業務の無駄を省いて管理を簡略化する10の方法
一般的に企業規模が大きくなるのに合わせて、部や課、チームなどの業務の管理単位が増えていきます。また、管理方法については全社共通ではなく、管理単位ごとに異なることが多いと思います。そのため、管理単位ごとに部分最適化された業務の進め方があり、全社的な視点でみると効率的ではない管理方法になっているケースが多いと思います。そこで今回は、全社的な視点でみた管理方法の見直しとITツールの活用による業務効率化を考えてみたいと思います。
目次
管理方法を見直して業務を効率化する方法6つ
前提として管理方法は部や課などの管理単位ごとに定めるのではなく全社共通のルールとして定めることが業務効率を上げるために重要です。
データの入力規則を定義して入力作業を効率化する
顧客台帳などのデータをエクセルで管理しているような場合、複数の人間が同じファイルに様々な情報を入力します。
そうすると、数字が入るべきセルに文字列が入っていたり、同じ顧客なのに英語表記とカタカナ表記があって別の顧客と認識されてしまうなどの「表記のゆれ」と呼ばれる現象が発生し、あとで集計しようとしたらエラーが出て、その修正作業に時間がかかることがあります。
このような場合は、ファイルの管理者がエクセルの機能である「入力規則」を使って入力制限をかけるとよいでしょう。
例えば、「整数」しか入力できないように設定したり、「リスト」を作成してリストに登録された単語以外は入力できなくするといったことが可能です。
入力規則を設定するメリットは誤記の防止だけでなく、リストをうまく活用することで入力のスピードや正確性を向上させ、修正による無駄な作業時間も削減できます。
業務マニュアルを作成して未標準化による無駄を省く
効率のよいやり方を知っていれば10分で終わる作業を、非効率なやりかたのまま60分かけておこなっている場合、それは無駄な業務と言えるでしょう。
例えば、エクセルで管理している見込み客リストがあって、新規に取得したリストとの重複チェックをする場合、エクセルの「VLOOKUP関数」などを有効に活用することで、作業時間を大幅に短縮できます。
現在見込み客リストに1000件登録されているとして、100件の新規リストを追加するケースを考えて見ます。
関数を使わずに1件ずつ見込み客の重複が無いかを確認しようとしたら、少なくとも100回検索する必要が出てくるので、どんなに速くでも10分以上はかかるでしょう。
VLOOKUP関数は、2つの別のリストの指定した範囲内に同じ名前がある場合、指定したセルに特定のセルの値を返すことができます。この関数を活用すれば、重複している企業を見つけることが容易にできます。設定にかかる時間を含めても、1~2分で重複企業が判明します。
100件程度であればこのくらいの時間の差で済みますが、これが1000件や10000件規模になった場合、何時間単位で変わってきます。
業務のやり方が違うことで発生する無駄な時間の排除は、標準化するために業務効率が最もよい業務の進め方を記述した業務マニュアルの作成が有効です。また、作成した後も定期的に業務の進め方を見直し、業務マニュアルを改定していくことが重要です。
大人数が参加する打合せの回数や時間を減らし共通時間を短縮する
例えば、部全体で毎朝打ち合わせ行っているような場合に、その必要性を見直してみます。
もっと小さな管理単位(チーム単位など)のほうが効率がいいかもしれません。
打ち合わせの回数を減らし、その代わりに必要な情報共有は社内SNSのようなコミュニケーションツールなど別の手段を活用して、時間を短縮する方法もあります。
関わる人数が多ければ多いほど、そこにかかるコストが大きいということであり、逆にいうと時間短縮した場合の効果は大きくなります。
もちろんその時間が必要である場合は無理に減らす必要はありませんが、もし短縮できる時間があり、他の方法で置き換えられるようであれば、検討してみるのもよいでしょう。
コミュニケーションを取り易い環境にして認識のズレを早めに解消する
上司が部下に作業を指示したが、うまく伝わっておらず、その作業が最初からやり直しになるようなこともあるでしょう。
上司からの作業指示が正しく伝わっているか、作業者は自分の認識で間違っていないか、こうした意思疎通を頻繁に行う場合、座席が近ければすぐに聞きにいけますが、フロアが違う場合など作業場所が離れていたりして難しいケースもあるでしょう。
このような場合にも、先ほど挙げた社内SNSなどのコミュニケーションツールなどが有効です。
こまめに連絡する手段を設けることで、手戻りが発生しても、小規模で済ませられます。
複数の部署にまたがる業務をワンストップ化して作業の停滞時間を省く
例えば、システム開発会社の営業が顧客から概算見積もり依頼を受けた場合、一度持ち帰って開発部に概算見積もり依頼を出し、出てきた概算見積もりを顧客に提示する、という業務フローがあるとします。
この流れですと、開発部が忙しい場合は概算見積もりが出てくるのに時間がかかってしまいます。
詳細な見積もりを作成する場合は別ですが、概算見積もりレベルのものであれば、「概算見積もり作成シート」のような営業が作成できる計算シートを作ることで、待ち時間が削減でき、顧客への概算見積もりの提示がスムーズに行えるようになるでしょう。
部下の仕事量を調整し能力ミスマッチによる無駄な作業時間を削減する
あるメンバーの残業時間が他のメンバーよりも毎月多くなっているケースが見られる場合、もしかしたらそのメンバーの処理能力を超えて仕事を与えているかもしれません。
初めのうちは不慣れな作業を担当して時間がかかることもありますが、ある程度慣れてくる時期を過ぎてもまだ効率が上がらないようであれば、そのメンバーに対して担当業務に関するスキルを向上するための教育を実施します。また、メンバーの担当業務に関する適性に問題があれば担当業務の変更を検討する必要があるでしょう。そのためにメンバーのスキル情報を全社で共有し、適切人材を適切な業務にアサインできる仕組みがあることが望ましいです。
ITツールを活用して業務を効率化する方法3つ
業務システムを連携し転記ミスや手戻りによる無駄な時間を削減する
例えば販売情報を元に帳簿に記入する作業や、経費の申請情報を元に経費精算する業務を紙の書類で提出して手作業で処理している場合、転記ミスの可能性が出てきます。そうなると確認作業にも時間がかかりますし、ミスがあった場合は修正に時間がかかります。
こうした時間の無駄を排除するためには、業務システムを連携させることが有効です。
各システムが連携することで、システムをまたいだ転記が自動化され、転記ミスがなくなります。転記ミスがなくなることで、ミスの修正作業が必要なくなり、時間のロスをなくせます。
複数の業務を統合管理できるERPパッケージを活用することも有効な手段です。
ワークフローシステムを活用し承認行為の停滞による無駄な時間を省く
承認行為が紙ベースだと、承認行為の度に申請用紙を印刷して、上司の承認印をもらい、その申請用紙を管理担当者に提出する必要があります。上司が出張に出ている時は承認が得られないため業務が停滞することもあるでしょう。
そうした手間や待ち時間を解消するにはワークフローシステムが有効です。
ワークフローシステムの効果としては
・申請用紙の印刷が不要
・承認ルートの自動化
・進捗状況の可視化
・タブレット等を活用すれば社外での承認も可能
こうしたことが挙げられます。
RPAツールを活用して作業を自動化し手作業による無駄な時間を省く
「ERP/業務効率化 第四回 無駄が発生しやすい間接業務とその対処法、RPAによる業務自動化」でも触れていますが、RPAと呼ばれる業務の自動化ツールを活用するツールが注目を浴びています。
RPAツールは、一定のルールに基づく定型的な作業が得意で、その処理速度や持続時間は人の手作業の比ではありません。
時間短縮の具体的事例としては
・月末に集中する請求書作成業務の自動化
・メールで大量に来る問合せ履歴のリスト化
などがありますが、使いこなせば他システムと連携するなど複雑な業務も自動化できるので、量が膨大で時間がかかっている作業があれば、検討の余地があります。
また、RPAツールを使って複雑な業務の時間短縮をする場合、いきなり対象業務すべてを自動化するのではなく、その業務の中で特に時間がかかっている部分に焦点を当てて、少しずつ自動化を進めていく方法もあります。
業務の中で人間の判断が必要となる部分も多くあります。どの作業を自動化するのがよいかを考えながら上手に活用しましょう。
(番外編)思い切ってその業務をやめてみる
例えば定例会議で使うために毎月時間をかけて準備している分析資料の中に、重要度の低いものはないでしょうか。昔から使っている資料だからという理由で作り続けているが、その中でも最近は会議で触れられることがなくなったような情報があれば、その調査にかかる時間を他の作業に当てたほうがよいかもしれません。
また、多くのコストをかけているが、そのコストに見合うだけの利益を出せていない商品はないでしょうか。様々な対策を打ったが顧客ニーズがつかめなかったサービスは、思い切ってやめるのもひとつの手かもしれません。
費用対効果を考える
ここまで、業務の無駄を省く方法について見てきましたが、実際に業務のどれくらい時間がかかっていてどれくらい削減できるかを計算するにはどうしたらいいでしょう。
例えば、業務効率化のためにシステムを導入しようという話になったときに、費用対効果がどれくらいなのかを経営者から聞かれるでしょう。
新システムをいくらで導入することで、どの作業を何時間短縮できて、コストに換算したらいくら削減できるというのを数字で表す必要が出てきます。
このような試算をするときに使われるものの一例として、下図のような「ソリューションシート」があります。
このソリューションシートは
・システムの機能
・作業内容
・時間短縮見込み
・効果が及ぶ人数
といった情報を元に、会社規模ごとでの削減コストを算出します。
具体的な項目例としては
・SFA機能を用いた日報入力作業の効率化
・プロジェクト管理機能を用いた赤字プロジェクト削減効果
・作業実績管理機能を用いたプロジェクトマネジメントの効率化
・締め処理機能を用いた決算業務の省力化
などがあります。
導入目的や導入しようとしているシステムの種類、会社の業種などにより削減できる業務内容は変わってきますが、システムの導入を検討する際の費用対効果の算出時のご参考にしていただければと思います。
まとめ
最近は働き方を見直す動きが出てきていて、残業を減らし効率のよい働き方が求められていますが、だからといってこなすべき業務量が減るわけではありません。
業務内容を見直し、削除できる無駄な時間があれば、それを省けるような管理方法を考える必要があります。
業務効率化の手法は時代と共に進化していますが、一方で業務内容が複雑になっている部分もあります。
ITツールを活用するにしても、いかに活用するかで効果は大きく変わってきます。
こうしたITツールの活用方法も含めた業務の見直しをして、より効率のよい働き方ができるよう工夫をしていきましょう。
筆者プロフィール
- 家電量販店でウィンドウショッピングするのが好きです。
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