【インタビュー】多様な働き方を実現するリモートワーク先駆者~クラウド型業務システムとチャットツールで生産性の向上~
ChatWork株式会社は、働き方改革がうたわれる前から育児をはじめ個々のニーズに対応した多様な働き方を実現する先駆的企業で、2016年12月には平成28年度「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に選定されるなど、働き方改革関連法案の成立により注目される「リモートワーク」を既に実施しています。本日は、ChatWork株式会社 コーポレート本部 人事総務部 広報ディレクター 山田葉月様にお話を伺いました。
目次
従業員視点での柔軟な働き方はどう実現したのか?
—貴社では従業員の働き方に関してどのような取り組みを行なってきたのかお聞かせください。
当社は、従業員のことを第一に考える「社員第一主義」を掲げています。
サービス事業者だと、顧客第一主義を掲げるのが世間一般の認識ですが、当社は社員を大切にすることにより、より良いプロダクトを提供でき、ひいてはユーザ様のためになるという考え方を実践しています。
社員の人がいかにして働きやすい環境にするか。会社の居心地がよくなる制度とはどのようなものかを考え、実施することで離職率低下に繋がっています。
体育会系マネジメントから従業員第一主義へ
—取り組みを始めた背景について教えていただけますか。
会社が出来たばかりの頃は、創業者が体育会出身で、今でいうとブラック企業のようにバリバリ働く体制でした。このような環境下で従業員が定着するはずもなく、社員が次々と辞めていきました。
創業者はこういった現状を打破するために1年間で千人以上の先輩経営者に会って相談しました。その結果、会社がうまくまわっているところは何が違うのかを振り返ってみたところ、顧客を大事にすることはもちろんのことですが、それ以前に「社員を大事にすること」、「従業員満足度を向上させること」が重要であることを見出しました。
以降、社員を大切にすることから始めたら、うまく経営がまわるのではないかということで現状の取り組みになっています。
働き方改革が叫ばれる前から新しい働き方を追求
—これまでの具体的な取り組みについて教えて頂けますか。
取り組みの背景でお話したように、当社では、世間で働き方改革が叫ばれるようになった前から、新しい働き方、社員が働きやすい働き方を取り入れています。
当社にはいろいろな社員のための福利厚生やユニークな制度があります。
例えば、「リモートワークの実施」「自らキャリアを決めることができる仕組み」「最新デバイス購入支援制度」などがあります。
ボトムアップからできる制度もあればトップダウンでできる制度もありますが、とにかく社員の働きやすさを重視して、社員に寄り添った形での制度作りを行っています。
これらは、そもそも社員に使ってもらうためのものなので、社員が「どういったことに困っているか」「今の環境をどう変えたいか」など具体的に社員自身が求めていることや制度に関する座談会などを実施し、対面でブレストしたり、アイディアを出し合ったりした上で今の制度が作られています。
また、作った制度について、定期的な見直しも行っています。使われなくなった制度は廃止し、使われていないものであればどのように変更すれば使われるようになるか考えます。
時代は変わっていきますので、一度作ったらおしまいではなく、制度を続けながら進化させていくことが重要だと考えています。
リモートワーク導入における3つの軸
—冒頭で触れた「リモートワーク」についてお伺いしますが、
リモートワークの導入は、どのように取り組まれたのか教えてください。
当社は、会社設立当初から、大阪と東京の二拠点に分かれていたので、元々リモートワークありきで会社を作った前提があります。会社規模が小規模の頃からリモートワークを進めてきており、リモートワークを希望する社員は上長や管掌役員が本人の適性を見極めた上で認めています。
—導入時にどのような事に注意すればいいのでしょうか。
導入にあたり会社側は3つの軸について考える必要があると考えています。
1つ目は「リモートワークできる環境の整備」についてです。
社員がいつでもどの場所にいても会社の情報にアクセスできる情報システムを使っている。また、チャットのようにメール以外でもすぐにコミュニケーションを取れるシステムが導入されていること。
2つ目は「リモートワークできる労務管理の整備」についてです。
会社側は、社員がリモートワーク勤務しても差し支えないように、勤務形態の整備を行っていること。
3つ目は「リモートワークできる人の適性」についてです。
自宅等でリモートワーク勤務をする場合、リモートワークができるタイプかどうか、社員個人の適性があると考えています。つまりオフィスに出社したほうが気持ちの切り替えが出来て集中できるタイプの人もいれば、個人のパーソナルスペースのところで業務をしたほうが集中できる人もいるなど様々であり、個人の適正を見極めること。
移動にかかる無駄な時間を抑えコストを削減する
—リモートワークの導入は、生産性向上に貢献すると思いますか。
リモートワークを取り入れることによりオフィスへの移動にかかるムダなコストなどは抑えられると思います。
当社では、社員に「効率重視」をお願いしています。
担当者がいつでもどこでも会社の情報にアクセスできるようクラウド上で情報を管理しているため、例えば営業担当者が社内の業務システムにアクセスするためだけにオフィスにわざわざ出先から会社に戻る必要がありません。
リモートワークの環境を選べるため、移動にかかる交通費と時間を抑えることができ、無駄なコストと時間を圧縮することに役立っています。
リモートワーク成功の秘訣は「スモールスタート」
—これからリモートワークを始めたいと考える企業にアドバイスはありますか。
私たちがお勧めしているのは、まずはスモールスタートからということです。
一気に開始しますといっても、現場では「ここはどうするんだ」とザワザワするだけでなく、組織に何かしらのハレーションが起きる可能性があります。
例えば「会社の中の一部署で開始する」とか「産休復帰後、若しくは産休入るお母さん2、3人を対象にまずは週3日から始める」など、小規模の人を対象に実際に体験してみます。スモールスタートをした上で、フィードバックを得ながらカスタマイズしていくことがポイントになってくると思います。
働き方は、会社の規模や職種によって様々です。そのため、新しい制度の導入に時間はかかります。個々の会社にあったリモートワークの形態というのが必ずあるはずなので、社員へのヒアリングをしながら、制度を育てていくことが重要なのだと思います。
クラウドサービスとチャットツールで生産性向上
—リモートワークができる環境整備のお話の中で、情報システムの必要性についてのお話がありましたが、貴社では、どのような業務ツールを利用しているのか教えてください。
会社全体で、クラウド勤怠管理システムや経費精算システムを利用しています。社内で作業する人も、営業などで外出中の人も、自宅で作業している人も、どこにいてもPCやスマホでアクセスして経費精算や出退勤を記録することができます。
また、「G Suite」を利用し全ての会社の情報を集約化しています。プロジェクトの予算や進捗管理は、チームでスプレッドシートを共有し管理をしています。
その他、この取り組みの中で一番必要な業務ツールが、コミュニケーションツールだと考えています。当社は「チャットワーク」というサービスを開発運営している会社ですが、チャットツールは、連絡手段として一番早いツールであり、時間と場所を選ばずオフィスにいるのと同じように働くことができ確実に生産性の向上に役立つと考えています。
リモートワークが正解なのではなく・・・
—貴社の働き方は今後も変化していくのでしょうか。働き方改革について今後の展望をお聞かせください。
私たちの考え方は、必ずしもリモートワークが正解だという押し付けではなく、社員にとって働く人にとって様々な働き方のオプションが提供できれば良いと考えています。
オフィスで働くことが居心地がよい人もいるし、そうでない人もいる。
社員や働く人に寄り添った形でいろんな働き方ができるといいなと思っていて、その中にリモートワークもひとつの選択手段として含まれていると思います。
具体的な取り組みとしては、当社の社員は平均年齢が30から35歳の層が厚いのですが、今後社員のご両親の介護問題などが増えてきた場合に、どういったサポートが会社として出来るのか、ニーズが上がってきたときに検討する必要があると考えています。
■会社データ
https://go.chatwork.com/ja/(サービスサイト)
社名:ChatWork株式会社
所在地:東京都港区 芝公園 3-4-30 7F
設立:2004年
従業員数:89名(2018年6月末海外駐在所含めて)
資本金:914,138,500 円
代表取締役:山本正喜
業種:IT
事業内容:クラウド型ビジネスチャットツール「チャットワーク」(導入社数18万2千社:2018年6月末日時点)の開発運営
※上記内容はインタビュー時点の情報に基づき作成されています。
※”G Suite”は Google Inc.の登録商標です。
※その他、記載されている社名、製品名またはサービス名は各社の商標または登録商標です。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!