ERP導入の勘所(6)ERPパッケージ導入を失敗しないための検討時のポイント

これまでの記事でも述べてきた通り、ERPは1990年半ば頃から急速に普及して、今ではERP市場も成熟してきており、様々なベンダーからERPパッケージが発売されています。

エンタープライズ・リソース・プランニング、ERPとはなにか 参照)

ERPパッケージを導入している企業は年々増えてきておりますが、同時に、導入に失敗したという話も聞こえてきます。

そこで、ERPパッケージ導入を失敗しないためにも、また、より高い導入効果を得るためにも、導入を検討する際のポイントを確認したいと思います。

ERPパッケージ導入までの流れ

ERPパッケージを導入するためには、いくつかの段階を踏んでいく必要があります。

プロジェクトチームを作る

ERPパッケージを導入するためには、導入プロジェクトを推進するためのメンバーが必要です。課題を明確にするために各部門のユーザへのヒアリングを実施したり、ヒアリングを行うことで明らかになった課題をまとめた上でRFPなどを作成し、ベンダーへの提案依頼や選定の作業を行います。製品決定後のERPパッケージ導入の打ち合わせも行う必要があります。

普段の業務が忙しい人をそのままプロジェクトチームの中心に置くと、プロジェクト以外の業務が多忙のためプロジェクトが遅延する可能性もあります。そうならないためにも、ERPパッケージ導入の検討や作業支援のための時間を確保できる人選をすることが大事です。

また、少ないメンバーで多くの時間を確保することが難しいからといって、プロジェクトメンバーの数を増やして対応しようと考えるのは得策ではありません。あまり人数が多すぎると意見をまとめるのが大変だったり、メンバー全員で打ち合わせをする時間を調整するのが困難になるなど問題もでてきます。

そのため、経営企画部門やIT部門などの全社の業務やシステム化の状況を把握している部署から中心メンバーを選定するのがよいでしょう。

 

自社の課題を確認する

プロジェクトメンバーが決まったら、社内ヒアリング等を行い、自社の課題やERPパッケージの導入目的を明確にしていきましょう。

例えば、

・システムが複数あって情報が分散しているため、全社的なデータの分析に時間がかかっているのを短縮したい

・データの二重入力の手間や転記ミスをなくしたい

・現行システムがとにかく使いにくい

・複数サーバの管理がたいへんなのでERPパッケージを導入してサーバをひとつにしたい

など様々な声があがってくると思います。

どの部門が何に困っていて、ERPパッケージを導入することによってどのように解決したいのかを具体的に明示するほうがよいでしょう。

 

また、新しいシステムを稼動したい時期も明確にしましょう。

例えば、

・現在使っているシステムの保守期限が切れる半年後までには新システムを稼動させたい

・サーバの老朽化により来期が始まるまでに稼動したい

のように時期を具体的に決めるとよいでしょう。

特に決まっていないが早いほうがよい、など期限が曖昧なままERPパッケージ検討プロジェクトを進めても、例えば、業務課題を一通りまとめ終わったあとで社内からの追加要望が次々と出てきてその都度資料を作成しなおしたり、ベンダーからの見積もりが出揃ったあとで、もう少し他の製品も見たほうがよいのではという声が経営層から出てきたりして、検討の延期を繰り返し、結局いつまでたっても製品が決まらないということになりかねません。

予算についても想定しておく必要がありますが、費用感はベンダーに見積もってもらうまで正確にはわかりません。なので、自社の企業規模やシステム化したい業務範囲、既存システムの導入費用などに基づき、おおよその予算案を作成します。

また、自社の要望をすべてかなえようとすると往々にしてコストが膨れ上がってしまうので、要望に優先順位を付けておき、ベンダー見積もり後、予算の範囲内で優先順位が高い要望から順番にどこまでやるかを決める方法が有効です。

また、パッケージの初期費用だけではなく、毎年発生するシステムやサーバなどの保守費用もあるので、導入後のランニング費用についても予算案を作成する必要があります。

 

ERPパッケージベンダーを探す

システム化の業務範囲やその予算、自社の要望が明確になってきたら、ERPパッケージベンダー(以下ベンダー)を探します。

探し方の例としては

・検索サイトでERPなどのキーワードでの検索結果を元に各ベンダーの製品サイトを見て問い合わせる

・ERPパッケージベンダーが出展している展示会や開催しているセミナーに参加して興味を持ったベンダーに詳しい話を聞いてみる

・過去に提案があったベンダーの営業担当者に問い合わせる

・メールマガジンなどで案内のあったERPパッケージの資料を取り寄せる

など方法はいろいろあると思います。

ERPパッケージはベンダーによって様々な特色があります。機能面や価格体系、サポート体制など比較要素は多くあります。初めは広く声をかけてみて、時間をかけて検討しベンダーを絞り込むほうが、より自社の要望に合うERPパッケージを導入できる可能性が高まるでしょう。

 

ERPパッケージベンダーに提案を依頼する

声をかけたベンダーに自社の課題や要望を伝えて、マッチしそうなERPパッケージが絞れてきたら、正式な見積書や提案書の作成を依頼します。

自社の要望をベンダーに伝える方法として、RFP(Request For Proposal)と呼ばれる資料を作成してベンダーに配布する方法があります。これは、あらかじめ自社の機能要件や質問事項を一覧化しておき、それに対する回答書を提出してもらうための「提案依頼書」のことです。

各社に同じ様式の資料を提出し、ベンダーからの質問があればその質問事項及び回答を全ベンダーにメール等で送ることで、平等な提案を受けることができます。

(RFPの作り方については最適なERPソリューションを選定する、RFI/RFPの作り方を参照ください。)

 

また、システム導入形態がクラウドにするかオンプレミスにするかまだ決まっていない、というように要件が定まっていないところは、提案書作成依頼をする段階で複数パターンの提案と見積を作成してもらうよう伝えるのがよいでしょう。

 

提案を受けた内容をもとに選定する

提案された内容を受けて、

・課題、予算、期限について自社の要望に沿った提案になっているか

・システムをカスタマイズして自社の業務に合わせる提案を受けるか

もしくはカスタマイズ費用はかけずに自社の業務を見直してERPパッケージの機能に合わせるほうがいいのか

・初期費用とランニング費用を5年トータルでベンダーごとに比較したらどうなるのか

・導入後のサポートは充実しているか

など様々な角度から検討を進めていきます。

具体的なパッケージ選定の段階では、自社内で主にパッケージを使う人の要望を取り入れる必要があるので、各部門のユーザも導入検討プロジェクトに加わってもらうのがよいでしょう。

時間が確保できるなら、最終選考に残ったERPパッケージを試用してみるという選択肢もあります。

こうして自社に最適と判断したERPパッケージを決定し、契約書の取り交わし後、導入作業に入っていきます。

 

ERPパッケージ導入を失敗しないための検討時のポイントのまとめ

ERPパッケージの導入はある程度時間がかかるものです。急いでいるからと言ってこうしたERPパッケージ検討の段階をふまずに、とりあえず導入して細かいことはあとから考えればよいというスタンスでいると、思い通りの成果を発揮できなかったり、修正しようとしても多額の追加費用が発生することもあるでしょう。

また、導入プロジェクトが長期に渡り、いつしか導入することが目的になってしまい、当初打ち立てた課題や導入目的を見失ってしまうようなことがあってはいけません。

あくまでも自社業務の改善やコスト削減といった課題を解決するためにERPパッケージを導入するという意識を持って検討作業を進めていきましょう。