働き方改革を知る(1)働き方改革と一億総活躍社会 ~日本経済再生へのチャレンジ~

働き方改革という言葉を最近よく耳にすると感じている方が多いと思います。長時間労働の抑制や多様な働き方の推進をすすめる取り組みのことだと認識している方も多いことでしょう。

施策の表面だけをなぞると、なぜ今こんなにも働き方改革が注目されているのか、どのようなことを目指しているのか本質を見誤るかもしれません。

過労死をはじめとする労働問題を解決するための取り組み という理解は、世間の関心が高まっている理由としては正解ですが、これは働き方改革の施策の一部についてのお話です。

本記事では、そもそもなぜ働き方改革が提唱されることになったのか背景をご紹介し、働き方改革の本質について掘り下げていきたいと思います。

働き方改革とは、そもそも政府が経済振興の大方針として打ち出している取り組みです。

今後少子高齢化が進展し、労働人口が減少することが確実なため、従来の経済政策の延長では、もはや安定的な経済成長が見込めないことが提唱の背景です。そのため、場当たり的な対応ではなく、問題の根幹に手を打ち、人々の働き方ひいては社会のあり方自体を見直すことが必要とされています。

実際に、政府が作成した働き方改革実行計画には、「日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革」という言葉が使われています。日本経済再生とあるように、少子高齢化時代の新しい経済のあり方を構築するという大きな目標に対する取り組みなのです。

引用:首相官邸 働き方改革実行計画(概要)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/05.pdf

一億総活躍社会とは

少子高齢化時代の日本経済再生についての議論は、政府の「一億総活躍社会」の提唱から始まっています。

参考:首相官邸ホームページ 一億総活躍社会の実現「一億総活躍社会とは」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/#m012

働き方改革は、この一億総活躍社会実現のための横断的な取り組みです。
平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に、一億総活躍社会の説明があります。

一億総活躍社会とは、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会である。

引用:首相官邸「ニッポン一億総活躍プラン」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/pdf/gaiyou1.pdf

つまり、アベノミクスの第二ステージの経済成長戦略として位置づけられている、広い意味での経済政策です。単なる経済分野だけの施策にとどまらず、子育て支援や社会保障の基盤強化等の社会福祉分野の施策を重点的に行い、それによって経済を強くするという目標を掲げています。

社会構造が大きく変わる中で、社会のシステム自体のあり方を再構築し根本の問題解決をはかる大きな改革です。
それらの問題解決のためのプランの一つとして働き方改革が提唱されています。つまり、単なる労働問題の解決にとどまらず、日本経済再生という大きな枠組みの中に位置づけられている取り組みなのです。

アベノミクスの第二ステージの目標と働き方改革アベノミクスの第二ステージの目標では、
「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」
の新たな3本の矢を掲げています。


図:筆者作成

新たな3本の矢で大きな経済成果を創出する仕組みはこうです。

まず、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」という第二・第三の矢の結果により、子育てや介護をしながら仕事を続けられる環境が生まれ、

  1. 将来に対する安心感が醸成され、消費や投資が拡大する
  2. 多様な方の労働参加により労働参加率が上昇し、イノベーションの創出が加速する

ことにより経済のさらなる活性化がもたらされます。

また、第一の矢の取り組みによる経済成長の成果を第二・第三の矢の領域に還元することで、子育てや社会保障のさらなる充実に繋げる という成長と分配の好循環の形成を目指します。

働き方改革は、3本の矢を貫く横断的施策であり、上の図で言うと②の矢印の部分の施策です。女性や若者、高齢者等の労働参加率を向上させ、同時に生産性向上をはかることが期待されています。

日本の少子高齢化の状況

ここで、一度日本の少子高齢化の状況について見てみましょう。

出典:厚生労働省「我が国社会保障制度の構成と概況」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/07.pdf

人口は減少傾向、高齢化がどんどん進行していくことが見込まれます。
2025年には、3人に1人が65歳以上に、2060年には2.5人に1人が65歳以上になると推計されています。若い働き手がどんどん減少していくのは間違いないです。

これまでは働き盛りの労働者が日本の経済成長を牽引してきました。
少子高齢化が進むこれからの日本では、経済成長を支えてきた労働者層の減少が見込まれています。そのような状況下では従来の安定的な経済成長はもはや期待できません。

日本の将来の継続的な経済成長のため、これまで以上に多くの層に労働に積極的に参加してもらい、また、労働生産性を高めて、限られた労働人口を有効に活用していく必要があります。

子育てや介護の負担を抱えている女性や、高齢者、正社員ではない働き手等様々な人により積極的に働いてもらうことが重要です。

まとめ

働き方改革は、単なる長時間労働の是正等、労働条件の改善のためだけの取り組みではありません。
もちろんそれは重要な施策の一つではありますが、少子高齢化時代の日本経済再生のため、新しい経済のあり方を構築するという大きな目標に対する取り組みです。

ニッポン一億総活躍プランでは、単なる経済分野だけの施策にとどまらず、子育て支援や社会保障の体制強化といった、経済の基盤自体の強化によって、経済のあり方を刷新することが目指されています。

働き方改革は上記プランの大方針から派生した横断的な施策です。働き方改革は、大企業だけでなく、中小企業を含めた日本全体で取り組むべき改革だと思います。

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