今、注目の文書管理システム、電子帳簿保存法との関係は?:ITツール・サービス徹底比較
以前から多くの企業で利用されてきた「文書管理システム」が、最近再注目されています。
昨今のコロナ禍に伴うテレワークの急速な普及により、紙文書の電子化・データ化の必要性が増し、電子化された文書を整理して管理することがより重要になっていることや、2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行されることが決まり、どの企業にとっても電子化した文書をきちんと管理する必要性に迫られていることなどが、「文書管理システム」が脚光を浴びている主な理由ではないかと考えています。
今回は、改めて文書管理システムの概要を解説するとともに、現在提供されている文書管理システムをいくつかピックアップしてご紹介します。
目次
文書管理システムとは
業務に使う文書は多岐にわたります。
社内には膨大な文書が蓄積されており、その中から自分が必要な文書を探すのはきちんと整理されていないと思ったより時間がかかります。また、修正を重ねた文書の場合はどれが最新か確認する作業も大変です。また、本当はすでに廃棄してもいい文書が廃棄されることなくそのまま保管されていることもあります。
このような状況を解決するために「文書管理システム」があります。
文書管理システムとは、業務に使う様々な文書を整理したうえで保管し、必要なときにいつでも文書を確認できるシステムのことを指します。提供形態は、自社でサーバなどを運用し機能を利用する「オンプレミス」のシステムと、サービスとして提供されている機能を利用する「クラウド」サービスのシステムがあります。
文書管理システムの主な機能
保存・管理
文書管理システムの一番重要な機能は、文書を保存し、管理することです。どのように文書を保存・管理するかは文書管理システムによって異なります。文書の種類によって自動で振り分けをして管理したり、あらかじめ設定した保存期間を過ぎると自動で文書を削除したりするなど効率的な文書管理を実現するための機能が備わった製品も多いです。また、タイムスタンプの付与、変更履歴の保存、コメント追記などが可能な製品もあります。他のシステムと連携して文書を自動保存するという機能が搭載されている文書管理システムも少なくありません。
検索
検索は文書管理システムで重要な機能です。いくらきちんと文書が保存されていても、必要なときに必要な人(権限がある人)が文書にアクセスできないと文書管理システムとしては意味をなしません。そのため、検索機能は充実している文書管理システムは多いです。例えば、企業名や金額などの項目での検索や、キーワードによる検索、単一や複数日付での検索など様々な検索機能が製品によって用意されています。
確認・出力
保存した文書をいろいろな形で確認、出力する機能があります。例えば、スキャン画像をそのままイメージとしてPCやタブレットで確認、PDFで出力、自動で印刷するなどがあります。
電子帳簿保存制度と文書管理システム
2022年1月施行予定の改正電子帳簿保存法により、電子帳簿保存制度について抜本的な見直しがなされ、紙文書の電子化が一気に進むことが予想されています。
そこで脚光を浴びることになったのが、前述したとおり「文書管理システム」です。そもそも文書管理システムは文書の電子化や保存・管理に強いという特徴があります。さらに文書管理システムのなかにはJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)から電子帳簿保存制度の要件を満たしているとの認証を受けている製品もあります(認証にはいくつか種類があります。詳しくはJIIMAのサイトをご覧ください)。もちろん市販の文書管理システムを使わなくても電子帳簿保存制度に対応できますが、一から適用要件を整理して、業務を対応させる必要がありますし、場合によっては文書管理がより煩雑になる可能性があります。
文書管理の効率化、電子帳簿保存法への対応などを考えると、自社に合った文書管理システムを導入することも選択肢の一つになるのではないでしょうか。
電子帳簿保存法に対応した文書管理システムの紹介
文書管理システムはいろいろありますが、今回はJIIMAより認証を受けている電子帳簿保存法対応済みの文書管理システムをいくつかピックアップしてご紹介します。
ClimberCloud (株式会社NTTデータビジネスブレインズ)
NTTデータビジネスブレインズが以前より提供していた文書管理システム「PandoraClimber」のクラウド(SaaS)サービスとして提供しているのが「ClimberCloud」です。
特長:
- 電子帳簿保存法対応
- クラウド上で一元管理
- 利用量に合わせた従量課金
- シームレスなデータ連携
機能:
請求書等の書類をクラウド上で電子取引する「電子取引(※開発中)」、帳簿・書類・スキャン書類等のデータを登録、保存年限が過ぎると自動削除可能な「電子保管(オンライン登録、バッチ登録)/ 自動削除」、様々な条件や複数期間を指定可能な「データ検索」、帳簿と書類を伝票番号で紐づけし、ワンクリックで該当書類を表示する「コンテンツリンク」、取引で使用する書類のテンプレートを作成できる「文書テンプレート」、関連システムと連携可能な「WebAPI」、スキャン書類の確認等の業務の承認ができる「ワークフロー」、書類にコメントや捺印などが可能な「アノテーション」などの機能が備わっています。
価格:
初期費用 無料
月額基本料金(税別)900円~
登録件数に応じた従業課金
その他:
他のアプリケーションと自動連携するためのWebAPIはオプション機能になりますが、月額基本料金は無料です。
高精度のAI-OCRサービス「DX Suite」を小規模から手軽に始められる「Climber AI-OCR Lite」というソリューション(月額3万円~)が用意されているので、帳票をAIで手軽にデジタル化することに興味がある方はこちらも併せて利用することができます。
製品サイト: https://pandora-climber.jp/
SPA(ウイングアーク1st株式会社)
文書を電子化・データ化、自動仕分け・保管、データとして活用できる文書活用ソリューションです。
特長:
- 文書のデータ入力効率化
- 電子帳簿保存法への対応によるペーパーレス実現
- 文書のライフサイクルマネジメント
機能:
4つのAI OCRエンジン、データコンペア機能、2通りのフォーマット定義、自動識別・補正機能による「AI OCRによるデータ化」、文書の保管から記録管理に伴う煩雑な作業を自動化し、管理コスト削減、内部統制の質を高める「文書管理」、SPAで読み取ったデータをRPAやETLツールと連携して業務システムへ自動で入力したり、WebAPIや各種アダプターを用いて外部システムと連携する「システム連携」機能などがあります。
価格:
(オンプレミスの場合)
SPA Standard 標準価格 3,795,000円(税別)~
(クラウドの場合)
SPA Cloud 初期費用 300,000円(税別)、SPA Cloud 月額費用 50,000円 / 10ユーザー(税別)~
その他:
SPAはAI OCRを搭載するともに認識率を高める機能を提供しており、高い認識率のデータ化を実現しているのが特徴的です。
サポートは無料の「ベーシックサポート(SPA/SPA Cloud)」と有料(30万円)の「オンボーディングプログラム(SPA Cloudのみ)」が用意されています。
製品サイト: https://www.wingarc.com/product/spa/index.html
Data Delivery(JFEシステムズ株式会社)
大量データ保存と高速検索に機能特化した、新しい情報基盤ソリューションです。電子帳簿保存法の全区分(帳簿書類・スキャナ・電子取引)に対応しています。
特長:
- 長期保存
- 高速検索
- 改ざんできない構造
- シンプルな構成
機能:
クライアント側は、検索・くしざし検索・データダウンロード・プレビュー・添付ダウンロード・設定保存・データリンク・他システム連携・自動ログインの機能が備わっています。サーバの基本機能は、アカウント管理・ログ情報の管理・ドメイン管理・保存管理です。
価格:
要問合せ
その他:
Data Deliveryはオンプレミスのシステムです。オプションとして、認定タイムスタンプ付与、画像要件チェック、タイムスタンプ一括検証の3つの機能をパッケージングされている「e-文書対応ツール」が用意されています。
製品サイト:https://www.jfe-systems.com/products/datadelivery/datadelivery.html
活文 Report Manager(株式会社日立ソリューションズ)
多種多様な帳票の保存・管理を自動化し、データ活用を容易にする電子帳票システムです。
特長:
- 帳票を自動分類して保存、多彩な検索でデータ活用を促進
- 長年の実績でニーズに応えるしくみを構築
- 電子帳簿保存法の法的要件認証を取得
機能:
自動転送や自動分類、自動廃棄などの帳票管理や、設定したグループごとにユーザを管理、参照・削除権限やアカウントロック、強制ログアウトなど情報流出防止、アクセスログなどの管理機能が備わっています。また、専用クライアントやウェブブラウザ、タブレットなど利用シーンや用途に合わせた参照、簡易検索・レイアウト検索・フィールド検索・串刺し検索など様々な検索、電子化した帳票への書き込み機能もあります。CSVやPDF出力、メディア出力、印刷など多様な出力形態に対応しています。
価格:
要問合せ
その他:
活文 Report Managerはオンプレミスのシステムです。開発から構築、保守を専門に行う、チームによるサポート体制が受けられるので安心です。
製品サイト:https://www.hitachi-solutions.co.jp/katsubun/sp/rm/
Paples(日鉄日立システムエンジニアリング株式会社)
様々なシステムから出力される帳票をシームレスに電子保存し、セキュアに一元管理できる電子帳票システムです。高速検索、分散印刷、FAX自動送信、データ抽出などの多彩な機能により、業務効率化とコスト削減を実現します。
特長:
- オールインワンパッケージ
- 統合的な電子帳票基盤
- 多彩なソリューション
- 「使いやすさ」を追求した便利な機能
- シンプル構成・シンプルライセンス
- グローバル&タブレット対応
- 文書・明細データ管理
機能:
RDBやCSV形式のデータを取り込み、帳票を手軽に作成できる「帳票作成機能」、メインフレーム連携、ERP連携、帳票ツール連携、文書取込などが可能な「取込機能」、保存された帳票には保管期間を設定したり、ユーザの閲覧設定をしたり、仕分けの設定などを行う「電子保存機能」、保存された帳票データの中から、様々な方法で目的の帳票を簡単に検索したり、帳票データをCSVデータとして切り出しExcelで加工したり、電子捺印を利用して回覧させたりする「電子帳票活用機能」、プリンタ出力・FAX・PDF化など多彩な出力機能がある「帳票出力機能」などが備わっています。
価格:
パッケージの標準価格:100万円~(※導入時の作業費用や保守費用は別途お見積もり)
その他:
Paplesはオンプレミスの製品ですが、Paplesサーバをクラウド環境に構築し利用するクラウドソリューションも提供しています。
また、こちらは多言語に対応したシステムです。帳票管理画面は、現在、英語・中国語(簡体字)に対応しており、要望に応じて対応言語は拡大しているとのことです。
製品サイト:https://www.nhs.co.jp/package/paples/
まとめ
いかがでしたか?電子帳簿保存法に対応している文書管理機能と言っても、それぞれ強みがあります。現時点(2021年10月)に公開されている情報をもとにご紹介していますが、詳細情報や最新情報はそれぞれの製品サイトにて必ずご確認ください。
2022年1月施行される改正電子帳簿保存法に向けて、どのように対応するのか、業務はどのように行うのかを決めるタイミングが近づいていきました。今回ご紹介したような文書管理システムを使用すると改正電帳法への対応がスムーズではありますが、必須ではありませんので、使用する場合のメリットデメリットなどを整理して、自社に合った体制・仕組みで改正電帳法に対応しましょう。
※PandoraClimber 及び ClimberCloud は株式会社NTTデータビジネスブレインズの登録商標です。
※DX Suite は AI inside株式会社の登録商標です。
※SPAはウイングアーク1st株式会社の登録商標です。
※Data DeliveryはJFEシステムズ株式会社の登録商標です。
※活文 は株式会社日立ソリューションズの登録商標です。
※Paples は日鉄日立システムエンジニアリング株式会社の登録商標です。
※掲載されている商品名またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2021年10月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!
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