第一回 工数管理を始めよう、現状把握のファーストステップ

工数管理はプロジェクト単位で作業を行う広告制作やシステム開発、プラント/工場などの建設現場で利用されるケースが多いと思います。一定規模のプロジェクトになると複数の作業工程が発生し、作業内容や発生する費用の全体像が見えにくくなるため、プロジェクトを開始する前にどのような作業工程にどのくらいの工数がかかるのかを見積もる必要があります。つまり、作業内容やコストを見えるようにするために、プロジェクトを完成させるために必要な業務を洗い出し、その業務ごとに予定工数を設定します。プロジェクト開始後はその予定工数に対して実績工数を随時計測し、プロジェクトの進捗やコストの発生状況に問題がないかを随時モニタリングする必要があります。この一連の流れが工数管理です。

 

工数管理とはなにか

工数管理とは何か、について調べてみたところ、

〈工数〉すなわち作業の延べ所要時間の多少を検討し、その節減をはかる諸施策を立案、実施、評価することをいう。工数はたとえば、ある作業の遂行が5人の作業者の5時間労働を必要とする場合には、5人×5時間=25人時(man‐hour)というように算定される。工数の多少の検討とは、具体的には、あらかじめ設定されている標準工数と実際にかかった実績工数とを比較し、その差異を把握することであり、それを基礎に工数節減が試みられる。

(出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版)

とありました。

簡単に言うと、「プロジェクトなどの作業時間の管理」をすること、と言えるでしょう。

 

 

工数の単位

ここでは工数の単位として「人時」が例としてでていますが、「人日」(1人が1日で行える作業量)や「人月」(1人が1ヶ月で行える作業量)もよく使われております。

「5人日」と言ったら、1人のメンバーが5日で行える作業量を指します。

工数×時間=原価

となるため、実際にかかった時間を正確に記録することが求められます。

システムエンジニアの派遣などでは、「人月単価」という単位を用いられます。エンジニアの技術や経験によって価格が変動します。

 

工数管理をする目的

工数管理、すなわち作業時間の管理は、プロジェクトが達成するまでに誰が何時間作業したかを数値化してコストを正しく把握するためにも大変重要です。

また、長期間にわたるプロジェクトの場合、こまめに正しい工数を記録していくことで、現時点で予定に対しどのくらい原価がかかっているのを把握できます。場合によってはその後のスケジュールを見直し、改善する必要が出てくることもあるでしょう。

こうした管理を行い、状況に応じた対策を取ることで、プロジェクトの利益を確保し、不採算プロジェクトを減らすことが可能になり、結果として、企業の収益力の向上や生産性の向上につなげることができます。

 

現在、工数管理を必要だと感じていながらもまだできていない、という声が多くの企業のご担当者の方から聞こえてきています。

よく耳にする意見としては、

  • プロジェクトが終わってみないと利益がでているかわからない
  • 一定の期間内に同一顧客で複数のプロジェクトを同時に進行している場合に、総売上と総原価のみ管理しており、顧客全体での利益しか把握できていないため、各プロジェクトの利益状況が見えない

などがあります。

経営層としては早く情報を知りたいのに、プロジェクトが完了するまでわからないということでは次の戦略も後手に回り、他社にも後れを取ってしまうかもしれません。

そうならないように、正しく工数管理をして、いち早く対応していく必要があります。

 

工数管理を始めるときの注意点

これまで工数管理を行っていなかった企業が、あらためて工数管理を行う際、必ずと言っていいほどでてくる問題が、「工数の入力漏れ」です。

特に今までそういう文化がなかった企業では、入力を継続できない人がいて、プロジェクトの原価が結果的に不正確なものになってしまうことがあります。

日々の工数を管理したいのに、入力を忘れてしまって、週に1回、ましてや月に1回まとめて入力するようでは、せっかくの工数管理も十分に活かしきれません。

システムでなんとかしたいという声も多くあるのですが、やはりこれは各担当者の意識の問題が大きいので、最初のうちは、工数を毎日入力することを促す、管理者が入力状況をチェックできるようにして漏れが発生しやすい担当者に指導する、などの対策が必要でしょう。

 

 

工数管理と原価管理

工数管理の効果をより高めるためには、原価管理と組み合わせて考えることが望ましいでしょう。

原価は主に「材料費」「人件費」「経費」が中心となっております。システム開発においては「人件費」が原価の多くを占めるので、原価管理における工数管理の重要性は非常に高くなります。

正しい工数管理ができていれば、それを原価管理に反映させることもできます。

 

 

工数管理と勤怠管理

工数管理は作業時間管理なので、勤怠管理と親和性が高いと言われています。

一日の勤務時間のうち、何時間をAプロジェクト、何時間をBプロジェクト、何時間を打ち合わせ、のように管理することで、勤怠入力がそのまま作業実績管理につながります。

 

作業実績の入力単位については、どのくらいの精度で見たいかによりますが、1時間、30分、15分単位くらいにするのがよさそうです。より厳格に管理をしたいからと言って1分1秒単位での入力を指示しては、入力者の負担が大きくなり、結果入力漏れが発生してしまっては本末転倒です。

また、勤怠管理システムは勤務時間を即時に把握できるので、過重労働の防止にも役立ちます。

尚、IT業における勤怠/工数管理に関しては

第四回 工夫次第で意外な効果も IT企業における勤怠/工数管理の意義とポイント

第五回 単純に見えて意外と様々?勤怠管理と工数管理の関係

を参照ください。

プロジェクト管理について

工数管理のお話をしてきましたが、これまでプロジェクトという言葉が何度もでてきているので、少しプロジェクトの管理について見ていきたいと思います。

大きくプロジェクト管理というと

  • プロジェクト作業進捗管理
  • プロジェクト原価管理

の2つに分けられることがあります。

プロジェクト作業進捗管理は、対象となるプロジェクトの作業分類毎に、作業予定に対する作業実績を登録し、その進捗を管理するものになります。

プロジェクト原価管理は、対象となるプロジェクトの原価予定額に対する実際発生額を管理するものです。

簡単に言うと、プロジェクト作業進捗管理は時間の管理、プロジェクト原価管理はお金の管理といったところになります。

プロジェクト作業進捗管理にはガントチャートを使ったりすることが多いですが、プロジェクト原価管理は円グラフや棒グラフなど様々な切り口で分析されます。

    

 

プロジェクトを管理するには、上記の2つの管理が主に必要となりますが、プロジェクト作業進捗管理とプロジェクト原価管理を紐付けることは容易ではありません。

プロジェクト作業進捗管理では、どこまで作業を進めることができたかを管理しますが、作業内容や対象者の能力により、1時間あたりの進捗度は異なります。

プロジェクト原価は「1時間当たりの単価×工数」で算出することは可能ですが、上述したように作業進捗管理では単純に工数情報のみを利用し、作業進捗を表現することができません。

それゆえ、これらを同時にひとつの仕組みで管理することは難しいとされております。

 

 

工数管理の原価管理以外の意義

工数管理をすることで、原価以外にも見えてくることがあります。

それは技術者や作業者のスキルです。

同レベルの作業内容をAさんは1時間、Bさんは3時間かかる場合、品質が同じであればAさんのほうがスキルが高いことになります。

工数計画を立てる際には、「何時間」というだけでなく、「誰が」というところもポイントとなります。

 

 

「工数管理を始めよう、現状把握のファーストステップ」のまとめ

工数管理とはプロジェクトなどの作業時間を管理することで、その目的はプロジェクトの利益を確保し、不採算プロジェクトを減らし、結果として、企業の収益力の向上や生産性の向上につなげることにあります。

今まで工数を管理する文化のなかった企業は特に、まずは工数の入力作業を定着させるための対策が必要となってきます。そして正しく入力されるようになれば、正しい原価を把握することができます。

また、工数をプロジェクト別に管理することで、各プロジェクトの原価も把握できるようになります。

そのほかにも、工数管理をすることで技術者のスキルを測ることもできます。