「2025年の崖」について、クラウドERPの営業担当が思うこと
『2025年の崖』という言葉をご存知でしょうか。
『2025年の崖』は2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」内の表現です。DXレポートは経済産業省のウェブサイトからダウンロードが可能です。
本文は57ページに及ぶ長い文章ですが、非常にわかりやすいサマリーも用意されています。本記事では、クラウドERPの営業マネージャーとして日々顧客の課題と接している立場から、2025年の崖についての簡単な解説と、筆者が感じていることを書きます。
『2025年の崖』については、以下の記事でも考察していますのでこちらも併せてご覧ください。
「2025年の崖」から転がり落ちないために、どうするか<デジタルトランスフォーメーションを考える2> |
目次
2025年の崖とは何か
DXレポートは、簡単に言えば下記問題に対する提言です。
新たなデジタル技術を活用できないと、2025年以降に年間12兆円の大きな経済喪失が発生するという2018年時点からの未来への警鐘
この、2025年から発生が見込まれる経済損失を「崖」と表現しています。
2025年が近くなってきたこと、ここ1、2年でDXという言葉が人口に膾炙する中で認知が広がっている概念といえるでしょう。
なぜ2025年の崖が起こるのか
なぜ、新たなデジタル技術(最新のITサービス、ソフトウェアと言い換えてもいいかもしれません)を活用できないと「崖」が発生するのかというと、従前の古いシステム(レガシーシステム)を使っていると以下のような問題が起きる可能性が高まるからである、とレポートに書かれています。
- ツギハギのレガシーシステムは情報集約に問題があり、適切なデータ活用ができないため、市場の変化に対し迅速な経営判断ができない
- 古い技術で作られ、ドキュメントも整備されていないシステムは保守運用のコストが嵩む
- 運用人員が不足し、セキュリティリスクも高くなっている
上記リスクの危険度が、2025年以降一定の割合を超えるため、大きな損失が発生するという見立てになります。
しかし、システム刷新を阻む要因があり、そちらも挙げられています。
- 経営陣がリスクを把握していない
- 既存システム刷新の推進力がない
- 既存のシステムの刷新コストが高い
- システム導入ベンダーとの関係性の問題
- 社内人材不足
ここで挙げられていることは日々お客様とお打ち合わせする中で、思い当たるものばかりです。
システム導入の推進力
業務システムは高額であり、一般的には部署レベルではなく会社全体として大きなプロジェクトとなります。「色々検討したが、システム刷新・新規システム導入を延期した」というお客様は非常に多いです。
営業としては、商談の際にお客様が「新規システムを導入しなくてはいけない理由があるか」という事は最初に気になるところです。理由がないと、決定しなければいけない時期も明確ではなくシステム導入のプロジェクトが延期される可能性が高いからです。
当たり前ですが「買う人にしか売れない」のです。個人に対するセールスと異なり、その場の勢いでシステムを購入するようなことはありません。組織としての決定が必要です。
「システムを刷新・導入しなくてはいけない理由」とは、例えば以下の様なことです。
- 既存ベンダーのサポート終了が決まった
- 上場のためにIT内部統制を実施する必要がある
- 既存システムでは新しい法律に対応できない
- システム停止による損失や機能の不備による不正等が既に発生してしまった
上記のような理由がなく、「システムもそろそろ古くなってきたし不便だから…」というスタンスでは推進力が足りず、まさにレポートに書かれているような、コストの問題や現場の抵抗等でシステム刷新が棚上げになる場合が多いです。
ただ現実として、業務システム界隈ではここ数年新規システム導入は活発です。
その理由は、2025年の崖のリスク認識が広まった…からではなく、「コロナによる就業形態・社会構造の変化」と「電子帳簿保存法・インボイス制度などの法制度改正」です。2018年のレポートはコロナ禍前ですからこんな事は想定しているわけもないですが、図らずも外部要因により日本のDXは急激に進んでいると感じる次第です。
これからもやってくる「崖」のために
DXレポートには、2025年の崖を克服するための具体的な手順や指針が書かれています。
私はDX実現の一部として機能するERPシステムの営業ですから、「常に最新の機能にアップデートされるクラウドERPで、業務の標準化を達成することで2025年の崖を回避しましょう!」とPRしたいところです。
ですが、本質的には、そういうことではないと思っています。
『2025年の崖』という言葉があるから、2025年を境になにか特別変化が起こるように思えてしまいますが、ITの世界は日進月歩とまではいわずとも、2~3年毎にブームの変化や小さなイノベーションがあります。それが積み重なって10年20年後には大きな変化に感じるのではないでしょうか。
結局は「長く使った古いシステムを入れ替えるのは大変、古いシステムを使い続けるのはリスク」という話です。DXという言葉が流通する以前、私が業界に入ってきた2000年代にはCOBOL等の古い汎用機を使い続けるリスク、マイグレーションの困難が叫ばれていました。
「崖」は定期的に現れるのです。
「現状維持は衰退である」という言葉がよく言われますが、現状維持を続けていると、変化しなくてはいけない時のコストも増え続けています。そして、外的要因に慌てて対応するため、十分な検討・導入期間がないなかで、間に合わせのための不本意なシステム導入になることもままあります。
現状の問題を回避するために、最新の、流行りのシステムを入れるのは一つの手段ですが、変化を迫られてから変わるのではなく、常に先を見越して早め早めに変化していくような企業運営の姿勢そのものが必要なのではないでしょうか。
<参考>
経済産業省:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
筆者プロフィール
- 営業職。カレーが好きです。得意技は福岡日帰り出張。
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