デジタルトランスフォーメーションを考える(33)~プログラマーがいなくてもアプリの開発ができる! 最近話題の「ノーコード」とは?~

社会の急激な変化を背景に注目を集める「ノーコード」開発

アメリカで起業数が爆発的に増えているそうです。2021年6月30日付のロイター通信では

米国勢調査局が新規会社登録を基に算出した米起業件数は、今年1─5月の累計で前年同期比72.2%増の236万件。同期間の過去10年間平均の約123万件を100万件以上、上回るペースとなっている。

と報道されています。

背景には銀行の融資条件の緩和やアメリカ政府の起業支援策などもあるようですが、急激に変化する社会を見据え、新たなビジネスが多数生まれているようです。

 

ビジネスからデジタルを切り離すことができなくなった今、新たなサービスの立ち上げには「技術力」が不可欠であり、プログラミングなしでアイデアをかたちにすることはできません。もしアイデアを思いついた人にコーディングのスキルがなければ、協力してくれるプログラマーを見つけるか、自らコーディングを学ばなければなりません。どんなに斬新なアイデアを持っていても、アイデアがあるだけではなかなか先に進まないのが現状です。

 

そんななか、エンジニアでなくてもソフトウェアを開発することができる「ノーコード」と呼ばれる技術への関心が高まっています。ノーコードとは、ソースコードを書かずにソフトウェアを開発することです。実は、ノーコードという概念自体は昔から存在しています。1990年代に生まれたDreamweaverや2000年代に普及したWordpressなど、コーディングなしでWebサイトを構築できるツールもノーコードツールとして考えられています。ただし、これらのサービスはカスタマイズの柔軟性がそれほど高くはありませんでした。

 

一方ここ数年、国内外問わずさまざまな企業から提供されているノーコードツールでは、ユニークな機能を持つサービスやモバイルアプリを開発・運用することが可能です。コロナ禍で生まれたさまざまな社会課題を早急に解決し、多様化するユーザーのニーズを満すための強力なツールとして、今、改めてこのノーコードの可能性に注目が集まっています。

 

コーディングせずにアプリを開発するスタートアップも登場

コロナ禍で話題となったのが、加古川市の事例です。2020年6月には加古川市の職員が「特別定額給付金Web申請システム」をノーコードツールkintone を使って1週間程度で開発したことが話題となりました。自治体が新たなシステムを開発しようとすると、基本的には外注となるため予算の確保から入札、開発まで非常に長い時間がかかってしまいます。ノーコードを活用し、エンジニアではない職員がシステムを内製できれば、コストも開発期間も大幅に削減することができます。この新たな選択肢を普及させるべく、ノーコードツールを用いたワークショップや勉強会に取り組む自治体が増えています。

 

学生起業で生まれた株式会社ABABAは、就職活動の最終面接で不合格となった学生と別の企業をマッチングするという成功報酬型サービスを提供しています。同社は、このサービスをノーコードツール「Bubble」を使って開発しているそうです。「Bubble」はドラッグ & ドロップでの直感的な画面作成やあらかじめ用意された機能を組み合わせるだけでアプリを開発することができるツールを提供しています。2012年にニューヨークで生まれた同ツールはノーコードの代名詞とも言われており、2019年には約7億円の資金調達を実施。マッキンゼーなどの大規模組織でも導入されています。

 

ノーコードが盛り上がる背景とは

ここ数年でノーコードが大きく注目されている背景には、IT人材の不足という大きな課題があります。「2025年の崖」という言葉で表されているように、日本では2015 年ではおよそ 17 万人だった IT 人材不足が、2025 年には 43 万人まで拡大することが見込まれています。開発リソースが不足していると、せっかくのアイデアを実現するまでの期間も長くなり、陳腐化するか他社に先を越されるかという残念な結果に陥ってしまいます。

 

ノーコードツールを活用すれば、コーディングができない人でも開発からリリースまで数日~数週間という短期間で実現することが可能です。無料で提供されているツールも多く、気軽に試すことができるのも大きな利点です。プログラマーに頼らずに、複雑かつニッチ化するニーズを満たすサービスを素早く立ち上げることができるノーコードツールは、今後さらに盛り上がっていくことが予想されます。

 

もうひとつの背景に、クラウドサービスの普及とAPIエコシステムの発展があります。アメリカでは、すでに存在しているクラウドアプリケーション同士を連携する手段としてノーコードツールを活用することが非常に増えています。

 

Zapierは、2012年にアメリカで誕生したタスク自動化ツールです。Zapierでは、複雑なプログラミングをすることなく異なるアプリやWebサービスを連携して、自分好みの業務自動化ツールを組むことが可能。GoogleスプレッドシートやGmail、各種SNSなど組み合わせられるアプリは1,500種類以上に及びます。あるシステムで入力された数値をこちらのシステムにも自動で反映させたい、あるシステムで特定のイベントが起きたら、自動でこのアクションを起こしたいなど、プロセスオートメーションの分野でもノーコードツールは活躍しています。同分野ではWorkatoやMulesoft、日本発のサービスAnyflowなどさまざまなサービスが急成長中です。

 

ノーコードの懸念点

ノーコードツールにはもちろん懸念すべき点もあります。例えば、ノーコードツールでは決められた機能のみが提供されており、機能の拡張が制限されている場合があります。すべてのニーズに自由に対応できるとは限りません。また技術者ではないビジネスユーザーがソフトウェアを構築することが多いため、セキュリティ上の脅威にさらされやすいということも認識しておかなくてはなりません。

 

さらに、これはどのクラウドアプリケーションにもいえることですが、利用しているプラットフォームがアルゴリズムやAPIを変更したり、サービスを停止したりした場合には、ビジネスが破綻するリスクがあります。ツールの選定にあたっては、サービスの安定性や信頼性についてしっかりと精査する必要がありそうです。

 

ノーコード=ノープログラミングではない

もうひとつ、ノーコードツールを活用するにあたって重要なことは、いくら「ノーコード」といってもソフトウェア開発にあたってはプログラミング的思考を持っていなければならない、ということです。ノーコードツールを使えば、特定のプログラミング言語を知っている必要はありません。しかし、実現したいことをデジタルの世界に落とし込む力や、データ構造がどうあるべきかを考える力は必要です。ソフトウェアを開発する手段として、コーディングをするのか、ビジュアルで操作できるツールを使うのかという選択肢が増えただけであり、人々のニーズをデジタルで実現するための考え方は、これまでと大きく変わるものではありません。

 

とはいえ、それが天気予報に応じて照明の色を変えるといったような家族のための小さなアプリケーションであろうと、副業や社内の業務効率化、起業のためであろうと、アプリケーションの開発が多くの人にとって身近になるということは、非常に重要な流れだといえるでしょう。今後はプログラマーの役割も大きく変わっていくかもしれません。既存の価値観が大きく揺らぎ、さまざまな社会課題が噴出する今、ノーコードの波をぜひ味方につけたいものですね。

 

 

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