業務管理システム選定時のポイント(2)SaaSとオンプレを比較する

業務用システム普及の歴史を紐解くと、1960年代後半にメインフレームという、今でいうところのスーパーコンピュータのような巨大な筐体を持つコンピュータを用いたシステムから始まります。

当然、そのような大きなコンピュータを購入・維持・運用できるのは大きな企業ですので、最初は金融機関などの大企業が利用していました。その後、コンピュータが小型化され、幅広い企業が利用できるようになりました。

1990年代後半には、販売・購買・在庫・会計等の基幹業務を統合したERPが普及しましたが、会計などの基幹業務のシステムは技術的な先進性よりも堅牢性が求められるので、システムをブラウザ経由で利用するWEBシステム化が遅く、2000年代まではクライアント/サーバ型のシステムが主流でした。

その後2010年代以降、会計や勤怠など特定業務のSaaS製品が続々とリリースされ、2020年代からは、SaaSとして提供されるERP等の業務管理システムも増えています。

色々とサービス・製品は揃ってきている中で、SaaSかそれともそれ以外の利用方式を選ぶか、悩んでいるシステム導入担当者の方は多いのではないでしょうか。

本記事では、SaaSとオンプレ、どちらがどのような特徴を持っているか比較していきます。

 

SaaSとオンプレの定義

SaaSの対義語としてオンプレミス(オンプレ)という言葉がしばしば使われます。

オンプレは“on (the) premises = 建物内で”という意味で、自社内でサーバ等、アプリケーションの稼働インフラを用意することで、SaaSはアプリケーションとインフラを同時にサービスとして提供されるものと一般的に考えられます。実際は「SaaSではないがオンプレでもない」という選択肢も可能であったり、SaaSとオンプレの間にインフラだけはクラウドにするIaaSといった段階もあります。

本記事では、それぞれを以下と定義したうえで比較してきます。

  • SaaS = クラウド上で稼働しているアプリケーションの機能のみがサービスとして提供される形式。
  • オンプレ = SaaSではない、主にライセンス所有型アプリケーション。稼働環境としてはIaaSも含む。

 

SaaSとオンプレの比較

色々な角度で比較が可能ですが、いくつかの項目に絞って今回は進めていきます。まずは一覧をご覧ください。

比較項目について個別に見ていきましょう。

 

費用の比較

SaaSは、

  • イニシャルコスト:初期設定、導入支援費用等
  • ランニングコスト:期間利用料(月額、年額)×利用数

という形での料金体系が多いようです。

 

オンプレ(買い切り型)は、

  • イニシャルコスト:初期設定、導入支援、カスタマイズ(あれば)、ライセンス費用等
  • ランニングコスト:保守費用、追加ライセンス費用、インフラ費用、運用費用

という形です。

 

一般的には、SaaSはイニシャルが安価でランニングが高価、オンプレは逆になります。また、SaaSのほうが利用人数と価格の比例度が高いため、利用者が少人数の場合はSaaS、大人数の場合はオンプレと価格に差が出てくる場合もあります。

 

会計処理の比較

SaaSはサービスのため費用計上、オンプレ(買い切り型)のソフトウェアは資産計上し毎年原価償却という形を取ることが多いです。

リース等を利用する事で、オンプレでも費用計上とすることもできます。

 

機能面の比較

SaaSはなんといっても、自動で最新の機能がアップデートされることが最大の利点です。一方、それが可能だということはアプリケーションの個別管理はしないという事でもあり、顧客ごとにソースコードを改変するようなカスタマイズはできません。

 

オンプレはカスタマイズの自由度が高い製品が多いです。こういう計算がしたい、こういう帳票が出力したいという基本的なカスタマイズもありますが、最近では、「ひとつの大きなERPシステムで」という形ではなく、「会計販売などコア業務はERPで、経費や勤怠は専用SaaSで」といったシステム構成も増えています。

 

SaaSはデータ連携のためにAPI等が用意されていますが、カスタマイズができないとサービス間にデータ加工のためのツールが必要であったり、スムーズな連携が難しかったりする場合もあります。

オンプレの場合は、カスタマイズにより複数システムからデータを取り込むことは比較的容易です。

 

運用面の比較

SaaSはサービスとして利用するだけなので、サーバの面倒をみる必要がありません。これは一方で、自由度がないことも意味します。

オンプレの場合は、物理サーバを自社管理下に置く昔ながらの方法から、サーバ環境はパブリッククラウドに置いてアプリケーションの監視だけをする、あるいは提供ベンダーのオプションや運用サービス会社に委託することで「オンプレ+IaaS」として利用することもできます。

SaaSベンダーが提供しているよりも高いレベルの運用基準を設けている企業の場合は、SaaSでは要件を満たせない可能性もあります。

 

セキュリティ面の比較

運用面と同様で、SaaSの場合はベンダー側のクラウド内でのサービスレベルに準じ、また自社が管理できない領域にデータが存在しますので、自社の要件通りのセキュリティ環境を構築することはできません。オンプレであれば、コストを度外視すれば自由な環境を構築可能です。

しかしながら、クラウド利用でもSSOや各種認証技術の発達で、通常の企業であればSaaS利用におけるセキュリティ上の懸念は減少していると言えます。

 

導入面の比較

SaaSはカスタマイズをせず、利用自体はすぐにできるようになるため、基本的には顧客が自分たちで設定することを前提にしているサービスが多いです。それゆえ、稼働までの最短期間は短いです。「顧客が利用できるようにサポートする」といったオプションサービスを用意している場合もあるでしょう。

オンプレの製品は、カスタマイズ内容含め要件定義作業からじっくりと行うため、期間はかかりますが、稼働までのサポートはSaaSよりも手厚い製品が多いです。

 

どのような基準で製品選定をするか

SaaSとオンプレで比較すると、色々な違いがあり強み弱みもそれぞれ持っていますので、単純にどちらが良いとは言えません。

  • オンプレでカスタマイズして失敗したので、SaaSで機能に業務を合わせたい
  • セキュリティ上、オンプレしか認められない

このようなクリティカルな理由がある企業のケースもありますが、多くの企業はそうではないでしょう。

また、「今はクラウドの時代だから、SaaSにする」と最初から決め込んでいるケースも散見されますが、前述の通りSaaSでなくてもクラウドでの運用は可能です。

 

やはり、システムを使う上で「機能」が要件を満たしているかは最も重要だと考えますので、機能面で必要な要件の洗い出し、候補製品とのフィットアンドギャップを丁寧にやった上で、コストや運用面を加味して製品選定をするのがいいのではないでしょうか。

 

当社のクラウドERP、MA-EYES(エムエーアイズ)は、SaaS、オンプレ、IaaS等お客様のご要望に合わせて柔軟なご提案が可能です。

業務システムの選定をお考えの会社ご担当者様がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

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筆者プロフィール

H.S
H.Sビーブレイクシステムズ
営業職。カレーが好きです。得意技は福岡日帰り出張。

【オンラインセミナー定期開催中】法改正、IT導入補助金、内部統制、業務の効率化など

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