工数管理を始めよう(4)工数管理の仕組みの構築を成功させるポイントとケーススタディ

企業には様々な課題があり、それゆえに工数管理を行う目的も様々です。

今回は工数管理を成功させるためのポイントと、具体的なケーススタディを見ていきましょう。

 

 

工数管理の仕組みの構築を成功させるポイント

工数管理の仕組みを構築するにあたり、いくつかのポイントがあります。それを見ていきましょう。

工数管理をする目的を明確にしておく

工数管理を始めるにあたり、

・作業工数をリアルタイムに見て、赤字プロジェクトがでないように管理したい

・従業員全体の作業負荷を把握して、負荷にバラつきがあるようであれば改善したい

・無駄な作業をなくして作業時間を減らし原価を下げて、会社の利益を増やしたい

など工数管理が必要だと感じた理由があると思います。

ですが、工数管理の仕組みを構築しているうちに、あれもしたいこれもしたいと本来必要としていなかったことまで求めて、無駄な機能が多く付加された仕組みになってしまうことはよくあります。

例えば、パッケージ製品を導入するときに欲張ってしまい必要のない高機能版を導入したり、将来的に多角的な分析ができるように追加開発をしたが、しばらくして聞いてみると使われていない機能がたくさんある、というケースです。

本当の目的はなにか、そのために必要な機能はどれか、を意識して、工数管理の仕組みを構築していきましょう。

工数の入力がしやすい仕組みにする

これまでにも述べてきましたが、工数管理において非常に重要なのが「工数を入力する」ことです。毎日入力して、それを継続できるものでなければなりません。

仕組みを構築できれば、入力されるのが当たり前と思っている管理者の方もいるかもしれませんが、今までなかった習慣を新たに定着させるには時間のかかることですし、ましてや入力するメンバーにとってのメリットを感じにくいものであることも事実でしょう。

工数の入力がしにくい仕組みであれば、つい面倒がって入力を後回しにしてしまいがちです。したがって少しでも負担にならない入力方法を考える必要があります。

その他、なぜ工数管理をする必要があるのかを伝えたり、場合によっては入力漏れが多いメンバーへのペナルティを課すなどのアイデアをもって、工数入力を自然に継続的に行える土台を作っていきましょう。

工数管理の責任者を決める

工数管理を行う上で、誰が責任者なのかを明確にすることは非常に重要です。

システム開発プロジェクトの場合はプロジェクトリーダーなどメンバーをまとめる立場の人を責任者に任命することが多いようです。

責任者が決まっておらず、今日から工数を入力するようにと突然伝えられても、強制力が弱いため、数日後には入力漏れが目立ち始めて、気がつけばほとんど入力されていない、もしくは1週間や1ヶ月の単位で大まかな数字がまとめて記入されるような状況になることも考えられます。

誰が責任者だということを明確にして、その責任者がしっかりとチェックをし、工数入力を習慣化させていきましょう。

入力した情報を共有する

工数を入力したものの、それがどのように使われているのかがまったく見えなければ、次第に工数を付けることに対する意識が薄れてしまうことも考えられます。

責任者が定期的にメンバーを集めて、工数の入力状況や現状の課題をフィードバックしたり、それに基づいたアドバイスをすることで、工数入力が必要であることを認識させることは大事でしょう。

自分が入力した情報が有効活用されているとわかれば、メンバーもその重要性を実感できますし、工数を入力する意識も強くなると思います。

分析に必要な情報の粒度を決めておく

工数管理が成功したと言えるためには、そのデータをうまく活用して様々な切り口で分析ができる必要があります。具体的な活用例としては、工数の予実管理、原価の差異分析、などが挙げられます。

原価の差異分析がしたいから工数管理を始めたい、と言った声もよく聞きますが、どの期間内の差異を分析したいのか、セグメントはプロジェクト単位か部単位かチーム単位かなど様々な要望があると思います。

あらかじめフォーカスする要望を明確にしておき、その単位に合わせた粒度で入力できる仕組みを構築することで、無駄がなく使える仕組みができると言えるでしょう。

標準工数を算出し、実績工数との差異分析を行う

実績工数との差異分析を行ううえで、「標準工数」を算出し、工数計画を立てる必要があります。

「標準工数」を決めるためには「標準時間」が必要です。

「標準時間」とは、新人でもなく、エキスパートでもない、例えばひとつの目安として入社3年目くらいの「標準」程度の作業者がその工程で生産するためにかかる時間を言い、「標準」の作業者が一定の作業をする時間を計測し、その時間に休憩時間や必要な準備時間を足して算出します。

製造業であれば、「標準時間」に完成数量を乗じて「標準工数」を算出します。ソフトウェア開発においては、モジュール単位などの基準を定めて、その作業が完了するまでにかかる工数を「標準工数」とします。

こうして算出した「標準工数」と実績工数との差異を把握して工数削減までできれば工数管理は成功と言えるでしょう。

 

 

 

工数管理のケーススタディ

ここで、実際に工数管理のケーススタディを見てみましょう。

 

ケース1 システム開発・ソフトウェア業にて

主なテーマ:プロジェクト管理/アサイン管理/原価管理/内部統制

最初はプロジェクト数も少なく、月次決算で見て利益も出ていたので、細かく管理する必要性を感じておらず、会社全体の売上と利益の管理に重点を置いていたが、最近になって受注本数も増え、工期の長いプロジェクトをいくつかかかえるようになったため、プロジェクト毎の管理をしたほうがよいと考えるようになった。

そこで、身近にあるエクセルを活用し、工数管理及びプロジェクト管理を始めることとした。

現在進行中のプロジェクトのリソースを確認しながら、新たに受注したプロジェクトにアサインするメンバーを選定し、工数計画を立て、作業を割り当てる。

その際に下図のような「担当者別月別アサイン状況一覧」を作り、現在のアサイン状況を参照できるようにした。

プロジェクトが稼動しはじめて、プロジェクトリーダーはメンバーがきちんと工数を入力しているかを確認しながら進捗状況を見て、定期的な情報共有も行い、プロジェクトを進めていった。

責任者の指導により、毎日の工数入力が漏れなくできているので、遅れが生じそうになっても大きな影響が出る前に察知して改善策を取ることができた。

上図のように日々の工数が入力され、現時点の合計が見えるので、予定に対して工数が多いのか少ないのかを判断することができる。

無事にプロジェクトが完了し、本プロジェクトにかかった人件費を確認、プロジェクト毎の利益率も把握することができた。

 

ケース2 コンサルティング業にて

主なテーマ:工数管理 請求書発行 収支レポート作成の簡易化

現在はエクセルを使って案件のコスト管理を実施していて、案件の管理及び工数管理は各担当マネージャーが個々で行っている。

作業内容ごとに単価(チャージレート)が設定されており、その単価に作業時間を乗じて請求額を確定しているが、工数を担当マネージャーが個別で管理しているため、管理部門が顧客向けの請求書を作成する際には各担当マネージャーに確認依頼を出す必要があり、時間がかかっている。

マネージャーから受け取った情報をもとに請求書を作成しているが、システム化されていないため転記ミスが発生することがある。

また、管理部門は、案件ごとの収支レポートを作成するよう経営層から要求されることが多いが、作成するためにはすべての案件の担当マネージャーから情報を収集しなくてはならず、時間も手間もかかっている。

そこで、全社で使える工数管理システムを導入することにした。

工数は担当コンサルタントが直接システムに入力することになり、管理部門は、案件ごとの作業時間内訳をシステムから確認し、転記することなくスピーディーに顧客向けの請求書を発行できるようになった。

また、入力した工数の情報をもとに、全社の収支レポートや案件ごとの収支レポートを容易に作成できるので、経営層からの要求に即時に対応できるようになった。

ほかにも、担当コンサルタントごとの実績工数を出せるので、標準工数と実績工数を比較することで能力評価の基礎情報とするなど、工数管理システムを有効に活用している。

 

 

工数管理の仕組みの構築を成功させるポイントとケーススタディのまとめ

工数管理を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。なぜ工数管理をするのかを明確にしておくこと、工数の入力がしやすく継続できること、工数管理の責任者を決めること、入力した情報を共有して入力するメンバーに意識させること、分析の粒度をあらかじめ決めておくこと、などが挙げられます。

工数管理のためにシステムを導入しようという場合は、目的を明確にして、必要以上に複雑なものにならないように注意が必要です。

また、工数の入力においては、今まで工数を入力する習慣がなかった場合は特に、入力を継続できる環境を作っていかなければなりません。

こうしたことを意識しながら、工数管理が有益になるような仕組みを構築し、業務の効率化や会社の利益のアップにつなげていきましょう。

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