インボイス制度対応に求められる「適格」な請求書とは

 2023年10月1日から適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が開始されます

このインボイスという言葉、1年ほど前から徐々に、「今後対応しなくてはいけないもの」として名前を聞くようになりましたが、当初違和感があったのは私だけでしょうか?

というのも、invoice=請求書の英語訳、という認識だったので「請求書制度が始まる」と言われてもピンとこなかったのです。どうやら、日本の消費税は各国間での貿易が盛んなEU諸国で採用されているVAT(付加価値税)を参考にしており、インボイスもそちらの名称に習っているようです。

インボイス制度には以下のポイントがあります

  • 適格請求書発行事業者登録
  • 適格請求書の発行
  • 適格請求書の保存

例えば「適格請求書の保存」には、2022年1月から始まる電子帳簿保存法や、その後の電子インボイス制度も関係してくる等、影響範囲は広いのですが、本記事では主にインボイス制度の目的と、請求書の発行を中心に的を絞ってお伝えします。

 

インボイス制度の目的

そもそも、インボイス制度はどのような目的で導入されるのでしょうか。

収入が給与および配当収入等のみの一般の会社員は、消費税とは最終消費者として何かを購入したときに払うだけのものですが、事業を営んでいる場合は売上もあれば仕入れもあるので、消費税を払うことも、受け取ることもあります。

そのまま受け取った消費税を全額国に収めるとすると、最終消費者に商品が至るまでの間に、例えば素材メーカー~製造メーカー~卸売~小売~消費者と、1つの商品で何重にも税金が払われることになります。

そういったことを解消するために、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた分だけ納付することができます。また、赤字等で支払った消費税の方が多かった場合は、還付という形で払いすぎた消費税を戻してくれます。これを「仕入税額控除」といいます。
前述したとおりヨーロッパでは消費税にあたるものを「付加価値税」と呼びますが、個人で見ると消費に対して支払う税ですが、社会のお金の流れ全体からするとまさに「付加価値税」という表現が相応しいのではないでしょうか。なお、アメリカには消費税はなく、「売上税」という形で最終消費者のみが税金を負担するので、仕入税額控除は必要ありません(アメリカ方式のほうが「消費税」という言葉に近いかもしれません)。

この仕入税額控除を決まった方式で正確に計算するために、その計算のもととなる請求書がインボイス制度に対応した”適格な”請求書でないといけない、というのが適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度の要旨です。皆が同じルールで正確に消費税を納めることが目的と言えます。
※なお、2029年10月1日に完全移行するまで経過措置があります。

それでは、適格な請求書とはどういうものでしょうか。

 

適格な請求書

ことの始まりは、消費税率が内容によって異なるという軽減税率制度が2019年10月に導入されたことがきっかけになります。

今ではあまり意識することもありませんが、「ファーストフードのテイクアウトとイートインで税率が違う!」と当時盛んにニュースになっていたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

軽減税率制度の開始とともに、請求書の様式が変更になりました。それが現行の様式である「区分記載請求書」です。区分記載請求書等保存方式が始まった時点で、2023年に適格請求書等保存方式が始まることは決まっていたので、区分記載請求書は経過措置であったわけです。

 

「区分記載請求書」と「適格請求書」の違いを以下にまとめました。

実際の請求書面には、例えば以下のように記載します。

請求書としてはいくつか項目が増えるだけですが、項目だけではない変化として、「端数処理のルールが定められた」というものがあります。

区分記載請求書では、端数処理のルールは決まっていなかったのですが、適格請求書等保存方式では端数処理は「税率ごとに1回」となりますので、明細が10%のみの場合1回、10%と8%が混在するならば2回です。

現在、請求書に明細が複数ある場合に明細ごとに端数処理を行っているような場合は、適格請求書保存方式の計算では消費税額が異なる可能性があります。

 

早めの確認、申請を

適用されるのは2023年10月1日からですので、後2年の猶予があります。
ただ、適格請求書を発行するための事業者申請登録はもう始まっていますし、少なくとも現在すでに課税事業者である場合は、殆どの企業が登録すると思われます。
請求書をシステムで発行されている場合は、遅かれ早かれ対応がなされると思いますが、お使いのシステムの対応時期、内容などを今のうちに確認しておきましょう。

また、今回は書面の請求書を想定した内容になっていますが、インボイス制度ではこのような書面の形式ではなく、電磁的にデータだけをやり取りする電子インボイスでも対応可能になりますので、WEB請求の仕組み等もこの機会に検討されてはいかがでしょうか。

 

 

参考:
国税庁 適格請求書等保存方式の概要
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

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