勤怠管理の基礎知識(2)4ステップで実践!勤怠管理から考える生産性向上のポイント
生産性を向上させるためには、業務の無駄を排除し、より少ないインプットでより多くのアウトプットを生む必要があります。インプットとして、どの会社にもあるものに人的リソースがあります。この人的リソースをいかに上手く活用し、アウトプットを生むかが大きなポイントとなるのです。今回は、どの会社でも行う「勤怠管理」を切り口に、生産性を向上させるために見るべきポイントについて考えていきましょう。
目次
ステップ1:自社の就業実態を知る
生産性を現時点より向上させるためには、まず、現時点でどれだけのリソースを、どれだけの業務に投入しているのかを把握する必要があります。これに役立つのが明確な勤怠管理です。ここでのポイントは「作業時間」と「業務内容」です。各業務を行うにあたり、どれだけの時間を使っているかを把握することが必要となります。
作業時間の把握には、客観的な時間把握ツールを使うことが大きく役立ちます。申告している時間と、実際の就業時間に大きなズレがあるケースは珍しくありません。こうしたことを排除するためには、ICカードやパソコンの作業記録など、電子データを用いてまず労働時間の総計を把握することが必要となります。
次に業務内容を把握します。朝出社して夜退勤するまでに行っている業務の流れや、業務ごとの所要時間を確認します。また、待機時間等の「空き時間」の有無もあわせてみていく必要があります。これには現場担当者からのヒアリングが有効でしょう。また、作業時間が直接売上に対する原価になるような事業を行っている場合は、作業内容ごとに作業時間を都度報告させる「工数管理」と呼ばれるような管理も効果的です。
ここで注意するべきは、リアルな数字を知るために「ごまかし」をさせないこと、正直な申告をすることで申告者に不利益が出ないように徹底した対応をすることです。現在の評価に結びつけるのではなく、今後の改善のために行うということを管理職および一般の労働者に浸透させる必要があります。
ステップ2:業務の無駄と原因を探る
作業時間と業務内容を把握したら、どこに無駄が生じているか、無駄の原因はなにかを探っていきます。無駄の発生要因は様々ありますが、一般的には「個人」あるいは「組織」単位で考えることができます。
「個人」の発生要因
同じ業務内容で人によって大きく作業時間が違うようであれば、その人個人の作業の進め方に問題があるのかもしれません。具体的には、
- 業務への知識が不足しており(業務に慣れておらず)、人よりも一つの作業に時間がかかっている(教育)
- 単にだらだらと作業を行っている(個人の意識)
- 業務の優先順位を適切につけることができず、全てを平行して行うことにより非効率化している(タスク管理)
などが挙げられます。
「組織」の発生要因
個人ではどうにもできない、組織的な要因で業務の無駄が発生している可能性もあります。この原因としては、
- 業務の流れが非効率的である(業務フロー)
- 業務の割り振りが適切でない(タスク配分)
- 外部からの無理な要求により、通常のリソースでは対応しきれない案件を引き受けている(業務量)
- 業務特性に合った就業形態を構築できていない(制度構築)
などが挙げられます。
個人が原因の場合は特定が容易ですが、組織単位の無駄がある場合には「自社のルールが当たり前」になっていて、本当の無駄に気づくことが容易でない場合もあります。そんな場合には外部からコンサルティングをしてもらう、あるいは洗い出した業務をフロー化してみることも有用な対策です。業務を視覚化することで、無駄を発見しやすくなります。
また、上記の要因は単独で存在していることは少なく、複合的に絡み合っていることがほとんどです。自社で生産性を下げているポイントを多角的に探ることが大切です。
ステップ3:対策を立て、実行する
続いて、上記にあげた業務を非効率化している原因に対して対策を立てていきます。
個別の対策としては下記のようなことが想定できるでしょう。
次に対策の実行順序や実行方法を決めていきます。比較的簡単に取り掛かれるところからまずは試しにやってみることは効果的です。しかし、実行にあたり従業員の不満をためてしまうことがないよう、実行方法や期間、実行中の評価方法などは慎重に検討する必要があります。また、全社を巻き込んで対策を実行する場合には、専任の責任者を立てるなど、ある程度強固な施策実行体制を整えることも大切です。
また、上記の施策はなにか一つを実行することにより、相乗効果を生む可能性もあります。たとえば、まずは残業規制を行ってみることで、残業を減らすためにどの業務が問題となるかが浮き彫りとなります。そうすることで、残業規制を行うにはフローの整備や標準化を進める必要があるという意識改革にも繋がります。今まで漠然と問題点を認識していたものの、思ったように着手できていない場合には大きな力を発揮します。
逆に、なにか一つの実行が阻害される場合には、阻害している要因を排除することによって複数の問題が同時に解決される場合があります。たとえば単に残業を規制しようとしても思ったような効果が得られない場合には、先に業務フローの整備が必要な場合もあるでしょう。業務フローが整備され、各フローが標準化されれば、知識が不足している人に対する教育の労力も軽減されるため、それ自体も業務の効率化および時間短縮につながります。
ステップ4:実行結果を検証する
対策を実行したら、期間をおいて結果の検証を行います。ステップ1で行ったような内容をもとに、各業務内容と作業時間がどのように遷移しているか、業務の流れはスムーズになっているか、といったことを検証していきます。ここで注意するべきは、短期的には結果が出ないことが多いということです。特に業務フローの改善には年単位で時間がかかる可能性もあります。また、外部の取引先との交渉が必要な場合は、さらに時間がかかることが想定されます。一般的に生産性を向上させる仕組みを整えることは、一朝一夕ではできないことと覚悟を決めて取り掛かる必要があるといえます。
いかがでしたでしょうか。「勤怠管理」という切り口から生産性向上のための業務効率を考えるシナリオを考えてみましたが、あらゆる業務改善の検討プロセスに通じるものがあります。まずは適切な実態把握から始めてみてはいかがでしょうか。
筆者プロフィール
- ERP「MA-EYES」RPA「WinActor」をはじめとするITツール営業担当。好きなお茶はジャスミン、お酒はハイボール、ロシア産飲料はウォッカではなくクワス。
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