始める!プロジェクト原価管理(6) Excel、原価計算システム、ERPを利用!プロジェクト原価管理の方法3選
前回の記事でプロジェクト原価管理の構築ステップについて述べました。本記事では、原価管理の具体的な仕組みをご紹介します。
今回ご紹介する方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。それぞれの仕組みの特徴を詳しく紹介しますので、自社の目的や現状にあわせて適切な方法を選んで、原価管理を推進してほしいと思います。
目次
Excelを利用
Excelを用いて原価管理を行う方法です。
業務で多くの人が利用しているツールのため使いやすく、また、すでにExcelがPCにインストールされているのであれば、コストをかけず導入できます。
Excelを利用する場合、他の業務で使用しているシステムやExcelから、工数実績・外注費・経費などのデータを原価管理用のExcel上に転記します。ピボットテーブルや関数、マクロなどを用いてデータを加工し、プロジェクト別の原価計算を行います。
原価の予実比較を行う場合、実績原価だけでなく案件管理システム等に登録されている予定原価も収集する必要があります。予定と実績を一枚にまとめ、差異分析を行い原価削減の必要性や方法を検討します。
原価管理にExcelを使用するメリットを紹介します。
メリット
- 使い慣れているソフトのため、利用開始時に使用方法を周知する必要がない。今すぐ簡単に始められる。
- 非常に安価で使える。すでに利用者のPCにExcelがインストールされていればコスト0で利用できる。
- 自由度が高い。まっさらな状態から、ピボットテーブルや関数を用いて自由に計算式を定義できる。
デメリット
- 複雑な関数・計算式やマクロを使用する場合、属人性が高まり、メンテナンス性が低下する。
- データ量が増加すると、集計に時間がかかるようになる。ファイルへの負荷が高くなり、データ破損のリスクが高まる。
- 実績データの収集・転記を手作業で行う場合、人手が必要になる。また、データ改ざんのリスクがある。
- 科目単位での実績集計や共通費の配賦等の細かい計算を行う場合、計算式が複雑になるため、Excelでは対応困難な可能性が高い。あまり細かい分析には向かない。
こんな会社にオススメ
- 今すぐに原価管理を始めたい
- 簡易的な分析ができればOK
- Excelに習熟している担当者がいる
原価計算システムを利用
原価計算用のシステムを導入して原価管理を行う方法です。導入パターンとして以下の2つが考えられます。
- 現行システムを拡張して原価計算機能を付加する
- 既存の一部のシステムを原価計算機能があるものに入れ替える
通常の業務管理システムでは、ユーザが業務を行う際に入力したデータをもとに実績が計上されます。効率の観点から、原価計算機能しか持っていないシステムはほとんどありません。原価計算に必要なあらゆる実績を他システムから連携・手入力する必要があり、非効率だからです。
そのため、業務管理システムに原価計算機能が搭載されているケースが一般的です。原価計算機能がついた業務管理システムの例として、以下が挙げられます。
- 発注管理システム
→外注費の実績は発注管理システムに業務を通じて登録、人件費や経費の実績は他システムから取り込み、原価計算を行う - 工数管理システム
→人件費の実績は工数管理システムに業務を通じて登録、外注費や経費の実績は他システムから取り込み、原価計算を行う - 受注管理システム
→予定原価は受注管理システムに業務を通じて登録、実績原価は他システムから取り込み
原価計算システムを利用するメリット・デメリットを紹介します。
メリット
- 既存のシステム構成を大きく変更する必要がない。
- Excelと比べて詳細な集計・分析を行いやすい。
- データベースにデータが保存されるため、Excelと比べて大量のデータを扱うことができる。過去データの閲覧性が高い。
デメリット
- 他システムから実績を収集するのに一定の時間がかかるため、後述するERPシステムと比べると原価計算のリアルタイム性が低い。
- 実績データの収集・転記を手作業で行う場合、人手が必要になる。また、データ改ざんのリスクがある。
こんな会社にオススメ
- 原価計算の集計作業をExcel管理と比べて簡略化したい
- 詳細な分析を行いたい
- システムの構成を大きく変えたくない
ERPシステムを利用
ERPシステムで原価管理を行う方法です。ERPシステムとは、企業の基幹業務に必要な機能をひとつにまとめたシステムです。
ERPの場合、原価計算に必要なデータをシステム上で全て得られるため、原価計算との相性が良いと言えます。ERPとして展開している原価管理システムも非常に多いです。
プロジェクト型企業向けERPでは、業務で入力された実績データがプロジェクトにひも付き、プロジェクトごとの原価が自動計算されます。原価を可視化できます。
また、受注時に立案した原価予算との対比を行うことで、差異分析を行い原価削減の必要性・方法を検討できます。
メリット
- システムにデータが一元化されるため、集計業務を省力化できる。プロジェクト原価をリアルタイムに近い形で把握できる。
- 一元化によりデータの正確性が向上する。データの利活用が容易になる。
- システム上であらゆる業務データが手に入るため、かなり詳細な分析が可能になる。
デメリット
- すぐに利用をスタートできない。導入コストが高い。
- 統合管理を行うため、既存システムを廃止する必要がある。
- 部分最適ではなく全体最適のため、現場部門単位では業務効率が落ちる可能性がある。
こんな会社にオススメ
- データの集計業務を効率化したい
- より詳細な分析を行いたい
- 原価管理の属人性を排除したい
- 現場の損益意識を高めたい
まとめ
プロジェクト原価管理の方法として以下の3つを紹介しました。
- Excelを利用する
- 原価計算システムを利用する
- ERPシステムを利用する
それぞれにメリット・デメリットがあります。自社の現状や導入目的と照らし合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
原価管理業務を効率化したいという目的の場合、単純に効率性だけを求めるなら、ERPシステムの導入がベストな選択肢になるでしょう。あらゆるデータを一元化できるため、データ連携作業が不要だからです。
しかし、ERP導入には大きなコストがかかります。費用対効果をみて、Excelや個別のシステム利用でそれなりの効率性を達成できれば十分というケースもあるでしょう。
導入目的と、今回紹介した各方法のデメリットをどれだけ許容できるか、あるいは何を重視すべきか考え、最適な選択をしていただきたいと思います。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!