デジタルトランスフォーメーションを考える(31)~今、世界中が注目するデジタル資産「NFT」とは~

デジタルデータに唯一無二の価値を与える「NFT」

2021年3月、Beeple(ビープル)というアーティストのデジタルアート作品がオークションで約75億円の値で落札されたことが報道され話題となりました。このニュースが注目されたのは、この作品が「NFT」とよばれるデジタル資産のオークションとしては史上最高額をつけたからです。その後、NFT市場ではTwitter創業者ジャック・ドーシーの初めてのツイートが3億円で売却された、ニューヨーク・タイムズのコラムが6000万円で落札されたなどのニュースが続々と報じられ、今年に入ってから突如NFTという言葉を目にすることが増えました。

 

NFTとは”Non Fungible Token”の略で、データを「唯一無二の本物」と証明できる技術で、ブロックチエーンの技術を活用しています。一般的にデジタルデータはコピーや改変がしやすく、オリジナルデータに唯一性や希少性をもたせることが困難でした。しかしデジタルデータに対してNFTの処理を行うと、偽造不可能な唯一無二のデータへと変換することが可能となります。

 

先日、テニスの大坂なおみ選手は、姉のまりさんと共にデジタルアート作品を”Basic.Space”というNFTのマーケットプレイスで販売しました。6作品中5作品がオークションにかけられ、最も高い作品には15万ドル(約1650万円)の値がつけられました(残りの1作品はくじ引きで当選した人が500円で購入できるというしくみでした)。

 

まりさんの作品はとても素敵ですが、家に飾ることができるわけでもないデジタルアートになぜこれだけの金額がついたのでしょうか。それは、まりさん自身が「この作品は正真正銘私が描いた、世界にただ一つだけの作品だ」ということをNFTによって証明し、この作品を所有することが、それだけの金額を払う価値のあることだと評価されたからです。今回の落札者はデジタルアート作品そのものと、その作品が本物であるという鑑定書であり購入者の所有物であるという証明書となるNFT、そしておまけで大坂なおみ選手のサイン入りラケットを手にすることとなりました。

 

先述した通り、NFTは分散型帳簿システムであるブロックチェーン技術を活用しています。ブロックチェーン上のデジタルデータは暗号化されており、誰から誰へ受け渡されたかという取引履歴も記録されています。すべての情報はブロックチェーンに参加するすべての人が持つ同じ帳簿に記載され、いつでも誰でもその情報を参照することができるため、改ざんすることが非常に困難です。このブロックチェーンの技術によって、NFTの所有者は自分が唯一無二のデジタル資産を所有していることを証明することができるのです。

 

有名な芸術作品には贋作がつきものです。どんなにリアルなレプリカが出回ってもルーブル美術館の『モナ・リザ』に高い価値があるのは、その作品が唯一無二の本物だと証明されているからです。NFTの登場により、それがデジタルの世界でも実現できるようになりました。

 

さまざまな業界に新たな収入源の可能性をもたらす

今、NFTはアート業界だけではなく、スポーツ・音楽・エンターテイメントなどさまざまな業界で大きな脚光を浴びています。

 

例えばスポーツ業界では、NBAやMLBがNFTトレーディングカードを販売し、人気が加熱しています。 “NBA Top Shot“のトレーディングカードには、シュートの瞬間など10秒ほどの動画が収められており、マーケットプレイスでは一部の限定カードが大変な高値で取引されています。

 

音楽業界では、エミネムがオリジナルビートを使用したアニメーション作品をNFTとして売り出し、約1000万円で落札されました。収益の一部は支援団体に寄付されるそうです。ファッション業界では、先日グッチがブランド初となるNFTの映像作品をクリスティーズに出品し、 作品の収益をユニセフUSAに寄付することを発表しました(ちなみに先述の大坂選手も作品販売で得た収益をより多くの女の子がスポーツに参加できるよう支援するプログラム『プレー・アカデミー』に寄付するとしています)。

 

音楽や映像作品は、デジタル化とサブスクリプションサービスの普及によって、特別な課金をすることが難しい状態にありました。多くの人にとって手が届きやすくなる一方で、コンテンツそのものの価格が下がるというデメリットもあったわけです。しかしNFTが普及すれば、コンテンツそのものに特別な価値をもたせることができるようになるため、新たな収入源として大きな期待が寄せられています。

 

そしてNFTがもっとも盛り上がっている業界のひとつがゲーム業界です。ブロックチェーン技術を活用したブロックチェーンゲームでは、ゲーム内で入手したアイテムやキャラクターを別のブロックチェーンゲームでも活用することができます。またゲームをプレイすることで得られる報酬や、NFTの売買で得た利益で実際の収入を得ることも可能です。アニメやゲームなどのコンテンツが豊富な日本では、新たな市場を開拓する大きなきっかけとなりそうです。

 

NFTをめぐる懸念点

一方でNFTには気をつけなくてはならない点もあります。NFTは、そのデジタルデータが本物であることを証明する鑑定書として使うことはできますが、デジタルデータそのもののコピーを防げるわけではありません。あくまでも「本物を『所有』していることに価値がある」という考え方です。また所有権は安全に守られていても、デジタルデータそのものが使えなくなる可能性もあります。例えばあるゲームのアイテムをNFTとして購入しても、そのゲームがサービスを停止してしまったら、そのアイテムは使えなくなってしまいます。

 

仮想通貨・暗号資産に触れたことのない人にとっては敷居が高いこと、取引手数料が高騰していることなども大きな課題となっており、NFTに関する法規制もまだ完全には整備されていません。

 

ブロックチェーン技術は、莫大なエネルギーを消費するため「NFTは地球に優しくない」という批判もあります。SDGsを掲げる一方で、ブロックチェーンの「マイニング」作業で膨大な電力を消費し、二酸化炭素を大量に排出するというのは今後企業にとって無視することのできない課題になっていくでしょう。電力消費をおさえる新たなテクノロジーも必要とされていきそうです。

 

NFTが新たなエコシステムの担い手に

NFTはコレクション性のあるものや希少性のあるものと非常に相性がよく、デジタルデータの流通に新たな可能性をもたらしています。クリエイターや企業にとっては、デジタルコンテンツに付加価値をつけて販売しやすくなり、世界共通のマーケットプレイスに出すことで世界に向けて発信することも可能となりました。

 

これまではどんなに価値の高い作品であっても、二次流通の段階でクリエイター本人に利益が還元されることはありませんでした。しかしNFTを活用すれば、二次流通の取引が進むごとにクリエイター本人にも一定の割合の利益が還元されるという仕組みを構築することも可能です。作ることも可能です。クリエイター本人がしっかりと収益を得られる仕組みが実現できるようになっています。

 

コロナ禍で音楽業界やエンターテイメント業界など、さまざまな業界が大きな打撃を受けました。今、一部ではバブルのような熱狂を見せているNFT市場ではありますが、NFTが新しいビジネスチャンスを切り開き、新たな資金源となることは間違いないでしょう。

 

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