業務管理システム選定時のポイント(4)既存システムの有無によって業務システムの選定と導入はどう変わる?
WORK-PJでは「業務管理システム選定時のポイント」と題して、複数回にわたり特定の視点からシステムの選定について記事を掲載しています。
今回は、業務システム、いわゆるERPのような大きなシステム導入に際し、現状はシステムと言えるものは会計システムくらいで、ほぼほぼExcel等で業務を管理している会社の新規導入なのか、既に存在しているシステムの置き換え(リプレイス)なのかで、どのように選定/検討ポイントが変わってくるのか、というテーマで考えてみます。
目次
新規導入の場合
導入の目的
Excel管理では賄えなくなったからシステムを導入する必要性が顕在化するわけですが、「事業規模の拡大」がそもそもの理由であることが多いので、事業規模の拡大に合わせてシステムを導入する、という事になります。
上場準備もかねての導入の場合はタイムリミットがありますが、そうでない場合は時間だけかかって決定しきれないこともよくあります。
なぜシステムを導入するのか?ということは明確に定義し、ベンダーに伝えたほうがベンダー側も良い提案ができます。
導入の範囲
ERPは範囲が広いシステムなので、現在システム化されていない業務を一気にシステム化すると、大きな混乱が起きる可能性があります。
どうしてもシステム化が難しい部分、一度にシステム導入するにはコストや現場の負荷が耐えられそうにない、というような場合には、現在Excelでなんとか業務を行っているわけなので、まずは必要な部分だけをシステム導入し、次に優先順位が高い業務をシステム化するというように順次導入していくという方法を新規導入の場合は取ることもできます。
検討の仕方
システム導入の際はRFPを作成したほうがベンダーからの提案の精度が高くなりますが、まだまだ人員が多くない企業がRFPを作成するのは容易ではないでしょう。
現状、Excelを用いた業務管理である場合、きっちり定義された業務フローというものが存在しないケースが多いので、「パッケージに業務を合わせる」ということが比較的簡単です。
SaaSなどはお試し利用ができますので、最低限の要件はベンダーに掲示して確認しつつ、実際の使用感を入念に確認してフィットアンドギャップを行う事が重要です。
また、近年は選定のためにITコンサルタントに依頼することも非常に多いです。
参考記事: 業務管理システム選定時のポイント(3)RFI・RFPの必要性について |
コストの考え方
新規導入のお客様に予算感をお尋ねすると、「こういったシステムの相場がわからないので、なんとも言えない」というお答えを頻繁に頂きます。
業務システムは、同じようなものであっても対象企業規模によって数万円から数億円まで価格の幅が広いものです。まずは購入できそうな価格帯のベンダー複数から話を聞き、価格を収集する必要があるでしょう。
導入作業/定着化作業
前職でシステム導入をした経験のある社員がいなければ、「システムとはどのように導入するのか」ということ自体がピンとこないのではないでしょうか。
新規導入に限りませんが、提供するベンダーによりどこまでやってくれるか、どんなオプションがあるかは異なりますので、自分たちのキャパシティと合わせて、どれくらいの負荷がかかるか、自社主体で導入しなくてはいけない場合にその能力はあるのか、ということを判断することはとても重要です。
上場をターゲットにしたベンチャー企業では「システムを入れるために入社したばかり」というケースも多いです。このように人材を確保し、内部リソースで賄うという事もできます。
システムの設定が終わり、実際に全社で使い始める前の作業として、データ移行と利用者への教育が必要です。
新規導入の場合、移行できるデータがない場合が多いので、最低限のマスタ等のみ移行すれば良いでしょう。
Excelで管理している場合、登録・集計・計算等を特定の人の力技で回している場合が多々ありますが、システムが導入されると、その特定の人にかかっていた負荷を少しずつ他のメンバーに振り分けるような形になり、システムの利用者はExcelに触っていた人より増えるはずです。
利用者への教育についても、ベンダーのサービス範囲はそれぞれ異なるので、どのように進めるのか確認・検討しておく必要があります。
リプレイスの場合
導入の目的
リプレイスの場合は、「何らかの理由で現在のシステムを使い続けることに問題があるから」という理由が多いです。特に問題がないけど、減価償却が終わったから買い換えようという会社は少ないです。
そういう意味で、スケジュールが重要になってきます。直前になって無茶なスケジュールを掲示し、多くのベンダーが提案を辞退して選択肢がないということもありえます。スケジュールには余裕を持ちましょう。
導入の範囲
リプレイスの場合は現在使っているシステムの範囲がベースになります。
そのシステムの性質にもよりますが、「一部分だけ旧システムを残して一部だけ入れ替える」ことや、「この部分から始めて順次入れ替えていこう」ということは難易度が高いです。また、「システムでできていた部分をExcelにしよう」という会社は殆どなく、システム化されたものはまた別のシステムで行うことになります。
導入範囲において、色々なパターンが考えられ、それによって最適なベンダー(あるいはベンダーの組み合わせ)も変わってきます。
検討の仕方
既にシステムがあるので、現行の業務は現行のシステムがどうしてもベースになります。「現在のやり方にとらわれず選定したい」というのはよくお客様から聞く言葉ですが、「今できることができなくなる」ことは想像よりも大きな影響があります。そういった意味で、RFPを作成し、必要な要件をもれなく伝えることは、現行システムのない新規導入の場合より重要です。
参考記事: 業務管理システム選定時のポイント(3)RFI・RFPの必要性について |
コストの考え方
現行システムの費用がベースとなる企業が多いです。また、現行システムのランニング費用が高すぎるため、コスト削減を主目的としたリプレイスというケースもよくあります。
導入作業/定着化作業
一概には言えませんが、既存システムの構成や機能に縛られる関係上、新規導入に比べリプレイスの場合の方がカスタマイズは増えるため、導入作業において要件定義工程は重要です。手順の確認やリソースの確保等を考えておく必要があります。
また、現行システムからのデータ移行が大掛かりになるため、現行システムからのデータ抽出方法やデータ整理のリソースなども踏まえる必要があります。
経理担当者が関わらなくてはいけない場合に、そういった工数が必要な時期と決算時期が重ならないようにするといった事も必要になってきます。
教育に関しては、システム自体を使う人数は変わりませんが、リプレイス前後のシステムでUIや運用方法が変わってきます。新規導入に比べると、現行システムとの差異を踏まえないといけないので、ベンダーのサービスレベルと言うよりは、自社で運用マニュアルの作成や教育計画を考える必要があるでしょう。
まとめ
新規導入の場合
新規導入の場合は自由度が高いが、何からしていけばいいかわからない、という事が言えると思います。分割導入や一部導入が可能な製品か、導入支援や教育が充実しているかという観点は、選定する上でポイントになります。
リプレイスの場合
リプレイスの場合は、現行システムが良くも悪くも前提であり制限でもあります。
一般的に新規導入よりも規模も大きくなり複雑で難易度も高くなりますので、ベンダーの選定ポイントとしては、製品/サービスの機能や価格だけではなく、提案力やじっくり付き合えそうかという点も重要になってくるのではないでしょうか。また、現行システムを永久に使えるわけではないので、無理なく検討・導入できるスケジュールを余裕を持って計画するとで成功の確率が上がります。
ぜひ、ご相談ください
ビーブレイクシステムズのERP、MA-EYES(エムエーアイズ)は、部分導入やカスタマイズも可能なERPシステムで、上場準備中の初めてERPを導入する企業や、長年利用したERPをリプレイスする企業等、様々な企業にご提案が可能なシステムです。
業務システムの選定をお考えの会社ご担当者様がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。
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筆者プロフィール
- 営業職。カレーが好きです。得意技は福岡日帰り出張。
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