0から始めるプロジェクト管理
プロジェクト管理という言葉は、今では聞きなれた方も多いと思いますが、この言葉が普及したのは1960年代初めからとのことです。20世紀中頃あたりから業務の効率化が叫ばれるようになったこともあり、大人数でひとつの事業を行うようなケースではプロジェクト単位で作業を編成することにメリットを見出され始めたようです。
目次
プロジェクト管理とは
プロジェクト管理という言葉を簡単に説明すると、
目的を達成するための計画を立て(=プロジェクト)、実行時にその状態を維持する(=管理)こと
となります。
「プロジェクト管理を行う」とは、具体的に何をすることを指すのでしょうか。
いくつか例を挙げますと
・納期までに目的を達成できるスケジュールの策定及び進行状況の確認
・目的を達成するために最適なプロジェクトメンバーへの作業の割り振り
・スケジュールに遅延が見られる場合の対応(原因を究明し対策を講じる、あるいは顧客への延期要請をする)
このような、プロジェクトを円滑に進めるための作業を指します。
システム開発の標準的なプロジェクト管理の流れ
システム開発の標準的なプロジェクト管理の流れと、それぞれのフェーズでの注意点を見てみましょう。
プロジェクトの目的を確認し、計画を立てる
まずはプロジェクト立ち上げの目的を確認します。
その際、曖昧な表現ではなく、具体的な数値目標を明確にすることで、その目的が達成できたがどうかを判断することが可能になります。
これは、定量的アプローチと呼ばれるもので、工数、コスト、進捗率、要件数、プログラム数などの切り口を用いて、例えばいつまでにどのくらいの進捗率を目指す、いくつプログラムを作成する、といった目標設定をします。その他にもテスト工程でのバグの発生率と収束率をカウントする、といったものもあります。
プロジェクトの定義及び計画の曖昧さを排除するためにも、事前にプロジェクトメンバーとよく話し合って、プロジェクトの目的、予算、スケジュール、リスクなどを把握しておく必要があります。
目的を達成する具体的な手段を決める
目的を確認し、計画を立てたら、その計画を達成するための具体的なプロジェクトの遂行手段を決めます。
例えば、
プロジェクトの完了期日が決まっていて緻密な計画を立てる必要のある長期プロジェクトの場合はウォーターフォール型
プロジェクトの途中で仕様の変更や追加が予想される場合は柔軟に変更対応できるアジャイル型
プロジェクトの初期段階から試作を作ってユーザーとの認識を合わせたい場合はプロトタイプ型
試作を作ったうえでユーザーの要求仕様の変更が多いと予想される場合には設計とプロトタイピングを繰り返すスパイラル型
といった開発手法を用いた手段があります。
タスクの洗い出しと割振り
目的と手段が決まったら、目的を達成するために必要な具体的なタスク洗い出します。
そして出てきたタスクをリスト化して整理し、適切なメンバーに割振ります。
タスクを割り振ったあとも、プロジェクトマネージャー(以下PM)は、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションを円滑に行えるようコントロールをし、状況を把握できるようにしておくことも大事です。
進捗・品質の確認及び修正
タスクの整理と割振りが完了したら、開発の作業に入ります。
ここまでで立てた計画が完璧なものであっても、それを実現できなければ意味がありません。そこでプロジェクトの進捗管理が必要になります。
PMを中心に、プロジェクトが計画通りに進んでいるかを確認し、合わせて成果物の品質が落ちていないかをチェックしつつ、プロジェクトを進めていきます。
品質のチェック方法は、以下のような流れになります。
1)品質基準を決める
これは例えば「文書作成において語尾はですます調にする」、「Web制作はHTMLなどの一般的な標準規格に従う」、「Web制作を行う際には、実際にあるWebページなどを用いて具体的なイメージを提示する」など、発注者と作業者との認識を合わせます。
また、ほかにも、高齢者向けサイトを作成する場合であれば「大きくて見やすいページにする」などの品質基準を設定します。
2)レビューやテストの計画を立てる
上記で設けた品質基準をクリアしているか、品質チェックシートを作成して確認します。
機能のテストの計画は、誰がどれくらいテストを実施するかを計画します。
テストに必要な成果物とタスクを洗い出し、担当者、期限、手段について決めます。
誰がやるのかについては、外注という選択肢もあります。
テストの実施回数については、上限回数を設けるのか設けないのかなどについても話し合って決める必要があるでしょう。
3)品質管理を運営する(レビューやテストの実施)
ここまでに決めた基準や計画を元に、レビューやテストを実施します。
具体的には、1つの機能について確認する単体テスト、複数機能をつなげて確認する結合テスト、すべての機能をつなげたシステム全体の総合テストがあります。
タスクを消化して、成果物が作成できれば、目的の達成となります。
プロジェクトがうまくいかない原因と、その対処法
プロジェクトを進めていると、場合によってはいくら時間や人員や予算をつぎこんでも完成度が上がらない「炎上」とよばれる状態や、失敗の可能性が高いまま無理なスケジュールでの過酷な労働を強いられる「デスマーチ」とよばれる状態があります。
こうした事象を引き起こす原因と対処法を以下にまとめました。
PMの見積もり間違いが原因の場合
プロジェクト計画を立てるにあたり、初めから無理な計画を立ててしまうと、その後何度も修正をしなければならなくなり、計画を立てた管理者が信用を落としてしまいかねません。与えられた予算や納期では厳しいと判断した場合は、顧客に予算の拡大や期限の延期の相談をして、実現可能なスケジュールを立てるようにしましょう。
また、プロジェクトの途中で想定外の出来事があり人員などのリソースが不足してしまった場合、今のメンバーだけで予定通りにプロジェクトを完了は難しいと判断したら、正式な支援を取り付けるようにします。
このようなプロジェクト計画の変更が必要な場合には、躊躇せずに変更をしましょう。
メンバーによる正しくない進捗報告や問題点の隠蔽、PMによる進捗状況の確認漏れが原因の場合
日々のミーティングなどで、メンバーのタスクを把握し、進捗報告が正しいかを確認します。可能であれば朝と夕にミーティングを実施し、その日の進捗確認を実施します。問題が起きた場合は、次のミーティングまでに報告できるような仕組みを作りましょう。
メンバー間での対立などが発生した場合は、その原因を究明し、双方納得できるような解決方法を考えましょう。
また、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションを円滑にするために、適切なコミュニケーションツールを共通で使用するのも良いでしょう。
ツールを使うことで、プロジェクトの現状を周知する効果も期待できます。
追加メンバーの技術不足が原因の場合
プロジェクトが遅延しており、遅れを取り戻すためメンバーを追加する際、とりあえず人数を増やそうとして、必要としている技術レベルに満たないメンバーを入れてしまうことがありますが、逆にプロジェクトが混乱する恐れがあるので、適切な技術を持ったメンバーを選びましょう。
顧客からの無茶な要求(ドキュメント等)が原因の場合
作業報告書の作成に、想定以上に時間を取られていないかを確認しましょう。顧客からのドキュメントの過剰な要求がある場合は、顧客と交渉して、プロジェクト進捗に支障のない程度のドキュメントの提出に変更してもらいましょう。
プロジェクト管理で用いられる管理帳票例
プロジェクト管理をするにあたり、様々な管理帳票が必要になります。
企業によって、またプロジェクトの規模等によってもフォーマットは異なりますが、システム開発のプロジェクトで標準的に使われる管理帳票の中からいくつかを抜粋してご紹介いたします。尚、以下にご紹介する帳票フォーマットは、当社(株式会社ビーブレイクシステムズ)が提供しているプロジェクト管理型ERPパッケージ「MA-EYES」で利用しているフォーマットになります。
プロジェクト計画書
プロジェクトの計画を立てる段階で必要となる帳票です。
プロジェクトのNo、担当者、得意先、着手日、受注日、完了予定日、請求情報などといった基本的な情報を記載し、更にプロジェクトにかかる経費予定やアサイン計画なども一元的に管理する帳票です。
経費や人件費といった原価の予定を入れることで、プロジェクトの売上予定、粗利予定も確認できます。
協力会社請負管理票
プロジェクトにおいて、協力会社から技術者を派遣してもらう場合、そこにかかる費用などの情報を管理する帳票が必要です。
仕入先名称、技術者氏名、月額単金、基準時間の上限下限、超過控除の単価、関連するプロジェクト、契約期間などを記載します。
この帳票は自社プロジェクトだけでなく、協力会社の技術者を顧客に紹介する場合にも利用できます。
勤務表
技術者の作業時間を記録する帳票です。
一日の出退勤時間を記録し、その内訳としてどのプロジェクトに何時間作業したかを記録することで、プロジェクト毎の原価(人件費)を正確に把握することが可能です。
毎日記録すれば、日々の原価の進捗を追うことができるので、予定よりもオーバーしている場合には、早期に対策を打つことができます。
売上粗利予測表
営業が受注する予定を管理するための帳票です。
受注確度が高い案件があれば、その時期に開発リソースを適切に割り振るために社内で行われているプロジェクト全体を調整することもあるでしょう。営業部と開発部が情報を共有するためにもこうした売上粗利予測表が必要になります。
帳票は、月ごとに売上げを「受注済み」「受注確度A(高)」「受注確度B(中)」「受注確度C(低)」と分けて見込みを登録し、売上、原価、粗利、売上達成率、粗利達成率、粗利率の予測を立てる際に使用します。
まとめ
プロジェクトを成功させるためには、プロジェクト管理が重要な役割を担っています。
PMを中心に、プロジェクト計画書などの管理帳票も上手に活用し、適切なスケジュール、メンバー、予算で行っていけるようにするとともに、失敗しないための施策も大事で、炎上やデスマーチを引き起こさないようプロジェクト進捗管理をしていきましょう。
また、場合によってはプロジェクト管理のためのツールの導入を検討するのもよいと思います。
プロジェクト管理に特化したERPパッケージや、プロジェクト進捗管理ツールも多く開発されているので、必要だと感じたら、まずは自社に合うものがあるかを探して見るのもよいでしょう。
筆者プロフィール
- 家電量販店でウィンドウショッピングするのが好きです。
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