第三回 中小企業におけるERPパッケージ導入の効果

ERPパッケージの導入により、企業に様々な効果をもたらすと言われていますが、特に中小企業においては、まだ導入企業は決して多いとは言えない状況にあります。

 

 

中小企業におけるIT導入状況

中小企業庁では、中小企業の範囲を以下のように定義しています。

・製造業その他

資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

・卸売業

資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

・小売業

資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

・サービス業

資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

 

中小企業庁の調査によると、中小企業におけるIT導入の割合は、「一般オフィスシステム」を導入している企業は全体の55.9%、「給与、経理業務のパッケージソフト」のような内部管理業務向けに導入している企業は全体の40.3%で、「調達、生産、販売、会計などの基幹業務統合ソフト(ERP等)」を導入している中小企業については、全体の21.5%という現状です。

引用元:平成29年3月 中小企業庁 「中小企業・小規模事業者のIT利用の状況及び課題について」

 

中小企業がIT投資を行わない理由としては、

・ITを導入できる人材がいない

・導入効果がわからない、評価ができない

・コストが負担できない

・業務内容にあったITがない

・社員がITを使いこなせない

などが挙げられています。

引用元:平成29年3月 中小企業庁 「中小企業・小規模事業者のIT利用の状況及び課題について」

 

中小企業は、自社の業務にあった導入や運用が容易なITシステムを、コストを掛けずにどのように導入運用が進められるかが課題となっており、国の政策としては中小企業へのERPパッケージを含めたIT導入をIT導入補助金などで促進しています。ただし、どのような導入効果があるのかがわからないと投資を行うことはできないと思います。

そこで、ERPを導入することによりどのような具体的な、効果があるのかを見ていきたいと思います。

 

 

ERPパッケージの一般的な導入効果

ERPパッケージを導入することによる一般的な導入効果を説明します。

 

・データの多重管理をする必要がなくなり業務効率化が進み、転記ミスも防げる

ERPパッケージは企業経営に必要なシステムをひとつにまとめた仕組みで、情報を一元化し、管理することが可能です。

個別にシステムが存在している場合、例えば、営業部門に販売管理システムがあり、経理部門に財務会計システムが存在するようなケースを見てみます。

取引先に製品を販売するときは、営業部門が販売管理システムに取引先の情報や販売した製品の情報を入力し、請求書の発行などを行い、その後、経理部で営業部から送られてくる情報を元に、財務会計システムに正しく入力するという流れになるでしょう。

全社で統一したERPパッケージを導入した場合、営業部門がERPパッケージ内の販売管理機能を使って必要な情報を入力すれば、経理部門がわざわざ同じ内容を再度入力しなくても、すでにデータベースに登録された情報を元に、財務会計処理を実行することができます。

 

・リアルタイムに全社レベルでの情報が把握できる

全社で一元化されたERPパッケージを導入することで、各部門にて入力されたデータは一箇所に集約され、リアルタイムで情報が更新されていきます。

例えば販売管理システムに入力した情報を月末に一度財務会計システムに流すという作業をしていた場合、月中において財務会計システムの販売管理に関する情報をリアルタイムに確認することはできません。

しかし、ERPパッケージを導入し、販売管理と財務会計をリアルタイム連係し、情報を一元化すれば、月中の財務会計データはその時点の販売管理に関する情報が反映されたものとなり、正しい数値の把握が可能です。

また、経営レポートについても、これまで個別のシステムから情報を集め、それを加工してレポートを作成する必要があり、とても時間がかかっていた状況から、ERPパッケージをうまく活用することで、経営層が知りたい情報を容易に出力できるようになり、経営判断のスピードアップにもつながります。

 

・法改正、制度改正等の対応

これまでにも金融商品取引法のような大きな法改正により、システムを見直さなければならないことがありました。IFRS(国際財務報告基準・国際会計基準)対応についても今後求められる可能性があるなか、こうした制度改正の対応は優先度の高い事項です。

法改正や制度改正対応にあたり、複数のシステムが存在する場合、それぞれのシステムベンダーに依頼して修正する必要があり、その整合性がうまく取れなかったり、これまでうまくいっていたデータの連携に不具合が生じたりしてその対応に時間が割かれるというケースがあります。

ERPパッケージのようにひとつのシステムであれば、ひとつのベンダーによるサポートもしくはサービスを活用し、データ連携の不具合が起きることもなく、法改正や制度改正対応が実現できるでしょう。

 

・ITコストを削減できるケースもある

これは導入効果とは少し違いますが、ERPパッケージも上手に導入することでコストを削減できるケースがあります。

ERPパッケージの導入にコストがかかる場合、それは主にカスタマイズ費用によるところが大きく、パッケージ機能をベースにカスタマイズを抑えるかもしくはノンカスタマイズ導入を実現できれば、低コストで導入することも可能です。

現在はSaaS環境も整ってきており、月額制でより安価にERPを導入できるようになっています。

 

一方でERPパッケージ導入が上手くいかない主な理由としては、

・自社の業務や規模に合っていないERPパッケージを無理に導入してしまった

・入力するデータが少ない、入力する習慣が浸透していないため分析に活用できていない

・カスタマイズが多くなり、想定以上にコストがかかってしまった

といった内容が多いようです。

ERPを選定する時は、自社の業務にマッチしたERPパッケージを選定することや導入後の入力業務を既存のシステムは利用せず、ERPパッケージからのみ利用するといったことを意識して検討したほうが、導入後有効に活用できるでしょう。

 

業種ごとで見るERP導入効果

つづいて、製造業、流通業・卸売業・小売業、IT業・サービス業、広告業・メディア、についての導入効果を説明します。

 

・製造業

ERPの起源であるMRPが製造業向けに作られたということもあり、製造業とERPパッケージとの相性は良く、導入効果も多いと言われています。

具体的な例としては

・販売管理画面に「数量」「予定金額」「納期」といった情報を入力すれば、生産管理画面にもその情報を再入力することなく表示させることができる

・作業指示、組み立て、補充といった生産管理と、販売・購買の管理を包括的に処理できる

・在庫管理と生産管理の連携により、在庫数のズレが生じないようになる

こうしたことが挙げられます。

しかし、製造業向けERPパッケージは古くからあるゆえに、現在も古いシステムを使っている企業も多く、システムの老朽化が課題となる企業も増えているようです。

 

・流通業・卸売業・小売業

流通業では、B2B・B2Cと様々な顧客からオーダーを受けますが、ERPパッケージを上手に活用することで、オーダーに関する多くの情報を一元的に管理し、二重入力をなくしミスも軽減でき、こうした処理にかかる時間を大幅に短縮できることが見込めます。

小売業ではPOSシステムやWEB通販などとの連携をすることで、更に効率化が図れます。

 

・IT業・サービス業

在庫を持たないIT業やサービス業において、ERPパッケージの中心機能は案件やプロジェクトの管理になります。プロジェクト単位での採算を算出し、経営判断に必要な情報を得ることもできますし、プロジェクト開始前の引き合い段階からの情報を管理できる機能があれば、売上予測の精度を上げることも可能です。

 

・広告業・メディア

個別システムをいくつか導入していて、それぞれのシステムが連携されていないような場合、システム化されていない部分の業務処理が人により違うなど統一性の無いものになってしまい、結果として非常に効率が悪くなることもあります。

例えば、案件を受注した営業が個々で案件管理をしていて、完了した案件を月末にまとめて管理部門に報告してくるため業務量が月末に偏るなどの問題もあるでしょう。

ERPパッケージを導入することで業務全体を管理し、営業部門と情報を共有することができるようになれば、管理部門の業務量を平準化することも可能です。

 

ERPパッケージ導入の効果のまとめ

ITシステムを導入したいと考えているが、様々な要因から導入できずにいる中小企業はまだまだ多いと思います。

費用がかかるのではないか、使いこなせないのではないだろうか、という意見があると思いますが、今回の記事ではそうした企業の方々に参考にしていただけるような導入効果を挙げてみました。

転記ミスが多く、チェックや修正に負荷がかかっていたり、リアルタイムに全社的な情報を見たいと考えていたり、法改正対応に手間取っていたり、こうした課題がある場合は、ERPパッケージを検討する価値はあると思います。

費用については、最近はクラウドやSaaSの普及により、月額で安価なERPサービスも出てきています。

自社の課題にERPパッケージによる効果を当てはめて、リスクやデメリットについても考えながら検討を進めていくことで、導入後もよりよい効果が生まれるでしょう。