第二回 生産性を上げるための工数管理のポイント

労働生産性とは、「第四回 働き方改革で注目されている生産性向上とは?生産性向上に効く業務改善の考え方」で説明した通り、単位時間当たりの付加価値額となります。

工数管理の観点から言うと作業者が一定量の作業をするのにどれくらい時間がかかるか、という生産性を管理することになります。

 

労働生産性を向上するには

労働生産性の向上には

提供するサービスの価値を増やす・・・イノベーションの創出や既存サービスの品質向上等

業務効率の向上・・・オペレーションの効率化等

という2つがあります。

イノベーションの創出というのは、ロボットやIT技術が急速に進展する現在において、人でしかできない企画や開発をしていくことを指します。

また、オペレーションの効率化とは業務を可視化したりそれをもとに改善したりすることで、作業時間を短縮することを指します。

プロジェクト単位で作業を行う広告制作やシステム開発、プラント/工場などの建設現場で工数管理は利用されており、そのような業務で「生産性を上げる」ためには一定量の作業やプロジェクトを完成させるのにかかる時間を、より短くする必要があります。

つまり、プロジェクトを進めるうえで、「少ない作業量で大きい成果をあげる」ために工数管理を実施する必要があります。

一般的には工数管理を正しく行えば、現状を把握でき、改善点を洗い出し対策を取ることで生産性は上がると考えられます。

例えば、原価の予算実績管理による差異分析の実施、利益が出ていないプロジェクトの分析、作業効率の低いメンバーの把握、といったことが挙げられます。

しかしそのためには、プロジェクト毎にかかった工数を正しく記録するだけでなく、それを集計し、上手に活用できる環境を構築することが求められます。

具体的には

「社員ごと、案件ごとの正確な稼働状況を知ることができる」

「事業別収支や、プロジェクト別収支を正確に把握することができる」

といったことが実現可能な仕組みがあれば、どのプロジェクトが効率よいか、もしくは非効率か、といったことや、どのメンバーが作業効率がよいか、などが見えてくるので、プロジェクトの進捗を把握し、改善活動を実施したり、適材適所に人材を振り分けたりすることで、生産性を高める効果も期待できます。

工数管理をするための仕組み

こうした効果を産み出す方ための仕組みはいくつかありますが、多くの企業で用いられている方法をいくつかご紹介します。

 

1)Excelを活用する

身近にあるExcelで工数管理をはじめてみるのもひとつの手です。

普段から別の業務で使い慣れている方も多く、自由度が高いので、非常に便利なツールと言えます。

ただ、工数管理に特化したシステムではないので、できることに限界はあります。

また、ひとつのファイルに同時に複数の担当者がアクセスするために共有ブック機能を利用すると操作内容に制限があるため、関与するメンバーの多い、規模の大きなプロジェクトなどの管理をするのは難しいでしょう。

簡易的な工数管理をする場合などに利用されるケースが多いと言われています。

 

(メリット)

今すぐ始められる

割と安価でできる

使い慣れている人が多く、入力操作が楽である

柔軟性は高い

 

(デメリット)

工数管理のノウハウは自分で考えなければならない

100を超えるような複数のプロジェクトを同時に管理するとなると、Excelファイルの管理が煩雑になる(例えば採番やファイル名に関するルールの統一が徹底されてないことがあった場合、自分が見たいプロジェクトの情報がなかなか見つからないなど)

マクロを用いて、複数のシートに記載されている工数の情報を集計したり、工数管理Excelと時間単価を管理しているExcelの数字から原価を算出するなど、複雑な式が組まれている場合、属人性が高くなる

データ量が大きくなるとファイルが壊れる可能性がある

 

2)工数管理に特化したシステムを活用する

本格的に工数管理、プロジェクト管理を行いたい場合は、やはり専門特化したパッケージのほうが優位性はあるでしょう。

例えば、必須入力が漏れている場合のアラート機能やプロジェクト情報の確認作業の迅速化、作業の予実管理、グラフなどの視覚的な分析、重複入力の軽減、データの有効活用など豊富な機能を標準で装備しているパッケージが多くあります。

ただ、パッケージごとに得意とすることが異なりますので、自社のやりたいことをしっかりと伝えて、自社の業務フローにマッチしたパッケージを選定し、導入する必要があります。

 

(メリット)

パッケージベンダーが培ってきたノウハウがあるので、自社の業務をより効率化できるかもしれない

プロジェクト情報の共有がスムーズにできる

会計システムとの連携に対応しているものであれば、シームレスなデータ利用が可能で、入力の手間を省くことができる

入力した情報を再加工することなく、分析用データを出力できるものが多い

ITによる内部統制の一部を実現可能

 

(デメリット)

Excelに比べて、パッケージの費用がかかる

操作を習得するのに少し時間が必要

 

3)自社向けにシステムを構築する

どうしても必要な機能を有しているパッケージが見つからない、そういうこともあるかと思います。

パッケージによっては、柔軟なカスタマイズが可能なものもあるので、それで解決できるならそのほうが早く安価にシステム構築できると思いますが、それでも自社業務にマッチするシステムにならない、そういう時は、スクラッチ開発でゼロから自社専用システムを構築するという方法もあります。

スクラッチ開発とは、パッケージ製品のようなベースとなる機能があってそこにカスタマイズするのとは違い、すべてを最初から開発することです。ソフトウェア開発では、既存のソースコードなど使用せずにゼロからコードを記述していくことになります。

規模の大きな会社や、独自のルールが多い、特殊な業務を行っている会社などで採用されるケースが多いでしょう。

 

(メリット)

思い通りのシステムが構築できる

 

(デメリット)

パッケージ製品の導入に比べると費用が大きくなることが多い

パッケージ製品の導入に比べると構築に時間がかかることが多い

システムを開発したベンダへの依存度が高くなる

 

 

生産性を上げるための工数管理の具体的活用法

このようにして構築した工数管理のシステムをいかに活用して、企業の利益につなげるか、が大事になってきます。

活用するポイントとなるところをいくつか見てみましょう。

 

1)採算/不採算プロジェクトの明確化

プロジェクトを一元的に管理し、プロジェクト単位で工数管理を行った結果、それぞれのプロジェクトの利益率の傾向が見えてきます。

利益の出ていないプロジェクトがあれば、改善点を洗い出し、今後どう対策を打つのかといった判断ができます。

また、プロジェクトの状況をよりリアルタイムに近い状態で把握できるようになれば、プロジェクトの進捗を見ながら、費用が膨らんでしまいそうなプロジェクトをいち早く発見し対策を打つこともできます。

プロジェクトごとの原価の分析結果をグラフにして出力し、経営判断のための資料作成にも活用できます。

 

2)担当者によって業務量にバラつきがあれば調整する

プロジェクトごとだけではなく、担当者ごとの切り口で集計や分析を行うことで、各担当者の業務量がどれくらいかを把握することができます。

特定の担当者が複数のプロジェクトに参画して、トータルの業務量が他の担当者よりだいぶ多くなっているといったケースを発見することもできます。

それだけ優秀な人材だからどのプロジェクトからもはずせないということもあるかもしれませんが、長時間労働を是正するためにも、リソースを上手に配分して特定の人に偏った作業量を割り振ることのないようにしましょう。

 

3)打ち合わせ等に必要以上に時間が割かれていないかをチェックする

意外と見落としがちなのが、生産活動の直接的な作業時間以外の会議や打ち合わせに多くの時間が割かれているケースです。

工数管理をする上で、こうした会議の時間もきっちりと付けていくことで、打ち合わせ時間が長すぎるなどの実態が見えてくれば、作業工数改善の余地があるかもしれません。

 

4)担当者ごとの作業効率の評価

また、社員ごとの稼働状況とプロジェクトの進捗具合などを見て、効率よく作業できている人とそうでない人を判別することもできます。

同じくらいの難易度の作業をAさんは1時間、Bさんは30分で終わらせているなど、数値化することで、作業効率の良いメンバーを高く評価してモチベーションのアップにつなげることもできます。

 

 

生産性を上げるための工数管理のポイントまとめ

生産性を上げるための工数管理を行うためにはExcelを活用するか、工数管理に特化したパッケージ製品を導入するか、自社向けに専用システムを開発するか、こうした選択肢がありますが、それぞれにメリットデメリットが存在するので、慎重に検討する必要があるでしょう。

いずれの方法を選択するにせよ、自社に利益をもたらすような仕組みでないと意味がありません。自社が何をしたいのか、そのためにはどういう仕組みが必要なのかを考えて、最適な選択をしましょう。