第一回 エンタープライズ・リソース・プランニング、ERPとはなにか

エンタープライズ・リソース・プランニングという言葉をご存知でしょうか。

「Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」は、日本語にすると、「企業の資源を計画すること」となります。略してERPと呼ばれています。

企業の資源とは、企業が保有しているヒト・モノ・カネ・情報、などの経営資源を指します。

この資源を有効活用するための計画を立案する概念や手法のことを総じて「エンタープライズ・リソース・プランニング」(以下ERP)と呼ばれています。

また、ERPを実現するためのシステムのことをERPパッケージやBusiness Application Suite(ビジネスアプリケーションスイート)、統合型基幹業務パッケージ/スイートなどと呼んでいます。これらの呼称の意味は、企業の財務会計や販売管理、在庫管理、生産管理などの基幹業務を管理するために必要となる機能をひとつに纏めたシステムとなります。

 

 

ERPパッケージが注目される背景

ERPパッケージが普及する以前は、営業部門には販売管理システム、購買部門には購買管理システム、経理部門には財務会計システムや管理会計システムというように、各部門の業務に合わせたシステムが社内に複数存在していました。

部門ごとに構築されたシステムは個別の業務に合わせて構築されているので、各部門の担当者にとって使いやすいものでした。

しかし部門ごとにシステムが乱立していると、システムを連携させる手間が発生し、全社的な情報の把握に時間がかかることで適切なタイミングで判断を行うことが難しくなります。また、同じ情報を複数のシステムに二重入力する手間が発生するなどの、問題点があります。

そこで、部門ごとに当初は導入していた販売管理システムや購買管理システム、財務会計システムなどを一元化して管理できるERPパッケージが登場しました。

 

ERPの起源

ERPの起源についてはいくつか説がありますが、ERPをさかのぼってみると、1970年代に米国の製造業において普及した生産管理の手法であるMRP(Material Requirements Planning)があります。

MRPは日本語にすると「資材所要量計画」となり、在庫に注目して生産計画を立てる管理手法です。

このMRPが発展し、1980年代には資材だけではなく製造能力(ヒト・モノ・カネ)を管理するようになり、更に会計や人事の業務管理機能が追加されて、1990年代にERPと呼ばれるようになったという説が一般的のようです。

 

日本でERPパッケージが普及した理由

ERPパッケージが日本に広まり始めたのは、1990年代半ば頃からと言われています。

当時はバブル景気崩壊後の厳しい時代で、経営の合理化や経費削減・縮小が進められていました。

そのような中、業務改革の有効な手段としてERPパッケージを活用した業務効率化が注目されました。

欧米ではすでに採用している大手企業も多く、そのモデルを日本でも取り入れようと多くの企業が検討を始めました。

あわせて、「2000年問題」と言われる、コンピュータが西暦2000年以降の日付に対応していない場合にシステムが正常に機能しなくなる可能性があるという社会的問題もあり、システムの見直しをする企業が増えたこともERP普及のひとつの要因とされています。

 

ERPの市場規模

矢野経済研究所による調査では、2016年の国内ERPパッケージライセンス市場は1,130億4000万円(エンドユーザー渡しベース)となっています。前年比は4.4%増で、その前の年の伸び率(8.0%)と比べるとやや減速となった感じはしますが、2017年の同市場は前年比4.8%増の1185億円(同ベース)と予測されており、今後も成長を続けると予測されています。

出所元:株式会社矢野経済研究所「ERP市場動向に関する調査(2017年)」(2017年8月7日発表)

 

ERP導入企業の業種

ERPの導入企業は様々で、製造業、商社・卸売業、IT業、小売業、建設業、印刷業、広告業、人材派遣業、コンサルティング業、その他と幅広く導入されています。

ひとことでERPと言ってもすべて同じ機能群ではなく、業種に合わせた機能が備わっているパッケージなどが多く存在しています。

 

ERPの機能概要

一般的にERPというと以下のような機能が備わっていることが多いです。

・販売管理機能

販売に関する機能を有していて、見積もり、受注、出荷、売上、請求などの業務に使われます。

 

・購買管理機能

購買に関する機能を有していて、購買依頼、見積もり依頼、発注、入荷・検収、請求書照合などの業務に使われます。

 

・生産管理機能

製造を行う企業では中心となる機能で、生産計画、生産指示、調達・購買計画、工程管理、品質管理などの業務に使われます。

 

・人事・給与管理機能

主に従業員の情報を管理しています。人事管理では従業員の名前や性別、住所などの基本情報だけでなく、人事考課や採用のための参考情報としても使われます。給与管理では給与計算、月次給与の支払いや労働時間の管理、有給休暇などの休暇管理、その他給与に関する管理を行います。

 

・財務会計機能

株主や投資家など外部に向けて開示する財務情報等を作成する機能です。

処理の方法や報告の形式は、会社法や金融商品取引法などであらかじめ一定の基準が決められています。

 

その他にも、管理会計機能や在庫管理機能、営業支援機能などが含まれているものもありますが、これらの機能がシームレスに連携しているのがERPパッケージとなります。

 

 

ERPの導入にかかる費用について

一般的にERPを導入するためにかかる費用には、以下のようなものがあります。

・ハードウェア費用

新しくシステムを導入するために、Webサーバやデータベースサーバ、バックアップサーバなどのハードウェアの調達が必要となるケースがあります。

ハードウェア構成をどうするか(例:本番機1台、開発機1台、バックアップ機1台の3台構成など)、サーバ管理は自社で行うかデータセンターを活用するか、などを選択して、そこにかかる費用を算出します。

 

・ソフトウェアライセンス費用

ソフトウェアを使用するにあたり、ソフトウェアライセンスが必要になります。ソフトウェアライセンスとは、簡単に言いますと、ソフトウェアを使用する権利もしくは、一定の範囲内でソフトウェアを使用できる権利です。一定の範囲内というのは、例えば複製や改造、他社への販売を禁ずる、といった決まりの中での使用許諾ということです。

そのソフトウェアライセンスを購入する費用がソフトウェアライセンス費用になります。

ソフトウェアライセンス費用は、各社のライセンス体系によって価格が大きく変わります。サーバライセンス(サーバの台数で価格が決まる)のものもあれば、ユーザーライセンス(システムを利用するユーザーの数で価格が決まる)のものもあります。

 

・導入(開発)費用

導入時に行う要件定義や開発、トレーニング、データ移行、パラメータの設定などの費用です。

パラメータの設定とは、ソフトウェア導入時に使用する項目名や入力内容、表示方法などを自社で使いやすいように設定することです。

ERPパッケージごとにパラメータ設定方法は違うので、導入するERPパッケージのベンダーに所属するコンサルタント※が要件定義を行い、パラメータの設定を行うことになります。

※パッケージコンサルタントやERPコンサルタントと呼ばれています。

 

大企業向けのERPパッケージ導入だと外資系のコンサルティングファームや国内の大手メーカーなどがプライム・コントラクタ※としてERPパッケージの導入を行うこともあります。その場合、自社の社員をERPパッケージベンダーが提供するコンサルタント養成講座を受講させて、コンサルタントの認定資格を取得しているケースが多いです。

※ユーザ企業と契約し、導入責任を負う企業。元請企業とも呼ばれる

 

 

・保守サポート費用

システムに関する質問や不具合対応、法改正のバージョンアップなどを行うための費用です。

 

・追加開発費用

アドインを追加してパッケージ機能を拡張したり、自社業務向けにアドオンを開発して追加する時に発生する費用です。

 

 

SaaSERPの普及

SaaSとは、「Software as a Service」の略で、これまでパッケージソフトとして提供されていた機能がインターネット経由で提供される形態のことです。

SaaSの普及に伴い、いち早く対応したのはCRMやSFAと言われていますが、最近になってERPのSaaS化が急速に進み始めています。

SaaS化が進んだ理由としては

・導入期間の短縮、運用コストの削減

・セキュリティレベルの確保

・システム管理コストの削減

などがあると言われております。

 

株式会社アイ・ティ・アールの調査結果によると、2021年にはERP市場の約45%が提供形態がSaaSになると予測されています。

ERP市場規模推移および予測:提供形態別およびパッケージ運用形態別

出典元:「ITR「ITR Market View:ERP市場2018」」

 

まとめ

ERPはこれまでバラバラで管理されていたヒト・モノ・カネ・情報を一元的に管理して大きな成果を出しています。

全社統一のデータをいち早く集計して見ることが可能であるといったような、個別のシステムが乱立する状況では解決できなかった問題をERP導入により解決でき、結果、経営判断のスピードが上がるなど、様々な理由により注目されていると言えます。

注目度が増すにつれ、対応業種や機能、費用面で幅が広がり、更にSaaS環境の普及も手伝って、より多くの企業がERPパッケージを導入検討していく傾向になっています。

広がる選択肢の中から、自社にマッチしたERPパッケージを導入し、業務効率化やコスト削減などの課題を解決していきましょう。