働き方改革を知る(4)働き方改革で注目されている生産性向上とは?生産性向上に効く業務改善の考え方

本記事では、働き方改革の大目的の一つである生産性向上について解説します。

そもそも生産性とは

労働生産性の定義は単位時間あたりの付加価値額です。

先の式を見るとわかりますが、労働生産性の向上には2つの方向性があります。

・分子の「付加価値」の向上(提供するサービスの価値の増大)
・分母の「インプット」の削減(業務効率の向上)

付加価値の向上の取り組みとしては、例えば、イノベーションの創出や、既存サービスの価値や品質の向上等が挙げられます。これらは、市場や顧客のような企業外部に目を向けた取り組みです。

一方、後者のインプットの削減は、オペレーションの効率化等、内部的な観点での取り組みになります。

市場競争の加速

認知技術の進展やロボット・IT技術の急速な進展により、機械化・自動化が可能な領域がこれまで以上に拡大しています。人が不要となる業務が増え、事業活動に必要なコストがどんどん低減しています。

そのような状況下では、人は機械ができないような企画や製品開発、営業活動等に従事し
機械ができる仕事は機械にやらせる、あるいは、現行の業務を整理・再編する等、事業成果あたりのインプットを抑えていく取り組みを持続的に行っていかなければ、企業が競争力を維持できなくなります。

付加価値向上という観点でも、定型単純作業は機械に任せ、人はより創造的で高度な判断を伴う作業を行うことが求められます。

・最新の市場動向や競合分析をして、新規事業の企画を立案する
・多様な利害関係者の意向を調整して複雑な商談を進める

このような高付加価値業務を担っていくべきでしょう。

業務改善のために

インプット削減、業務改善を進めるにあたっては、以下の流れを意識することが重要です。

業務の可視化

まずは現行業務を洗い出し、社員が行っている業務項目を明らかにします。

オフィスワーカーの仕事は、目に見えない情報を入手、加工し、付加価値を加える作業が中心のため、仕事の内容が外から見えづらいです。
実態を把握せずにイメージ先行で改善活動に着手すると、改善すべき業務の見落としが発生する恐れがありますから、まずは業務の洗い出しを行い、自社業務の実態をきちんと把握することが必要です。

続いて、それぞれの業務項目同士のつながりを整理し、業務フロー、つまり業務の流れを確認します。属人化している業務やそもそも手順が確立されていない業務については、この段階で問題点を明らかにできます。

 

改善対象の検討

可視化した業務の中でどれを改善対象とするかを決め、対象業務の優先順位づけを行います。

改善対象を見定め、優先度を設定するにあたっては、それぞれの業務に社員がどれだけ時間をかけているのか、業務量を測定することが有効です。

通常、業務改善の効果は、業務量が多いほど大きくなる傾向にあるからです。
改善活動に投入できるリソースは有限ですから、同じ時間を費やすのであれば、より改善効果の高い業務の改善に優先して取り組むのが合理的です。

 

問題設定

問題を設定し、大まかな改善方針を検討します。問題を設定するとおのずと改善の方向性が絞られます。

改善の方向性が変わると、改善策が変わります。改善策が変わると、改善の成果も変わってしまいますから、問題をどこに設定するかを決めることは、業務改善の成果を左右する重要な工程と言えます。

例を用いて解説しましょう。

月次の締め時に、勤怠管理システムで申請した勤怠実績と入退室時間との整合性をチェックする業務に時間がかかっていることが判明したため、それを改善対象として選んだとします。

「勤怠の申請が月初に集中し、総務担当者の業務負荷に大きな偏りが発生していること」を問題に設定したとしましょう。
改善方針は、業務手順の再構築になるでしょう。具体案として、申請を月初と月中の二回行うよう、業務手順を変更することが考えられます。

「勤怠申請データと入退室ログの整合性チェックを目視で行っているため業務効率が悪いこと」を問題に設定したとしましょう。
改善方針は業務の簡素化、あるいは業務の排除になるでしょう。具体案として、RPA等の自動化ツールを導入して、整合性チェックの工程を自動化する等が考えられます。

いかがでしょうか。

問題を設定することにより、改善の方向性が自然と決まってきました。方向性が異なると、改善策も異なったものになりますから、当然改善成果も変わってしまいます。

問題の設定は慎重に行うべきです。

 

施策検討

改善の具体的な方法を検討します。改善方向性と具体的な施策案を次節でご紹介します。

 

改善方向性と施策例

業務改善の方向性とそれぞれに適した施策について以下のようにまとめました。

業務標準化

そもそも標準化とは何でしょうか。一言でいうと、業務処理の手順のばらつきを整理して誰もが同じようにこなせるよう業務を見える化・テンプレート化することです。

属人化が進んでいて、同種の業務なのに複数のやり方が混在している場合に有効な考え方です。
標準化の具体的な方法として、業務のマニュアル化(業務マニュアルの作成)、システム導入が挙げられます。

マニュアル化により、業務処理手順を設計・可視化して社員に周知することで、誰もが同じように業務をこなせるようになる手助けとなります。

 

業務分担の見直し

業務ごとの担当者の見直しを行います。見直しには、業務担当者自体の変更だけでなく、複数の担当者で実施している類似業務の集約化等、複数の担当者にまたがる業務の調整も含みます。

例えば、経験とスキルがある担当者が、経験が活かされない定型業務を行っている場合に、
その業務の担当を経験の浅いものに変更し、習熟や専門性が求められる業務の割合を多くするよう調整する等の対応が考えられます。

 

業務の簡素化・外部化

業務の無駄を省いて簡単に業務を遂行できるように調整する、あるいは、自社内部でやる必然性のない業務を外部に委託します。

簡素化の方法としては、Excelマクロ等の汎用ツールの活用やシステム化が挙げられます。

例えば、複数のExcelファイルからデータを集計用のファイルにコピーペーストして報告用のレポートを作成する業務の場合、加工の手順をマクロに記録し、利用することで、今まで発生していた加工作業のステップを不要にできます。

外部化の方法としては、BPOやクラウドソーシング等が挙げられるでしょう。BPOはビジネスプロセスアウトソーシングの略です。業務プロセスの一部を外部の専門業者に委託することを指します。

クラウドソーシングとは、業務の一部をプラットフォーム上で不特定多数の人に依頼する、アウトソーシングの一形態を指します。依頼先が個人であることが多く、セキュリティ上の問題がクリアできれば通常のアウトソーシングと比べて低予算で仕事を依頼できることが特徴です。

BPOやクラウドソーシングに向いている業務の特徴は以下です。

・業務の手順が定まっている定型業務
・自社内部にない専門性が求められる専門的業務

業務の具体例として、書類の翻訳業務や給与計算業務等が挙げられます。

 

業務の廃止・削減

誰も見ていないレポートの作成等、慣習で続けている業務の必要性を吟味して、不要と判断した業務をやめることです。

不要業務に費やしていた時間を他の必要業務に回せるようになります。また、人が行っていた事務作業を自動化・機械化することで、業務を削減することも可能です。
方法として、システム導入による業務の省力化、RPA等の自動化ツールの導入による業務の自動化等が挙げられます。

業務のシステム化によってバックオフィス部門の情報の転記・集約作業の削減が期待できます。

一方、RPAとは、ロボティックプロセスオートメーションの略で、業務手順をロボットに覚えこませて、業務をロボットに代行させる手法のことを指しています。

RPAに向いている業務の特徴は以下です。
・業務の手順が決まっている定型業務
・複数のシステムや媒体をまたがる業務

例えば、競合他社のウェブサイトを定期的にチェックして、製品情報をExcelにまとめるといった、異なるソースから情報を集める情報収集業務の自動化はまさにRPAの得意とする業務の代表例です。

 

業務の代替・再構築

業務の工程を見直して、実行順序や実施方法を変更する、あるいは、業務全体を抜本的に見直し、古くなった業務手順を現状の環境にあわせて大きく作り変えることです。

個別の業務自体の改善にとどまらず、業務の流れ・プロセス自体の大きな改革を行うことを目指します。

代替・再構築の方法として、BPRや、ERP等のシステムの導入が挙げられます。ERPシステムでは、各業種で標準的となる業務プロセスをもとに構築されており、業務をシステムに合わせることで、業務の再構築が可能になります。

まとめ

生産性向上が必要な理由と、生産性向上の方法としてインプットの削減に着目し、業務改善の実施方法と具体的な施策例についてご紹介しました。

業務改善は以下の4ステップで進めると効率的です。

この中でも特に重要な工程は、問題設定です。どんな問題を設定するかによって改善方向性が決まってしまうからです。改善の方向性と施策例として以下をご紹介しました。

それぞれの方向性ごとに最適な施策が異なりますので、施策を検討する際の参考にしていただきたいと思います。

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