目指せ合格!中小企業診断士試験の解説及び攻略法 ~その1 概要編~

本記事では中小企業診断士資格を持つ筆者が、中小企業診断士という資格および試験に関して、自身の経験を交えて紹介します。
初回である今回は、試験の概要についてです。

中小企業診断士とは

中小企業診断士は、中小企業支援法によって定められた国家資格です。
法律上では「中小企業の経営診断の業務に従事する者」とされ、日本版MBA、コンサルタントの国家資格等と呼ばれることもあります。

国家資格には、「業務独占資格」と「名称独占資格」がありますが、中小企業診断士は後者です。「業務独占資格」はその名の通り、その資格を持っている人しか許可されない仕事がある資格を言います。弁護士や弁理士、公認会計士をイメージすればわかりやすいのではないでしょうか。

一方、中小企業診断士は「名称独占資格」であり、中小企業診断士にしかできない業務はありません。一方、名称は独占ですので、中小企業診断士を名乗ることができるのは中小企業診断士資格をもつ人だけ、という事になります。

筆者はなぜ受けたか

中小企業診断士を受験する前年に業務上の必要性から簿記2級を取得しました。
簿記2級のために、学生時代以来久しぶりに計画を立てて1~2ヶ月勉強をしたのですが、それにより働きながら勉強する習慣が出来たので、これを機にもう少し上級の資格を取ろうと思い、中小企業診断士を受験することにしました。今も独立して診断士をしているわけではないですが、資格取得を通じて身につけた知識は日々の業務に役立っています。

資格取得までのプロセス

資格取得までの道程は下記の4段階があり、長丁場の試験となります。

・1次試験
・2次試験 or 養成課程に通う
・2次口述試験
・実務補習 or 実務従事

前の段階に合格しないと次には進めず、試験は1年に1度しか行われません。

1次試験

1次試験は7科目の筆記試験で行われます。
科目合格制があり1次試験で落第したとしても、翌年と翌々年は合格科目を免除して受からなかった科目のみで受験が認められています。
試験は例年8月上旬ですが、2020年はオリンピックとの兼ね合いで7月に行われるそうです。

2次試験 or 養成課程に通う

2次試験は、10月上旬に、4科目の筆記試験で行われます。
1次試験に合格した同年の2次試験が不合格だった場合、翌年に限り1次試験免除で2次試験から受けることができます。

また、1次試験合格後に、登録養成機関(大学等)にて行われる養成課程を修了することで、2次試験以降の過程が免除されます。ただ、養成課程は機関によって異なりますが、およそ200万円以上の費用と、300時間を超える通学が必要なので、労働者であれば勤務先の支援等がないと難しいです。

2次口述試験

口述試験の内容は、多くは当年の2次試験の問題に沿って質問が出され、回答するというもので、10分ほどで終わります。2次試験の合格発表(12月上旬)の1週間程度後に行われます。

面接では毎年数人不合格になっていますが、おそらく止むに止まれぬ事情で当日都合がつかず欠席した人か、2次試験の内容をほとんど覚えていないというような人以外はすべて受かっていると思われます。
最終合格発表はクリスマス前後です。

実務補習 or 実務従事

口述試験の合格で試験には合格となりますが、中小企業診断士として登録するには試験合格後から3年以内に、実務補習への従事あるいは実務従事の証明書類を提出する必要があります。
実務として認められている業務は以下のものがあります。

  1. 公的な機関などから派遣されて行うコンサルティング。
  2. コンサルティング会社等に勤務しており、所属先から派遣されて行うコンサルティング。
    証明書を自社or取引先からもらう。
  3. 自社内で経営者に対して、自社の経営改善の提案を行った場合。
  4. 公的な機関の斡旋による窓口相談業務。

実務従事に関しては、最初の登録要件のみならず5年に1度の更新のための要件でもあります。
1・4はすでに中小企業診断士である人、あるいは他の士業資格等を持つ人でないと実施は難しいでしょう。
2に関しても、勤務先の業種に左右されます。
3は、勤務先が中小企業であり、経営改善の提案を行えるような立場であれば可能ですが、実務の証明書類に代表印が必要なので、ハードルは高いと思います。

上記4つの実務を用意できない受験者のために、補習として中小企業診断士協会が実務の場を斡旋してくれて、それにより実務として認められる制度が実務補習です。

実務補習も実務従事も、登録要件としては15日間の実務が必要です。実務補習の場合は、1企業を5日間として、3つの企業の診断実務を行うことで、15日間と認められます。

実務補習と実務従事は組み合わせることもできまして、筆者は、勤務先が当時、実務従事の対象企業規模*だった為、勤務先での業務を10日間実務従事とし、実務補習を1企業で5日間行い、合計15日として登録要件を満たしました。

5日間は金・土・土・日・月という5日間で行われ、一般企業勤務者は有給を取得する必要があるので、業務の都合上、合格しても実務補習が受けられず登録できない方もいるようです。
新規登録者向けの実務補習は12月に2次試験に合格して、年が明けた2-3月に行われます。

*基本的に法律上の中小企業が対象です

以下に資格取得経路を図にしたものを掲載します。

 

合格までに必要な費用

養成機関に行かない場合、かかる費用は下記のとおりです。(平成30年現在)

・1次試験:13,000円
・2次試験:17,200円
・実務補習:15日間-148,600円 5日間-50,000円

実務補習の費用が結構高いです。
その他の費用としては、資格学校の講座や通信教育等を受講すれば、10万単位のお金が必要です。
独学でも十分合格可能ですが、参考書の購入は必要ですので数万円はかかります。

合格率と受験者の属性

毎年、合格率や合格者の属性が発表されています。
合格率は、年度によってばらつきはありますが、1次試験が20%台前半、2次試験が10%台後半です。科目合格、2次試験2年目等あるので一概には言えませんが、最終合格率は1次と2次の確率を掛けた4~5%ではないでしょうか。

ちなみに、筆者は受験1年目で1次試験合格、2次試験不合格となり、2年目の2次試験で合格しました。
4~5%というと狭き門ですが、実務補習で知り合った他の合格者たちはほぼ全員1年目で1発合格でした。
1年に1度しか無く、働きながらの受験となりますので、複数年計画ではなく1年目で一気に取ってしまう方が多いのではないかと思います。

受験者の職業は、以下の分類で発表されています。


#引用元 平成30年度試験 一般財団法人中小企業診断士協会の統計資料

民間企業がひとくくりにされているので詳細は不明ですが、コンサルタント関係よりも金融機関に務めている方が多い結果となっています。
中小企業への融資業務が経営診断に類似するため、会社で取得を奨励している金融機関もあるようです。

年齢層としては、30-40台が例年半分以上を占めます。20歳未満及び学生は非常に少なく、社会人としてある程度の経験を積んだ受験者が多くなっています。
また、女性の受験者は少なく、例年9割以上が男性受験者となっています。


#引用元 平成30年度試験 一般財団法人中小企業診断士協会の統計資料

筆者が実務補習で一緒になったチームの方々(5人)は、全員男性で20代後半から40台前半の民間企業勤務者でしたので、まさに統計の中央値であったと言えます。
統計資料は、試験を主催する一般財団法人中小企業診断士協会のWEBサイトに掲載されています。

https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/001_shiken_kakokekka.html

次回は試験について

以上が中小企業診断士試験の概要です。
次回は、1次試験の内容及び筆者なりの攻略法について紹介します。

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