第八回 RPAツールとERPパッケージの活用と生産性向上の関係とは?

生産性とは、投入量(インプット)と産出量(アウトプット)の比率のことを指す言葉で、「どれだけのリソースを投入し、どれだけの成果を得られたのか」を意味します。

式で表すと「生産性=産出量(アウトプット)÷投入量(インプット)」となります。

生産性については、「働き方改革 第四回 働き方改革で注目されている生産性向上とは?生産性向上に効く業務改善の考え方」にて詳細に説明していますので、今回は生産性向上の視点から、ERPパッケージとRPAツールの活用方法を確認したいと思います。

生産性を向上するには

生産性を向上させるということは、産出量(アウトプット)÷投入量(インプット)の値を大きくすることです。

つまり

・産出量(アウトプット)を大きくする

・投入量(インプット)を小さくする

このどちらか、あるいは両方を実現する必要があります。

なお、生産性向上と良く似た言葉で「業務効率化」がありますが、意味は少し異なります。

業務効率化とは今まで行っていた仕事のスピードを速めたり、作業時間のロスを小さくすることを指します。

 

アウトプットを大きくする方法としては、新規事業(イノベーション)の創出や、現行サービスの付加価値の向上などがあります。

付加価値とは、企業が産み出した総生産額から、その生産のために消費した原材料や外注費など非付加価値額を引いた価値を指します。

 

インプットを小さくする方法としては、作業時間の短縮、無駄な作業の削減、コストダウンなどを実現すること、すなわち業務効率化を進めることです。

生産性向上の視点でERPパッケージの活用方法を考える

ERPパッケージを導入すると業務効率化が進み、インプットの量を小さくなることで生産性向上へとつながります。具体的には以下のような効果が期待できます。

・部署ごとに管理されていた情報を一元化することができる

・経営者向けの全社的なデータの分析帳票が早期に作成できる

・各機能が連動しているので、リアルタイムに情報が更新される

・システム連携によって転記作業が自動化される

・複数システムに同じ内容を入力する必要がなくなり、二重入力が防止できる

これらによって、作業時間を短縮することが可能です。

 

その他にも、

・できるだけ早期に売上の予測を把握して、経営判断に役立てたい

・各業務システムにおいて、ワークフローによる申請承認を実装し、情報統制を強化したい

・社内の業務フローを統一したい

・ERPパッケージの機能をスマートフォンやタブレットで操作し、承認者の立場の人が出張先や移動中でも容易に承認行為を行い、申請が滞ることを防ぎたい

・営業担当者が客先にて商談を終えて帰りの電車の中で必要な情報を入力することができるなど、時間を有効に活用したい

 

といった業務内容の見直し要望への対応も期待できます。

 

こうした施策を打ち、作業時間を短縮したり、今まで残業が多かった場合は残業時間を減らすことでインプットを小さくし、生産性を向上させることが可能です。

 

クラウドERPの活用による業務効率化

業務効率化を考えるうえで、クラウド環境の活用は有効と言えるでしょう。

クラウドERPは、オンプレミスに比べてコストが抑えられ、導入も比較的スムーズですし、バージョンアップ作業はベンダーが実施するため自社で行う必要がないなど、費用や作業の負担を軽減できます。

ここ最近増加しているテレワーク(在宅勤務)においても、クラウド環境は有効とされております。テレワークの概要については「働き方改革 第八回テレワークで始めようこれからの働き方改革」を参照ください。

 

RPAツールとERPパッケージの連携による業務効率化

RPAツールについては、「ERP/業務効率化 第四回 無駄が発生しやすい間接業務とその対処法」で少し触れましたが、RPAツールとERPパッケージの組み合わせについてもう少し具体的に見てみましょう。

RPAツールは「ルールに基づく定型的な作業」に向いていると言われています。

経理部門で毎月行うような入出金業務や各種定型レポートの作成、複数システムからデータを収集してファイルを作成する作業などはRPAツールで行いやすい業務と言えるでしょう。

ERPパッケージとRPAツールの連携例としては、RPAツールを利用してWeb受注システムに登録されたデータをダウンロードし、ERPパッケージの所定の項目に登録するような活用方法になります。このように他システムからダウンロードされるデータのフォーマットが定型であれば、RPAツールを使うことで転記作業が自動化できます。

 

また、チェック業務もRPAツールの得意分野です。

RPAツールを利用してERPパッケージで発注処理をした案件で未検収のものが無いか、をチェックして、もしあれば担当者にメールで知らせるなどといった、チェック業務とメール送信を組み合わせることも可能です。

RPAツールは定型的な業務処理を速く正確に実行できるので、RPAツールに任せられる業務はRPAツールを活用することで作業時間の短縮を実現でき、生産性向上につながります。

これまでその業務で割かれていた時間を活用し、アウトプットの質を高めることができれば、更に生産性が上がるでしょう。

 

このようなRPAツールとERPパッケージの連携は徐々に浸透してきています。

ERPパッケージの導入を検討する際に、ベンダーにカスタマイズを依頼するのがよいのか、ERPパッケージは基本機能のみにしてRPAツールを組み合わせたほうがよいのか、という切り口でシステム導入を考えることができれば、業務改善の選択肢が増えるでしょう。

すでにERPパッケージを導入していて、当時予算の関係で実現できなかった要件があれば、RPAツールで対応できないかを再考する余地はあると思います。

 

参考情報になりますが、RPAツールと同様に注目されているテクノロジーにAI(人工知能)があります。

どちらも作業を自動化させるという点では等しいのですが、RPAが「人間が決めたルールに沿って実行する」ものに対して、AI(人工知能)は「自ら学習して判断ルールを作り実行する」ことが可能な点が違います。

 

日本における生産性向上の必要性

ここで、日本の生産性について見てみたいと思います。

日本の労働生産性は、先進国の中でも低い水準にあると言われています。

国際経営開発研究所(IMD)が発表する国際競争力ランキングによると、1989年から1993年まで日本の国際競争力は1位でしたが、近年は20位から30位を推移している状況です。

【出典】文部科学省:「平成25年版科学技術白書」第1章 我が国の科学技術政策を取り巻く動向

 

働き方改革第一回 働き方改革と一億総活躍社会~日本経済再生へのチャレンジ~」に記載されている通り、日本は人口減少、少子高齢化の傾向にあります。

これはすなわち、労働人口の減少を表しており、一人当たりの効率を上げていかないと生産性を保つことが難しくなります。

こうした国際競争力を上げるためにも、生産性向上、業務効率化が必要になってきます。

 

生産性の低い日本の企業を見てみると、労働時間が長い傾向にあるようです。

労働時間が長くなる→疲労や睡眠不足により集中力やモチベーションが低下→作業効率が落ちる→残業が増える→原価が増す・品質が落ちる→粗利が出にくくなる→新しい人を雇う人件費が確保できない→担当者一人あたりの業務量が増える→労働時間が長くなる、という負の連鎖に陥ってしまいます。

一般的に長時間労働をすると、疲労や睡眠不足などにより集中力やモチベーションが低下してきて、作業効率が悪くなると言われています。これは成果物の品質にも影響してきます。より大きなアウトプットを出すために長時間労働を課せられているはずが、品質の低下によりそこまでの成果が出ないことにもなりかねません。

また、原価が増すことで利益が出にくい体質になっていると、資金を投資に向けることが難しい状況になることが多いでしょう。投資を抑制するとイノベーションの創出や付加価値の向上といったアウトプットを増やすことが難しくなります。

アウトプットが増えずにインプットが大きくなってくると、生産性が低くなっていくという流れになります。

こうした視点から見ても、ERPパッケージなどの業務管理システムやRPAツールなどの最新テクノロジーを活用して、作業時間を短縮しインプットを小さくすることは生産性向上のためには重要だと言えるでしょう。

 

まとめ

これまでの日本は、生産性向上といえば効率化を追求することが一般的でした。

そのためにERPパッケージなどの業務管理システムを導入することが有効な手段とされ、それは今でも変わりないことでしょう。

最近はRPAツールの需要が伸びてきており、更なる業務効率化が進むと考えられます。

そうなると、次なる生産性向上のカギは、アウトプットを大きくするということになります。

ERPパッケージなどの業務管理システムやRPAツールなどの最新テクノロジー有効活用のノウハウを活かして業務効率化を進めつつ、新しいイノベーションの創出や付加価値を向上させることの意識を強めることができれば、企業の生産性もより向上し、国際競争力も上がっていくことでしょう。