作業進捗管理? 原価管理?「プロジェクト管理」をシステム化する際の基本的なポイント
本記事はEnterpriseZine「IT担当者のための<新>業務の基礎知識」転載記事です。(2017/08/02 07:00掲載)
本連載では、初めて現行業務をシステム化することになったシステム担当者向けに、システム化する際の注意すべき基本事項を紹介してきました。今回は「プロジェクト管理のシステム化」にスコープを当て、システム化する際の基本的なポイントについてご紹介していきます。
目次
プロジェクト管理をシステム化する際の基本的なポイント
IT業界ではプロジェクト単位で業務を管理していることが多く、現行業務をシステム化する際にはこのプロジェクト管理のシステム化は切り離せないものであり、検討しなければならない事項となります。
連載第3回目である今回は「プロジェクト管理をシステム化する際の基本的なポイント」として、以下3つのフェーズに分けてご紹介します。
- プロジェクト管理をシステム化する方針を決定する
- 現状のプロジェクト管理方法を確認・整理する
- プロジェクトの契約やその他システムに付随する機能について検討する
プロジェクト管理をシステム化する方針を決定する
プロジェクト管理システムでは、大きく分けて以下の2つに分類することができます。
- プロジェクトの作業進捗を管理するもの(作業進捗管理)
- プロジェクトの原価を管理するもの(原価管理)
作業進捗管理については、対象となるプロジェクトを作業分類毎に分け、作業予定に対する作業進捗を管理するものになります。
原価管理については、対象となるプロジェクトの原価予定額に対する実際発生額を管理するものになります。
プロジェクト管理をシステム化する際、まず初めに作業進捗を中心機能としたシステムを検討するのか、それとも原価の予実管理を中心機能としたシステムを検討するのか、どちらを主体としたシステムを検討するのか方向性を決める必要があります。
なぜなら作業進捗管理と原価管理を紐づけて管理することは難しいためです。IT業界では主な原価は人件費であることが多く、管理したい原価予実の内容も当初予定していた人件費に対する実際発生額を管理することがメインとなります。
人件費の算出方法としては、実際に作業した工数をプロジェクト毎に管理し、予め定められた対象者の1時間当たりの単価と管理された工数を掛け合わせ算出する方法となります。
作業進捗管理では、どこまで作業を進めることができたかを管理するため、作業内容や対象者の能力により1時間あたりの進捗度は異なります。
原価管理では「1時間当たりの単価×工数」で算出することは可能ですが、上述したように作業進捗管理では単純に工数情報を利用し、作業進捗を表現することができません。
パッケージシステムではこのどちらかをメイン機能としていることが多いこともあり、まずは検討の主軸をどちらに置くのか方針を決める必要があると言えます。
現状のプロジェクト管理方法を確認・整理する
システム化を行う方針が決定したら、現状のプロジェクト管理方法を確認し整理する必要があります。
プロジェクト管理をシステム化していない場合、Excelにて管理していることが多く見受けられExcelならではの自由度の高さがあるため、まずはシステムで管理する項目の精査や、導入後の業務フローを検討する必要があります。
これらを事前に決めることで正しいシステムの選定と、システム導入時の要件定義やそれに伴う社内調整をスムーズに進めることができます。
逆に決めていないと以下のような問題が発生する可能性があります。
- 導入時の要件定義にて新たな要件が追加され当初予定していた導入費用よりも増額してしまう
- 要件定義期間が延長され、システム導入スケジュールに影響し稼働が遅れてしまう
次に必要となるのはプロジェクトを管理している単位の確認です。
1つのプロジェクトの中で工程や契約のフェーズに分けて作業進捗や原価を管理している場合、それらを包含し管理をしたいという要望は必ず上がります。
現状はどのような単位で管理をしているのか、どのように集約し1つのプロジェクトとしているのか、など確認する必要があります。
プロジェクト毎の原価管理面でも確認が必要な事項があります。
それは管理している原価の内容です。
- 人件費は予定の単価にて管理しているのか、実際発生額にて管理しているのか
- 人件費以外の原価はどのようなものを管理しているのか
- 間接費もプロジェクトの原価に含め管理しているのか
など、これらもシステム化を行う上で確認が必要な事項となります。
契約管理やその他システムに付随する機能を検討する
プロジェクト管理のシステム化に併せて、紐付く契約情報の管理についても検討が必要です。
主な管理内容としては契約金額、納期、請求、部分納品の有無、追加受注や契約変更や更新時の運用方法などが上げられます。
もちろん一般的なシステムであればこれらを管理することは可能ではありますが、その管理方法が自社の運用に沿ったものなのかは、これまで紹介してきました注意点やポイントと同様に、現状の確認や整理をする必要があります。
また、検討候補として上げられているシステムに付随する機能(見込管理、見積管理、勤怠管理・経費管理・請求管理・会計システム連携・ワークフローなど)も併せて検討することで、以下のような効果を見込むことができます。
- 日毎の勤怠情報より作業時間を算出し、その日に携わったプロジェクトへ工数を割り振ることで勤務時間と作業時間の整合性を保つことができる
- 各社員が経費情報を登録する際、経費明細毎にプロジェクト情報を紐づけることにより正確な原価管理が可能となり、原価管理業務の負荷も軽減される
- 登録された売上情報や経費情報より仕訳を生成することのできるシステムであれば、その情報を利用し会計システムへ連携することができる
- ワークフロー機能が搭載されたシステムであれば、IT面での内部統制強化に繋げることができる
プロジェクトに関する情報を利用しこれらを併せて検討することで、より価値のあるプロジェクト管理システムを導入することが可能になると言えます。
*****
次回は、データ移行や他システムとの連携に対する基本的なポイントを紹介したいと思います。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!