社会保険・労働保険に関する一部手続きの電子申請義務化

2020年4月より特定法人の社会保険・労働保険に関する一部手続きの電子申請が義務化されました。近年、政府による行政手続コスト削減の一環として、行政手続きの電子化が進められています。2020年9月には電子申請ポータルサイト「e-Gov」がリニューアルされ、電子申請手続が促進されています。

本記事では電子申請の対象となる手続きや、特定法人について説明し、電子申請のポイントや具体的な方法を解説していきます。

 

社会保険・労働保険に関する一部手続きの電子申請義務化の背景

従来は紙媒体の書類に必要事項を記入し、窓口に出向き手続きを行う方法がメインであり、事業者も行政機関も手間とコストがかかるという問題がありました。昨今、政府全体で行政手続きコストを削減するため電子申請の利用促進を図っており、当該取り組みの一環として、電子申請の義務化が行われました。従来の紙ベースでの手続きを撤廃し、電子申請を義務づけることによって、行政手続きの利便性の向上を図るのが主な狙いです。

 

対象となる法人は

今回、電子申請義務化の対象となる法人は以下の4つです。

・資本⾦、出資⾦⼜は銀⾏等保有株式取得機構に納付する拠出⾦の額が1億円超の法人
→いわゆる大企業が上記企業に該当します。

・相互会社(保険業法)
→多くの保険会社が相互会社にあたります。

・投資法人(投資信託及び投資法⼈に関する法律)
→投資法人には不動産投資法人、証券投資法人、インフラ投資法人があります。

・特定目的会社(資産の流動化に関する法律)
→資産の流動化に関する法律に基づいて、資産の流動化業務を行うために設立される特別目的会社の一種です。

上記4つの電子申請義務化の対象となる法人には各行政機関より電子申請義務化の対象となる旨の通知がいく予定となっているため、それぞれの通知を確認したうえで電子申請手続を行うことになります。

 

電子申請の義務化の対象となる手続き

上記4つの法人は2020年4月より以下に記載する手続きを電子申請で行わなければなりません。手続きは主に健康保険・厚生年金保険、労働保険、雇用保険の4つに分類され、今回電子申請義務化の対象となった手続きは主要かつ、頻度の高いものが対象となっているようです。

電子申請を行うにあたり、以下3点の注意事項があります。

1.2020年4月以降に開始される各特定の法人の事業年度から適用されます。

2.社会保険労務士や社会保険労務士法人が、対象となる特定の法人に代わって手続を行う場合も含まれます。

3.以下に該当する場合は、電子申請によらない方法により届出が可能です。
・電気通信回線の故障や災害などの理由により、電子申請が困難と認められる場合
・労働保険関係手続(保険料申告関係)については、労働保険事務組合に労働保険事務が委託されている場合、単独有期事業を行う場合、年度途中に保険関係が成立した事業において、保険関係が成立した日から50日以内に申告書を提出する場合。

(参考:厚生労働省 電子申請の義務化 https://www.mhlw.go.jp/content/000606943.pdf )

 

電子申請を行うための2つの方法

前半では電子申請の対象なる特定の法人、手続きについて紹介してきましたが、後半では、具体的な電子申請の方法や電子申請のメリットについて解説していきます。

電子申請には大きく2つの方法があります。それぞれ以下の通りです。

  • e-Govを用いた電子申請
  • API連携対応ソフトを用いた電子申請

 

e-Govを用いた電子申請

e-Govは電子申請手続のためのポータルサイトです。e-Govで直接情報を入力し、申請の承認、書類のダウンロードまで一貫して手続きを行うことができます。以下ではe-Govにおける一般的な電子申請の流れを説明していきます。

1.利用準備

e-Gov電子申請アプリケーションをインストールし、e-Govアカウントを登録し、マイページにログインします。

 

2.申請・届出

マイページから該当の手続きを選択し、申請に必要な情報を入力します。次に必要な書類を添付し、提出します。申請種別によっては、申請時に電子署名が必要な場合があります。電子署名には電子証明書が必要となり、認定局から発行を受けることができます。電子証明書が必要な手続きは下記の表を参考にしてください。

( e-Gov電子申請 利用準備 https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation より)

3.処理状況等の確認

申請した手続きの事務処理状況をマイページで確認できます。処理状況はパソコンやスマートフォンで確認できます。

 

4.手数料等の納付

手数料等の納付を必要とする手続きの場合、申請手続きの指示に従い手数料等を納付します。Pay-Easy対応の金融機関の場合、ATMやインターネットバンキングから電子納付が可能です。

 

5.公文書取得

提出先機関によって申請が受理されるとマイページから公文書ファイルがダウンロード可能となります。(※公文書の発行が行われない手続きもあります。)

 

API連携対応ソフトを用いた電子申請

API連携対応ソフトとはe-Gov電子申請の外部連携APIに対応したソフトウェアです。人事労務ソフトウェアがe-Gov外部連携APIに対応している場合にはそちらで電子申請を行うことが可能です。

 

(参考:e-Gov電子申請 URL:https://shinsei.e-gov.go.jp/ )

 

電子申請のメリット

電子申請の具体的な方法を2つ紹介してきましたが、いずれの方法も従来の紙ベースでの手続きよりも簡単かつ効率よく行えるようになっています。以下は実際に電子申請を利用したユーザのコメントですが、ポジティブな感想が多く利便性の高さがうかがえます。

  • 年金事務所やハローワークに行く必要がない。
  • 自宅や職場で申請できる。
  • 紙や電子媒体による申請よりも早く処理が行われる。
  • 郵送コストがかからない。
  • 押印の手間がかからない。
  • ペーパーレス化につながる

(参考:電子申請を利用したユーザのコメントhttps://www.mhlw.go.jp/content/000668756.pdf )

 

まとめ

電子申請の義務化については、「義務化」はされていますが、電子申請しなかった場合の罰則等は、現段階では定められておりません。一方で電子申請義務化の対象となる手続きにも関わらず、従来通りの処理を行ってしまうと適切に処理されない可能性も十分にあります。特定の法人に該当する企業はどの手続きが義務化されているのか、しっかりと情報を収集し対応する必要があります。また、現在は特定の法人として、対象となる事業者が限定されていますが、将来的に中小企業にも義務化される可能性が大いにあります。今のうちから電子申請を活用することでスムーズに電子申請の義務化に対応できるよう準備を進めてみてはいかかでしょうか。

 

※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2020年12月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。