2020年4月以降の企業に関わる重要な法改正をチェック!民法、労基法、派遣法など

2020年10月時点で施行済みの改正

請負契約の見直し(2020年4月)

請負契約における、①報酬、②担保責任に関する見直しが行われました。

①報酬

【改正前】

請負の報酬について、これまでは仕事の完成に対して払われるものであり、途中で契約が解除された場合等のルールは設けられていませんでした。

【改正後】

1.仕事を完成することができなくなった場合

2.請負が仕事の完成前に解除された場合

これらの中途の結果のうち注文者が利益を受けるとき、請負人はその利益の割合に応じて報酬を請求することが可能であることが明文化されました。

 

②担保責任

【改正前】

仕事の目的物に「瑕疵」があった場合に請負人が担保責任を負うこととされ、その担保責任として注文者は、1.修補の請求、2.損害賠償請求、3.契約の解除をすることができると規定されていました。

【改正後】

目的物が契約の内容に適合しない場合に請負人が担保責任を負うこととされ、その担保責任として注文者は、1.修補等の履行の追完、2.損害賠償請求、3.契約の解除、4.代金減額請求をすることができると規定されました。

 

これらの改正により、企業は請負契約書の修正、社内規定の変更などが必要になります。民法の改正は請負に関するものだけではないため、内容を把握し、自社に関係する改正について理解することが重要です。

 

<参考>法務省 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について主な改正事項(1~22)

 

賃金請求権の消滅時効期間等の延長(2020年4月)

未払い賃金の請求期間などが変更されました。

【変更内容】

  • 賃金請求権の消滅時効期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年に。
  • 賃金台帳などの記録の保存期間を5年に延長しつつ、当分の間はその期間が3年に。
  • 付加金を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年に。

これにより企業は社内の給与規定を見直し、従業員に掲示することが必要になります。

 

<参考>厚生労働省 労働基準法の一部を改正する法律について 、未払賃金が請求できる期間などが延長されます

 

時間外労働の上限規制(中小企業)(2020年4月)

改正前は、法律上残業時間の上限はありませんでした。

改正後、残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間とされ、例外として・年720時間以内・複数月平均80時間以内・月100時間未満・45時間を超えてよいのは年間6か月まで、と規定されました。

 

企業は労働時間に関する規定の整備を行い、これを遵守する体制を整えなければなりません。

 

<参考>厚生労働省 時間外労働の上限規制

 

派遣労働者の同一労働同一賃金(2020年4月)

以下のように派遣法が改正されました。

  • 「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することを義務化
  • 派遣先は派遣会社と労働者派遣契約を締結する際、派遣会社に対して賃金等に関する情報を提供することを義務化
  • 派遣会社から派遣社員・派遣先などへの情報提供を義務化

 

「派遣先均等・均衡方式」では、派遣先で同様の業務を行っている従業員の賃金を考慮して、派遣社員の賃金を決定します。「労使協定方式」では、派遣会社と派遣社員間の労使協定により賃金を決定します。

 

この改正により、派遣先、派遣企業、派遣社員の3者間による情報の授受が重要になります。派遣契約を行う企業は、情報提供および、派遣社員の待遇の確保に努めなければなりません。

 

<参考>厚生労働省 派遣労働者の同一労働同一賃金について平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>

 

電子申請の義務化(2020年4月)

特定の法人の事業所が社会保険・労働保険に関する一部の手続を行う場合には、必ず電子申請で行うことが規定されました。

 

特定の法人とは、「資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人」、「相互会社」、「投資法人」、「特定目的会社」とされています。また、一部の手続きについては被保険者報酬月額算定基礎届、年度更新に関する申告書、被保険者資格取得届などの申請が対象となります。

 

電子申請には、政府が提供するe-Gov を利用することができます。企業においては、e-Govの利用準備や申請データを出力することができるシステムの導入などを検討することが望まれます。

 

<参考>厚生労働省 2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます

 

ハラスメント対策の強化(2020年6月)

職場のパワーハラスメント対策が法制化され、パワーハラスメントの防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されました。

これまで努力義務とされていたパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントに関する対策が義務化されたことにより、社内外の相談窓口の設置や、社内でのハラスメントに関する勉強会など、ハラスメントを防止するための措置を講じる必要があります。

 

<参考>厚生労働省 パワーハラスメント対策について

 

電子帳簿保存制度の見直し(2020年10月)

電子化の普及に伴い、電子帳簿の保存要件が変更されました。

これまでは電子データの受領者によるタイムスタンプの付与が必要でしたが、改正後は発行者がタイムスタンプを付与していれば、受領者によるタイムスタンプの付与は不要になりました。また、ユーザーが自由にデータを改変できないシステム(クラウド会計・経費精算サービス等)を利用した保存方法が認められました。

 

企業においては、社内システムの見直しや、要件を満たしたシステムの導入などが望まれます。

電子帳簿保存法については、電子帳簿保存法 2020年10月の改正とその対応についてでも紹介しています。

 

<参考>財務省 「令和2年度税制改正」(令和2年3月発行)

 

2020年10月時点で施行予定の改正

独占禁止法の改正(2020年12月)

この改正では、調査協力減算制度の導入や課徴金の算定方法の見直しなどが行われます。

 

調査協力減算制度の内容

  • 申請順位に応じた減免率に、事業者の実態解明への協力度合いに応じた減算率を付加
  • 申請者数の上限を撤廃
  • 事業者による協力の内容と公正取引委員会による減算率の付加について両者間で協議

 

課徴金の算定方法の見直し内容

  • 算定期間を延長、一部の売上額が不明な場合の課徴金の算定基礎の推計規定を整備
  • 密接関連業務の対価や談合金等を算定基礎に追加
  • 軽減算定率・割増算定率の見直し

 

企業は自社への影響を考慮した準備(文書管理など社内規定の整備)を行い、コンプライアンスを遵守するとともに、速やかな減免申請、積極的な調査協力を実行できる体制を整えることが重要となります。

 

<参考>公正取引委員会 改正独占禁止法(令和元年)

 

割増賃金率の引上げ(2023年4月)

平成22年4月1日施行の改正労働基準法において、月60時間超えの時間外労働に対する割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられていましたが、中小企業には適用が猶予され、これまでは大企業にのみ課せられていました。

しかし、その猶予措置が終了し、2023年4月以降は大企業と同様、中小企業においても割増賃金率は50%となります。

 

中小企業は社内の給与規定などを整備し、適切な法対応を行う必要があります。

 

<参考>厚生労働省 改正労働基準法 2.法定割増賃金率の引上げ

 

税制関連

消費税法改正(2021年3月31日以降)

「法人税の申告期限の延長の特例」の適用を受ける法人が、「消費税申告期限延長届出書」を提出した場合には、その提出をした日の属する事業年度以後の各事業年度終了の日の属する課税期間に係る消費税の確定申告の期限を1月延長することとされました。

これは、令和3年3月31日以後に終了する事業年度又は連結事業年度終了の日の属する課税期間から適用されます。

令和2年4月 国税庁「消費税法改正のお知らせ」より抜粋

企業は、特例内容を理解し、適用を受ける場合には「消費税申告期限延長届出書」を提出することが必要です。

 

<参考>国税庁 消費税法改正のお知らせ(令和2年4月)

 

連結納税制度の見直し(2022年4月)

連結納税制度の見直しでは、グループ通算制度への移行が重要な観点となります。

グループ通算制度は、企業グループ内の各法人が個別に法人税額の計算・申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度です。

グループ企業においては、法人税額の計算・申告のため、会計システム等の見直しや申告対応などが必要となります。

 

<参考>財務省 令和2年度税制改正、国税庁 グループ通算制度の概要 令和2年4月

 

まとめ

2020年4月以降の重要な法改正について記載しましたが、企業によってはこれらの他にも対応必須な法改正が存在します。

自社に関わる法改正についてその内容を理解し、適切に対応できるよう早めの対策を講じることが重要です。

 

※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2020年10月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。

筆者プロフィール

Kose
Koseビーブレイクシステムズ
休日はペットを愛でながらお酒を飲んでいます。

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