【インタビュー】ITエンジニア不足を解消する在宅ワーク専門社員採用~リモートワーク導入の妨げは固定観念や先入観~

CLINKS株式会社は、モバイル製品などで活用されるアプリ開発やITアウトソーシング事業・システム開発事業などを展開しています。2016年より場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の推進として「テレワーク」や「働きやすいオフィス環境」の整備などを行い、2017年総務省より「テレワーク先駆者」に認定されました。

本日は、CLINKS株式会社 Telework Business Essential事業部 次長 疋田大輔様にお話を伺いました。

トップダウンで全社員対象のテレワークを目指す

—貴社の働き方改革の取り組みの背景について教えていただけますか。

当社の働き方改革の起こりは、新サービスであるITエンジニア在宅派遣サービス「OfficeLessStyle」の提供開始に向け、トップダウンで社員の働きやすい環境整備を始めたことです。

 

「OfficeLessStyle」は、当社で長年培ってきたIT派遣・受託事業のノウハウ・実績とテレワークを融合した「在宅エンジニア+テレワークに必要なICT環境」をセットでご利用いただけるサービスです。

 

サービス開始にあたり、普及のカギとなる人員(在宅エンジニア)の確保を、新たな採用枠「在宅専門社員」で募ることを決めた上で、まずは全社員を対象としたテレワーク(在宅勤務)を自社で実現する必要があると考え取り組みを開始しました。

 

また、昨今のIT人材不足を背景にエンジニアの売り手市場は一年以上続いています。当社においても少なからず採用面での影響があらわれており、人材確保と人材流出の対策として社員が「働きやすいオフィス環境の整備」と並行して「企業の魅力」をつくる必要があると考えていました。

 

トライアルから始めPDCAを回し1年後の本格導入へ

—具体的な取り組み内容について教えていただけますか。

2016年度より「在宅勤務制度」のトライアル(試験導入)を開始しました。1年かけて各部署のエンジニアが様々な業務を通じPDCAサイクルを回し、テレワークの実施による課題の発見から改善まで行いました。

 

2017年8月から「在宅勤務制度」の本格導入を全社で実現するのと同時に、自社サービス「OfficeLessStyle」のサービス開始と同サービスの人員である「在宅専門社員」の募集を開始しました。

 

時間制有給休暇・本社移転・フリーアドレス・会議室の増設

—テレワーク以外で魅力的な会社をつくる取り組みとして実施された内容を教えてください。

2017年に「時間制有給休暇取得制度」を開始し、時間単位での有給休暇を取得できるようになりました。当社の残業時間は、一般的な会社より少ないのですが、少なければ少ないほうがよいため、今期からは水曜日と金曜日を定時退社日と定め、更に残業時間を削減しています。

 

2018年5月に「風通しの良い環境で仕事ができるように」と専門のデザイナーにオフィスデザインを依頼し、本社を移転しました。新オフィスでは「社員のモチベーションアップ」や「部門間コミュニケーション活性化」に繋がる施策として「Barカウンターの設置」、「会議室増設」、「フリーアドレス導入」をおこないました。

 

 

Barカウンター設置で客先常駐社員が帰ってきやすい場所をつくる

今回、オフィスの一角に設置したBarカウンターはランチタイムや定時後の社員交流ができる場所となっています。また、毎週水曜日と金曜日の定時退社日の夜に社員が無料で楽しめる社内Barをオープンしました。

 

社内Barスタッフは社員の中から募集したバーテンがBarカウンターに立ち、20種類以上のリキュールや原酒をベースとした様々なお酒やドリンクの提供をしています。スタッフが社員であるため気軽に集まることができ、社内交流が生まれやすくなりました。

 

当社は客先常駐している社員が多く在籍しているため、客先に長期常駐している社員や社内で働いている社員同士が社内Barを通じて交流を図り情報交換する機会になっています。社内Barは定時退社日にオープンするため、社外常駐社員が新オフィスに立ち寄ったときに社内でまだ働いている社員がいるかもしれないといった気兼ねもありませんので、社内Barをきっかけに気軽に新オフィスに足を運んでほしいと考えています。

 

 

悩ましいフリーアドレスの席決めは抽選方式

—貴社のフリーアドレス導入について教えてください。

フリーアドレスというと、社員が固定席を持たず、空いている席を自由に使って仕事をするオフィススタイルですが、部署間の交流の活性化となる最適な座席決定方法は何かということについて試行錯誤しました。

 

たとえば「完全自由席」であっても、結局は同じ部署やプロジェクトごとで固まって座ったり、仲の良い人たち同士がずっと一緒にいて座っていたら、フリーアドレスの利点が発揮されないのではないか。加えて、座席が固定されないことで毎日座席選びに悩む人がいるのではないかという懸念がありました。

 

そこで、まず初めの1、2ヶ月間は周囲の意見に耳を傾けながら、第一週、第三週目については「完全自由席」、第二週、第四週の2週間を「抽選制」としてフリーアドレス制を開始しました。

 

その結果、「完全自由席は毎日座るところに悩む」、「完全に決めてもらった方が気を遣わなくて済む」という声が多く挙がったため、当社のフリーアドレス制は現状では「抽選制」となっています。

 

—フリーアドレスの抽選はどうやって行っているのですか。

自社で開発したスマホ対応の座席抽選システムを使っています。
使い方は出社時に座席抽選システムにてその日の座席の抽選を行います。空き席の中からランダムで自分の名前が割り当てられます。その他にも誰がどこに座っているかをすぐに確認できます。

 

 

在宅勤務制度の普及・推進のための対策

—貴社の働き方改革の取り組みで苦労された点について教えてください。

先月で「在宅勤務制度」本格導入から一年が経ちますが、いまだ普及・推進に奮闘しています。なかでも2016年の導入当初は「テレワーク」の認知が低く、なかなか「在宅勤務制度」を利用してもらうことができなかったため、まずは社員に「在宅勤務制度」についての理解を深めてもらうことに苦労しました。

 

そのため、在宅勤務制度の普及を加速させる次の一手に、トライアルの翌2017年に管理職の在宅勤務をルール化し、管理職の在宅勤務日数のノルマを週1、月4回程度と決めました。

 

この背景に、管理職などの上長がテレワークについて推進的な考え方をもっている部署では「在宅勤務制度」の利用率が高く、一方でそうでない部署は利用率が低い傾向にあることから、上長の「制度に対する理解」がメンバーの「制度の利用」に繋がると考え、対策が実行されました。

 

クラウド環境の「在宅勤務制度」が本稼動するまで

—今回行ったIT環境の整備について教えてください。

まず「在宅勤務制度」のトライアルを稼動する過程において、どのようなIT環境でテレワークを実施するか検討したところ当初4つの選択肢がありました。

 

1. リモートデスクトップ(PC遠隔操作):自宅PCから会社のPCへ接続し作業できるようにする。
2.VPN接続:会社のLANに接続できるようにして社内ネットワークにアクセスできるようにする。
3.クラウド:オンプレミス環境にあった自社のサーバをクラウドに移行し、クラウド上ですべての作業をできるようにする。
4.シンクライアント:業務データを格納できないシンクライアント(仮想デスクトップ)端末で作業する。

 

これらの選択肢について当社で繰り返し検証を行った結果、トライアル時は、「リモートデスクトップ」と「VPN接続」にて行うことにしました。

そしてオフィス移転を契機に既存のオンプレミスサーバをクラウドサーバへ移行し、全ての業務をクラウド上で行えるようにしました。

リモートやVPN設定の必要がほとんどなくなり、現在はクラウド環境で大半の業務が行われています。インターネットの環境さえあれば、会社提供のPCを持ち帰り自宅でもどこでも仕事ができるという環境になっています。

 

—テレワーク時に社員が仕事している状況はどのように報告されるのでしょうか。

テレワークにおける勤怠状況の把握について、顔認証機能搭載の勤怠管理システムを使用しています。着席離席の判断を顔認証で行いPCの利用状況の記録で勤怠管理を行います。一時間にランダムで3枚の画面キャプチャーを登録しテレワーク社員がPCの前に座っているという確証を得ることができます。

 

一方で「在宅ワーク中に常にカメラで録画されているのではないか」という反発の声があがることがあります。常に監視されているのではないかという考えがテレワークを利用してみようという考えの妨げになることがあると感じています。

 

そこで「テレワークだから厳しいわけでなくオフィスにいるのとかわらない環境であること」や「カメラで常に監視されているのではなく顔認証で在席を判断していること」をきちんと社員に説明をして理解を得ないといけないと考えています。

 

実際説明をしていても「カメラを意識してしまい緊張する」という声もありましたが、テレワークを実践して回数を重ねるごとに気にならなくなったという社員の声が多くありました。

 

採用応募数が加速化、BCPの観点からも大きな成果

—取り組みの結果について聞かせてください。

テレワークの導入により、人材の確保において効果をあげています。在宅専門社員の採用も好調で今年に入り半期で500名の経験者のエンジニアの方から応募がありました。

 

テレワーク導入はBCPの観点から非常に成果があったと考えています。具体的には、台風接近等で交通機関の乱れが予想された日に、在宅勤務を選択することができるという認識が社員の中で広く浸透したと実感しました。

 

また、今年も昨年に続き7月にテレワーク・デイズに参加しました。当社からは、第一回テレワークデイ(2017)に10名、第二回テレワーク・デイズ(2018)に20名が参加し、昨年の2倍の参加人数を達成しました。

 

残業時間削減の取り組み成果は、2017年の有給休暇消化率58パーセント、2017年所定外労働平均時間10.9時間で、着実な結果が出せていると思います。

 

・CLINKS社の所定外労働平均時間、有給休暇消化率について

出典:厚生労働省「就労条件総合調査の概況」
(左)参照:月間実労働時間及び出勤日数
https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyr_d.html

(右)参照:労働者1人平均年次有給休暇の取得状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23c.html

*テレワーク・デイズは、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府と東京都および関係団体と連携し、働き方改革を推進する国民運動です。

 

—残業時間削減の取り組みで効果が高い施策は何だと思いますか。

目に見えて効果があったと思うことは、メンバーの時間管理をする管理職から直接残業時間の多い社員に声掛けを行うことだと思います。管理職のミーティングでは、残業時間の多い社員の情報を部署内共有しながら、残業時間を抑えるための意識付けを行っています。当社では管理職からの残業時間削減に関するメンバーへの発信が年々強くなっています。

 

テレワーク導入に立ちふさがるのは先入観や理解不足

—貴社は「テレワーク/在宅勤務」を導入したい企業向けにサービスも提供されていますが、「在宅勤務制度がなかなか進まない理由」は何だと思いますか。

当社は自社サービスの「OfficeLessStyle」の営業を通し、これから在宅勤務を導入したい企業様とお話をする機会があるのですが、セキュリティ対策への不安から、テレワーク導入に二の足を踏む企業が多いことが理由にあると思います。

 

テレワークにおける情報漏洩などのリスクや懸念からなかなかテレワーク導入に踏み切れないと言う企業様のお話をよく耳にします。リスク管理意識はとても重要なことですが、テレワークに対し否定的な強い先入観がある場合は、考え方を変えることはとても難しいことだと思います。そうした場合でも何度も足を運んで、長期的にご案内しております。

 

またセキュアにテレワークを導入できるICT環境については、従来のリモートデスクトップのツール利用の場合、自宅からリモートで作業する際に集計サーバを介しオフィス側の端末にリモートするのですが、自宅のパソコンにファイルを保存されることが一番の流出のきっかけとなることから、中継サーバを介して保存できないような制限をかけるサービス提供を行いセキュリティの面での対策を行っていただきます。

 

働き方改革はトップダウンですすめること

—これから働き方改革をはじめる企業に向けてエールをお願いいたします。

社内の働き方改革は急務と位置づけ社内の横断的な体制を敷き、管理職の意識改革から始め全社を巻き込んで推進していくことが重要と感じます。

また、トップダウンで推進力を持って物事を進めていくことにプラスして、ICTを活用した生産性の向上を並行して行っていくことが、成功のカギだと思います。

—今後の展開について教えてください。

まずは、当社の在宅派遣サービスの成長と普及にあわせて在宅専門社員の採用を加速化させることです。
在宅専門社員の反響がよく、半期で500名の経験者の方からの応募がありましたが、雇用を始めて1年目ということもあり、まずは首都圏、支社のある大阪にお住まいの人しか採用できていない状況にあります。

 

応募は全国沖縄から北海道まで全国各地からきているのに採用が行えていません。管理体制を整備し、採用エリアを徐々に広げていくことにより全国どこの場所でも採用できるような体制作りと、海外も視野に入れ採用の幅を広げていけるように取り組んでいきたいと思います。

 

在宅専門社員を雇用する企業はまだ少なく、多くの人から注目をいただいています。当社は「テレワークを通じて働きたくても働けない方の雇用を促進すること」、「弊社のOfficeLessStyleを通して日本におけるテレワークの拡大を推進すること」をすすめていきたいです。

 

 

■会社データ

 

https://www.clinks.jp/
社名:CLINKS株式会社(クリンクス)
所在地:東京都中央区八丁堀1-10-7 TMG八丁堀ビル10F
設立:2002年12月19日
従業員数:604名(2018年4月1日現在)
資本金:1000万円
代表取締役:河原 浩介
業種:IT
事業内容:
●ネットワーク・サーバの設計・構築・運用・管理
●通信・インフラサービス
●システム・スマートフォンアプリ開発
●IT技術研修『b-LANES』展開
●ITコスト削減サービス『コス削』展開
●社内SNS『モチベーションブログ』展開
●ITエンジニア在宅派遣サービス『OfficeLessStyle

※上記内容はインタビュー時点の情報に基づき作成されています。
※その他、記載されている社名、製品名またはサービス名は各社の商標または登録商標です。