給与前払いサービスはどう選ぶ?導入目的から選定ポイント、代表的な前払いサービス紹介:ITツール・サービス徹底比較

【2019年4月10日追記】

働いた分のお金を、給料日を待たずに受け取ることができる「給与前払い」制度が近年広がりを見せつつあります。給与前払い制度をサービスとして提供する会社も数多く存在しますが、前払いサービスを導入する具体的な目的や、サービスを選択する際のポイントがわからない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、前払いサービスを企業が導入する目的や選定ポイント、現在提供されている代表的な前払いサービスをご紹介していきます。

前払いサービスを導入する目的

 

給与前払いサービスを導入している企業は、どのような目的でサービスを利用しているのでしょうか。大きな目的を3つご紹介します。

 

求人率、採用定着率アップ

特にアルバイトやパートのような雇用形態では、働いた分の給与をより早く受け取ることに関心をもつ求職者の方が非常に多いです。

アルバイト情報サイトの検索キーワードランキングでも、「日払い」というワードは検索順位が高く、日払い可能な企業を条件として就業先を探す求職者が多いことが窺えます。

また、採用後の定着率アップにも効果があります。より自由なタイミングで給与を受け取れること、働いた成果が給与として即座に可視化されることで、従業員のモチベーションがあがることが要因として大きいと考えられます。

企業の福利厚生として 急な出費への対策にも

給与前払い制度がアルバイト・パートの方に大きなニーズがあるのは前述の通りですが、正社員のみの企業でも、福利厚生の一貫として前払いサービスを導入する企業が増えています。

冠婚葬祭や急な転居、入院、たまたま金額の大きな買い物が発生するなど、予期せぬタイミングでまとまったお金が必要になるケースはよくあります。また、新入社員は、引っ越しや定期代購入など、なにかと出費が多いものですが、給与の支払い日によっては入社から初任給まで2ヶ月近く空いてしまうケースも珍しくありません。いざという時の備え、あるいは手軽に給与を受け取れる手段として、給与前払い制度のニーズがあります。

 

事務作業の効率化

給与前払い自体は、必ずしも何かサービスを利用しなければならないものではありません。しかし、給与前払いを行うためには、以下のような作業を行う必要があり、担当者に大きな負担がかかります。

 

・従業員からの前払い要望をうけ、許可する
・勤怠情報をもとに、該当日までの給与を計算する
・前払い金額を渡す(現金、あるいは口座振り込み)
・給与支給時に、前払い金額を差し引く

 

これらを前払いサービスに代行してもらうことで、企業担当者の負担が大きく減り、前払い制度の導入ハードルが大きく下がります。

前払い制度を利用することによる従業員の負担軽減

アルバイトやパートで「日払い」が条件となっていても、給与の受け取りのために終業後に会社のオフィスへ行かなければならない等、従業員の負担が大きければ使いづらいものです。

また、特に「日払い」等が労働条件として定められていない正社員で、予期せぬ出費等のために前払い制度を利用する場合、会社の人に自身の経済事情を推測されてしまうなどの理由で利用をためらう従業員も少なくないでしょう。

前払いサービスを提供している会社の多くは、ATMを使って自分の口座から給与を受け取れるため、わざわざオフィスに出向くなどの負担はありません。また、前払いを直接上長に依頼する必要がないため、従業員が前払いサービスを利用する心理的ハードルが下がります。

 

選定ポイント

 

法令を遵守した運用が可能か

前回の記事でも言及したように、給与の前払いサービスは法律に抵触する可能性があるとして議論されていました。経産省に問合せのあった方法で提供される給与前払いサービスは「問題ない」という結論が出ていますが、前払いサービスの内容によっては法的に問題となってしまうケースもあります。

特定のサービスを利用していた企業が何らかの責任に問われたことは現状ないようですが、問題が起きた場合、サービスの突然の停止や金銭的な損害を受けないとは言い切れません。サービス内容や自社での運用方法を事前に確認し、法的に問題のない運用ができるサービスを選択しましょう。

 

前払いの仕組み

前払いサービスは様々なものがあります。「前払いサービスを提供する」という点ではどのサービスも共通していますが、実際にどのような方法で前払いサービスを提供するか、また、前払いのために必要な業務をどこまで補助するかはサービスによって異なります。

前払いサービスの提供方法、また、事前に必要なものを確認し、自社の運用にあったものを選択するとよいでしょう。

サービスごとの主な違いとしては以下のようなものが上げられます。

 

1.前払いを行うための準備資金

前払いを行うためには、あらかじめ一定の金額を資金として準備する必要がありますが、資金の準備を利用企業が行うか、サービス業者が行うかはサービスによって異なります。資金準備を利用企業が行うサービスは「直接払い型」、サービス業者が資金を用意して支払い、月末等所定のタイミングで利用企業に利用分を請求するサービスは「立て替え型」などと呼ばれます。

直接払い型は予め資金の準備が必要ですが、企業が用意したお金を直接従業員に渡すことと変わらないため、法的にはより透明度の高い前払い形態です。

立て替え型は事前に資金の準備が必要ないため企業の負担は減りますが、サービス内容によっては法律に抵触する可能性がゼロとは言えないため、事前にサービス詳細をしっかりと確認する必要があります。

 

2.前払いサービス専用口座の開設が必要か

前払いサービスを利用するため、現在企業で開設している口座の他、給与の前払い専用口座の開設を求められるサービスがあります。直接払い型のサービスで求められることが多いようですが、直接払い型であれば必ず専用口座が必要というわけではないので、実際に検討される際にはチェックするとよいでしょう。

3.既存の勤怠システムが利用可能か(自社で利用している勤怠システムがある場合)

前払いサービスには、前払い可能な給与金額を計算するために従業員の勤怠データが必要です。特に、給与の「日払い」を実現するためには、勤怠データを毎日前払いサービスへ提供する必要があるので、勤怠システムから都度手動でデータをダウンロードして加工する必要があるなど、データの提供方法によっては担当者の作業負担が大きくなってしまいます。

勤怠システムの情報をそのまま利用できるか、また、システムの自動連携等が可能かなどのデータの受け渡し方法についてもチェックするとよいでしょう。

 

4.勤怠システムの提供はあるか(自社で利用している勤怠システムがない場合)

前払いサービスの利用を検討する企業の中には、現在勤怠管理をシステムで行ってない、または、前払いサービスの導入にあわせて勤怠システムの入れ替えを検討する企業もあるかと思います。その場合、前払いサービス利用時に使う簡易的な勤怠システムをあわせて提供しているサービスがあるので、そういったものを選択すると作業負担が減ります。

また、勤怠管理専用の他製品と連携可能なサービスもあるので、前払いサービスと勤怠システムをあわせて検討するとよいでしょう。

 

前払いサービスを利用する場合の利用料

前払いサービスを利用する際にかかる費用体系はサービスごとに異なります。

概ね、以下のような形で費用がかかるサービスが多いです。

 

1.サービス初期導入費用

サービス導入時に必要な各種システムの構築や設定等にかかる費用です。

初期導入費用がかからないサービスも多くあります。

2.サービス利用料

サービスを利用するためにかかる費用です。

主に月額固定利用料、および1回のサービス利用ごとにかかる利用料で構成されています。

 

また、サービス利用料の負担者も、サービスによって企業負担、従業員負担と分かれます。

一般的に、初期導入費用やサービス利用の月額費用は企業負担、サービス利用1回ごとに課される費用は従業員負担となっているサービスが多いですが、企業によって費用の有無や負担者は異なるので、詳細を確認するとよいでしょう。

 

従業員にとって利用しやすいシステムか

前払いサービスは、実際に利用する従業員にとって使いやすいものであることが肝要です。先程のサービス利用負担額も従業員目線で使いやすいかどうかを測るためのひとつの指標です。また、利用時の手続きや、給与の受け取り方法(給与口座に振込、提携ATM等からの引出し)など、実際にサービスを利用する際に手続き方法を比較することもよいでしょう。

 

ツール紹介

速払いサービス/株式会社エーピーシーズ

https://www.apseeds.co.jp/sokubarai/index.html

 

マイナビのグループ企業が提供する、法令遵守を徹底した「業務委託形式」のサービスです。業界最長の10年以上という提供実績で、上場クラスの大手企業からも支持を受けています。日払い給与の計算、振り込み等の他、システム連携、問い合わせ対応など、日払いにかかる日々の業務をほぼ請け負うため、導入企業は必要最小限の工数で日払い化の実現が可能です。また、「利用したい給与サービス」「法務担当者が推奨する給与前払いサービス」「採用担当者が導入したい給与前払いサービス」(日本マーケティング・リサーチ機構調べ)の3つの部門でNo.1となりました。

 

 

前給/きらぼし銀行

https://www.kiraboshibank.co.jp/hojin/fukurikousei/maekyuu/index.html

 

銀行が提供する前払い制度です。専門機材は不要で初期費用はゼロ、また、勤怠データや従業員データ等の登録に簡易ツールが提供されており、少ない費用負担や作業で週払い、日払いに近いサービスを提供することが可能です。従業員はPCや携帯から前払いを申請すると、最短で翌日にはすでに使っている給与口座から給与の受け取りが可能です。2005年にビジネスモデル特許を取得しており、労働基準法等の法律を意識して作成されたシステムですのでコンプライアンス的にも安心、導入後のアフターフォローも万全です。

 

 

Payme/株式会社ペイミー

https://payme.tokyo/

 

「日本の給料を、もっと自由に。」をスローガンに掲げる、給与即日払いサービス。導入費用・運用費用が一切かからないこと、誰でも迷うことなく利用できるシンプルで使いやすいシステムであることが特長です。また、1社1名を基本にサポートスタッフがさまざまな疑問やトラブルに対応できる体制を用意しています。

 

enigma pay/株式会社enigma

https://www.enigma.co.jp/pay/

 

様々な産業向けFinTechサービスを展開する会社が提供する前払い給与システムです。新しい口座の開設は不要、前払い申請はスマホ、PC、ガラケーから可能で、最短即日で給与振り込み可能である点が特長です。サービス導入、システム運用の企業側負担も増やすことなく給与日払いが実現できる点を評価され、第2回HRテクノロジー大賞にて「注目スタートアップ賞」を受賞しています。

 

CYURICA/株式会社ヒューマントラスト

https://www.cyurica.jp/

 

総合人材サービス会社が、現場のニーズに応えた開発した給与前払いサービスです。サービスは特許を取得しており、提供会社自身は資金移動業登録されています。専用カードを利用し、対応しているATMから前払い給与を引き出す仕組みとなっています。従業員の負担費用はATM手数料のみと、他サービスと比較しても従業員の負担額が少ないことが大きな特長です。

 

給与の前払いは、アルバイトやパートの方に限らない福利厚生として広まりつつあります。その需要を受け、人材サービス会社、銀行やその関連会社、日払いサービス専門会社など、さまざまな業種の企業が前払いサービスの提供へと参入しています。「終業後の給与支払いを短期間で行う」という点はどの前払いサービスも共通していますが、前払いの実現方法や、前払いに必要な業務をどこまでサービスでカバーするかは様々です。

前払いサービスの導入を検討する際には、法的な問題に留意しつつ複数社から検討し、自社にあったものを選択いただければと思います。

筆者プロフィール

Ren.
Ren.ビーブレイクシステムズ
ERP「MA-EYES」RPA「WinActor」をはじめとするITツール営業担当。好きなお茶はジャスミン、お酒はハイボール、ロシア産飲料はウォッカではなくクワス。

企業間における契約書の締結・管理・社内稟議を電子化

『BtoBプラットフォーム 契約書』は、企業間における契約書の締結・管理・ワークフロー(社内承認)を電子化し、Web上で一元管理できる仕組みです。