは、その名の通り、製造業以外の業種のことで、建設業、金融業、流通業、広告業、情報・通信業、サービス業などがあげられます。分類の例として、下図のように製造業と非製造業を分けられます。

非製造業にERPが広まった経緯

元々ERPは比較的大規模な製造業向けに作られた生産管理を中心としたMRPから派生していますが、現在ERPは大企業から中小企業へ、製造業からサービス業や流通業へと対象が広がっており、その経緯は以下理由が考えられます。

・老朽化したシステムを使い続けている多くの中小企業の中には、サーバやOSのサポート終了やシステム管理者の定年による退職などの問題を抱えている企業も多く、その問題を解消するための対策としてシステムの入れ替え検討が行われている。

・その検討の際に表計算ソフトなどを用いた属人的な管理からの脱却、業務や部門ごとに部分最適化されたシステムから会社全体のシステムの一元化といったテーマを掲げる企業も増えている。

・導入するシステムの選択肢の一つとしてERPパッケージを検討する企業が多くなっている。

 

非製造業向けERPの特徴やベストプラクティスを実現するために重要な機能とは

製造業向けに開発されたERPパッケージでは、非製造業の業務に合わない機能が多くあるため、様々なERPベンダーがベストプラクティスを求め、非製造業向けに必要な機能を持った業種特化型ERP製品を開発するようになりました。

ここでは、非製造業向けに開発されたそれぞれのERPパッケージの特徴や各業界のベストプラクティスを実現するために重要な機能を見ていきたいと思います。

 

建設業向け

建設業では、企業ごとに独自の業務フローがあるケースが多く、それゆえ基幹システムは自社開発のシステムを導入している会社が多いと思います。

しかし、最近は建設業向けERPパッケージも増えてきており、各社の要求を満たせる製品も多くなってきたので、建設会社でERPパッケージを導入するケースも増えてきました。

機能面では、受注、工事外注、実行予算・工事原価管理、会計、人事、給与などが基本機能となっており、特に受注、工事外注、実行予算・工事原価管理の機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。

ほかにも

見積もりの積算から実行予算への連携

官公庁への提出書類の自動作成

完成工事・工事決算管理

JV管理

などの機能が必要に応じてアドオンで追加されるケースが多いです。

 

金融業向け

金融業は他の業種と比べて業務フローが独特なので、どのシステム会社でも作れるということはなく、もともと金融業でシステムを作っていた会社あるいは技術者がその経験と知識を活かしてERPパッケージを開発、提供しているケースが多いようです。

機能面での特徴は融資・為替・外為などの金融主要業務管理、クレジットカード決済等に関する機能、土地の売買に関する機能、銀行の人事など、業界特有の機能を盛り込んだ構成になっており、これらの機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。

 

流通業向け

流通業といっても様々な業種業態がありますが、ここでは、商社や卸・小売業を例として挙げたいと思います。

機能面では、基本的には販売管理と在庫管理が中心となっているため、これらの機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。

海外取引がある商社などの場合は、多言語対応や多通貨対応が求められます。

グローバルな物流管理をしたいなら、海外での輸送状況が見える機能が必要になります。

国内の卸・小売業であれば、受発注管理、在庫管理、人員管理といった部分に特化したERPパッケージとなります。

つまり、扱う商材や販売形態などに適した機能を有した様々なERPパッケージが提供されています。

広告業向け

広告代理店、ネット広告会社、WEB媒体運営、SP事業会社など、広告業界は様々な業務形態の会社が存在します。

広告業向けERPパッケージは、こうした広告業界特有の業務に対応できる機能を有しています。

機能面では、案件管理、販売管理と発注・仕入・媒体管理、が中心となるため、これらの機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。また、入金管理、債権・債務管理、勤怠管理などの機能も提供されています。煩雑になりがちな広告業界の数多くの案件を柔軟にこなすことができるように開発されています。

ネット広告で多く見られるリスティング広告や、メディアレップへの対応も実現できるERPパッケージがあります。

 

システム開発業向け

システム開発業などプロジェクト単位で業務を行う企業向けに開発されたのが、プロジェクト管理を中心としたERPパッケージです。

システム開発業の原価は技術者の人件費が占める割合が高いので、技術者の単価管理やプロジェクト単位での原価や作業実績管理などが重要になっており、これらの機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。

ERPとしてはプロジェクト管理、販売管理、購買管理、勤怠管理、経費管理、財務会計といった機能を有しているケースが多いです。

特徴的な機能としては、

開発メンバーのアサイン管理

プロジェクトの進捗管理

プロジェクトごとのリアルタイムな原価の管理

原価の予実管理、差異分析

などがあります。

 

印刷業向け

印刷業界は、かつては売上の管理だけしておけば利益はある程度確保されていましたが、近年の技術の変化や価格の低下で利幅は小さくなり、製品単位や顧客単位、部門単位で見ると利益が出にくい状況となってきています。

ビジネスサイクルもどんどん短くなってきており、短納期での制作が求められるようになってきました。

そのため、業務効率を上げ、セグメント別の管理を行うことで利益を捻出する必要性があったためERPパッケージが注目されています。

機能面では見積もり、作業指示、受注、発注、在庫管理、工程管理があり、ロットの管理や紙の管理などが重要なので、これらの機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。

つまり、ERPパッケージでは、仕様の管理や納期などの期日管理だけでなく、細かいコスト管理ができるのが望ましいです。

 

人材派遣業向け

人材派遣業でよく聞く課題として

・適任スタッフが見つからない

・案件情報をスタッフに告知するのに手間がかかる

・契約書の作成に手間がかかる

などが挙げられます。

ERPパッケージを導入することで、案件にマッチしたスタッフを見つけることが容易になったり、案件情報のスタッフへの送信が一斉にできるようになったり、契約書類や法定帳票をシステムから簡単に出力できるようになることが重要なため、これらの機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。

法定帳票は制度の変更の度に書式が変わりますが、最新情報への更新に対応しているERPパッケージであれば、バージョンアップなどで対処できるケースが多いです。

また、これらの機能に、経費の管理や勤怠管理、請求書の発行、財務会計まで含まれています。

 

コンサルティング業向け

コンサルティング会社では、コンサルタントの勤務情報や取引先への請求情報を速やかに把握することが求められます。コンサルタントの勤務時間から取引先への請求金額が決定することも多いため、情報を一元的に管理しておく必要があります。

業務の単位は案件やプロジェクトといった単位で管理されることが多いので、プロジェクト単位で管理できるERPパッケージがコンサルティング業には必要です。

具体的には作業ごとに設定された単価(チャージレート)とプロジェクトごとの作業工数を管理して顧客向けの請求書を作成したり、各担当コンサルタントの作業時間を分析して標準時間と実績とを比較して評価の参考とするなどを実現できる機能が重要なため、これらの機能が業界のベストプラクティスと呼べる機能になっているのかが非常に重要です。

 

まとめ

元々製造業向けに作られた生産管理が中心のMRPから派生したERPパッケージですが、最近では財務会計が中心となっているERPパッケージも多く、対象も大企業から中小企業へ、製造業から非製造業へと、対応業種を広げてきております。

各ベンダーが競ってERPパッケージの機能拡張を実施しており、非製造業向けにも多くの業種特化型ERPパッケージがラインナップされてきています。

今までなかなか自社に合うシステムがなかったという業種でも、システムを見直す時期がきたら改めて情報収集をすると、自社の業務フローに近いERPパッケージが見つかる可能性もあります。

ただし、自社と同業種向けERPパッケージだからといって必ずしも自社の業務に完全にあうわけではありません。むしろ同業種のベストプラクティスと呼べるERPパッケージであっても自社業務に全く合わないケースもありえますが、自社の業務フローを大幅に変えて導入する意味があるかもしれません。ベンダーの導入事例や提案ノウハウは、システム再構築の参考になると思いますし、様々な提案を受ける中で自社業務を見直す機会にもなるでしょう。