企業に関連する重要な法改正をチェック【2022年4月以降】
今回は2022年4月以降に施行された企業に関係する法改正のうち、主な法改正をピックアップしました。すでに施行している内容がほとんどですが、対応に漏れがないかぜひチェックしてみてください。
目次
法人税等に関する改正(令和4年度税制改正より)
財務省が発表しているパンフレット「令和4年度税制改正」よりいくつかピックアップします。
令和4年度税制改正はそれほど大きな改正は行われませんでしたが、今回の税制改正で一番特徴的なものは「賃上げ促進税制の強化」ではないでしょうか?
「賃上げ促進税制の強化」では、資本金1億円超の大企業については、継続雇用者の給与を前年度比で3%以上増加させた場合に給与増加額の15%を税額控除(同4%以上かつ教育訓練費20%以上増加の場合は最大30%の税額控除)、中小企業については、雇用者全体の給与を前年度比2.5%以上増加させた場合に給与増加額の30%を税額控除(かつ、教育訓練費10%以上増加で最大40%の税額控除など)できる制度が盛り込まれました。今回の改正は、他の国と比べて日本の賃金がこの30年余りほとんど伸びていないことと、企業の年間教育訓練費も減少傾向であることが背景にあります。政府としてもこの点は大きな課題と考えていて、企業の賃上げを支援するための今回の「賃上げ促進税制の強化」だけでなく、様々な環境整備を取り組む方針を打ち出しています。
その他の令和4年度税制改正のトピックとしては、令和2年度に創設されたオープンイノベーション促進税制の拡充や、同じく令和2年度に創設された5G導入促進税制の見直しなどがあります。
なお財務省のサイトでは今回の税制改正に関する動画も公表しています(動画「令和4年度税制改正」 (令和4年6月制作))。今回の改正のポイントや国際比較のデータなどまとまっていますので、とても分かりやすいと思います。また、その動画の中には2023年10月から開始のインボイス制度に関して、詳しく解説されています。インボイス制度についてあまりよくわからない方はこちらの動画をぜひチェックしてみてください(動画「令和4年度税制改正」インボイス制度)。
<参考>
財務省:パンフレット「令和4年度税制改正」(令和4年3月発行)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei22/index.html
経済産業省:令和4年度税制改正について
https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2022/zeisei_k/index.html
個人情報保護法の改正(2022年4月全面施行)
2020年に改正された個人情報保護法が2022年4月から全面的に施行されています。改正内容は、①個人の権利の拡大、②事業者の責務の強化、③法人に対するペナルティの強化、④外国事業者の規制の強化、⑤データ利活用の促進、⑥認定個人情報保護団体制度の見直し、の6つです。
そのなかから「事業者の責務の強化」について具体的な改正内容を見ていきます。
個人情報を漏洩した等が発生した際に、個人の権利利益を害するおそれが大きい場合は、委員会への報告及び本人への通知が義務化されました。これまでは個別企業に対応を委ねていたため、積極的に対応していない事業者も一部いましたが、今回の改正で原則義務化ということになりました。ほかには、違法または不当な行為を助長する等の不適正な方法による個人情報を利用することを禁止することが明文化されました。ここでいう「違法または不当な行為を助長する等の不適正な方法」とは、違法行為を営む第三者に個人情報を提供することや、差別が誘発される恐れがあることが予見される公開されている個人情報を集約・データベース化して、インターネット上で公開するなどが個人情報保護委員会から例示されています。
ほかにもデータ利活用の促進やペナルティの強化など個別の改正内容や取り組むべき重点ポイントなど詳しい説明が個人情報保護委員会のサイトに掲載されていますので、以下の参考ページを確認してみてください。
<参考>
個人情報保護委員会:個人情報保護法 令和2年改正及び令和3年改正について
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/kojin_iden/life_science/pdf/001_03_02.pdf
個人情報保護委員会:改正個人情報保護法対応チェックポイント
https://www.ppc.go.jp/news/kaiseihogohou_checkpoint/
育児・介護休業法の改正(2022年4月より段階的に施行)
2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月1日から段階的に施行が始まっています。男性女性問わず仕事と育児が両立できるように産後パパ育休制度の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化などが盛り込まれています。まず2022年4月1日より育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化、2022年10月1日には産後パパ育休(出生時育児休業)の創設と育児休業の分割取得の改正、2023年4月1日には育児休業取得状況の公表の義務化(従業員数1,000人超の企業)が施行されます。
今回の改正は、就業規則の変更などの対応が必要な会社も多いのではないでしょうか。すでに取り組まれているとは思いますが、再度自社の就業規則を確認することをお勧めします。
<参考>
厚生労働省:育児・介護休業法について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
厚生労働省:令和3年改正法の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000788616.pdf
厚生労働省:リーフレット「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
パワハラ防止法(2022年4月から中小企業も対象に)
2022年4月1日より、中小企業に対してもパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が適用されるようになりました。
職場におけるパワーハラスメントの定義としては、職場において「優越的な関係を背景とした言動」、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」、「労働者の就業環境が害されるもの」の3つの要素をすべて満たす行為を指しています。業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導はパワハラ行為には該当しません。厚生労働省のページにはパワーハラスメントに該当する可能性のある言動の例示や、パワーハラスメントを防止するために講ずべき措置、望ましい取り組みなどが記載されているので、ぜひ一度ご覧ください。
<参考>
厚生労働省:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
まとめ
企業に関する法改正を中心にいくつかピックアップしてご紹介しました。
他にもプロバイダ責任制限法の改正(SNSや掲示板などで誹謗中傷した者の情報開始の手続きが簡易・迅速に、2022年10月1日より)や民法の改正(成年年齢を18歳に引き下げ、2022年4月1日より)など重要な法律や制度の改正が行われています。
自分自身の仕事に影響する法制度改正については、常にチェックし、漏れがないように適宜対応する必要がありますね。
<参考>
総務省:インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html
法務省:民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html
※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2022年11月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。
2020年4月以降の企業に関わる重要な法改正をチェック |
筆者プロフィール
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