企業に関連する重要な法改正をチェック【2025年4月以降】
2025年4月以降に施行される企業に関する法改正のうち、いくつかピックアップしてご紹介します。
目次
【税制関係】
税制改正では、物価の上昇や少子高齢化などの問題により税負担が増大している現状の問題解決を目指し、個人・企業ともに税負担の見直しが図られています。
個人向けでは、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応、いわゆる「103万円の壁」への対応策として、基礎控除や給与所得控除の引き上げが実施されます。基礎控除と給与所得控除の最低保障額がそれぞれ48万円から58万円、55万円から65万円に引き上げられます。従来の「103万円の壁」が「123万円の壁」へと引き上げられることになります。また、老後に向けた資産形成の支援(案)として、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の拠出限度額が引き上げられます。
企業向けとしては、中小企業者等の法人税軽減税率の特例延長や、中小企業経営強化税制の拡充として「売上高100億円を目指す中小企業」を支援するため、投資を行った際の特別償却や税額控除の制度が強化されます。
財務省「令和7年度税制改正」
【労務関係】
労務の法改正では、労働環境の確保、多様な人材の雇用の推進、人材育成・能力開発、に関するものがあります。
◆障がい者の雇用の促進等に関する法律施行規則
障害者雇用促進法では、一定の従業員数を上回る企業においては、法定雇用率(原則2.5%)に基づいた人数の障がい者を雇用することが義務付けられています。しかし、特定の業種における企業は、業務の性質になじまないなどの理由から雇用義務の軽減措置が設けられていて、「除外率制度」といいます。例えば採石業や水運業は10%、建設業や鉄鋼業は20%、小学校や道路旅客運送業は55%のように、業種に応じて異なる割合となっています。
2025年4月1日施行の改正内容は以下になります。
- 設定業種の除外率はそれぞれ10%ずつ引下げ
- 既に除外率10%以下の業種については制度の対象外へ
- 「警備業・介護老人保健施設・介護医療院」の3業種が新たに除外設定業種へ
※経過措置は2026年6月30日までの間となります。
厚生労働省「障害者雇用対策」
厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
◆雇用保険法等
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化、共働き・共育ての推進などが目的で、雇用保険法や子ども・子育て支援法の改正により、雇用保険制度の見直しがなされました。例えば、自己都合退職者が自ら教育訓練等を受けた場合の給付制限解除や就業促進手当の見直し(就業手当の廃止および就業促進定着手当の給付上限引下げ)などがあります。
全体的な雇用保険制度の見直しを図り、現在の状況にあわせた適用範囲の拡大や教育訓練の拡充を行うのが狙いとされています。
さらに、2025年10月1日には、教育訓練休暇給付金が創設されます。「教育訓練休暇給付金」とは、教育訓練を受けるために一時的に仕事から離れる場合に、その期間中の生活費を支援する制度のことです。具体的には、5年以上の被保険者期間がある労働者が、自ら教育訓練に専念するために仕事から離れる場合において、基本手当に相当する金額が支給されるという仕組みになります。
厚生労働省「雇用」
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
◆高年齢者雇用安定法の経過措置終了、65歳までの雇用確保の完全適用
高年齢者雇用安定法にもとづいて、事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合、原則希望者全員を対象にすることがもとめられます。ただ、2013年3月31日までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主は、経過措置として対象者の限定が例外的に認められていました。この経過措置が2025年3月31日で終了し、4月1日以降は、希望者全員を継続雇用制度の対象とするなどの対応が必要になりました。
厚生労働省「高年齢者雇用・就業対策」
厚生労働省「高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了リーフレット」
【子育て・介護関係の法改正】
2025年の法改正では、子育てや介護に関するルールにも一部の変更が行われます。
◆育児・介護休業法
2024年5月に育児介護休業法の改正法が成立し、2025年4月1日と2025年10月1日にその一部が施行されます。
「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」や「名称が『子の看護休暇』から、『子の看護等休暇』に変更(学級閉鎖や入学式・卒園式も休暇の対象となる)」、「育児休業取得状況の公表義務対象の拡大(従業員数1,000人超企業から従業員数300人超の企業へ)」、「介護に直面した従業員に対する個別の制度周知・意向確認、雇用環境整備の実施の義務化」、「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化」などが主な改正内容になります。
厚生労働省「育児・介護休業法について」
厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要」
◆子ども・子育て支援法
2024年に「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が成立し、2025年には「妊娠期の負担軽減を目的とした妊婦のための支援給付の創設」や「妊婦等包括支援事業の創設」、「産後ケア事業の提供体制の整備(地域子ども・子育て支援事業に位置付け)」などの改正が実施されます。
厚生労働省「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」
【その他】
◆建築基準法・建築物省エネ法改正(2025年4月1日施行)
建築物分野における省エネ対策の加速、木材利用の促進などを目的として、建築基準法・建築物省エネ法改正により4号特例の見直し・縮小、構造規制の合理化、省エネ基準への適合義務化などの変更が行われます。
国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料」
◆情報流通プラットフォーム対処法(プロバイダ責任制限法改正)
インターネット上における誹謗中傷被害防止のため、従来のプロバイダ責任制限法が「情報流通プラットフォーム対処法」に改められ、SNS・匿名掲示板などの大規模プラットフォームを運営する事業者に対する新規制が設けられました。
総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」
まとめ
今回は2025年4月以降に施行される法改正について税制関係、子育て・介護関係を中心に紹介しました。
毎年、様々な法改正が行われており、会社の法務担当の方はそのたびに多くの社内規定の変更や業務の見直しが発生し、大変だと思います。また業務上、法改正の影響を受ける部署の方も多いと思いますが、関係する方々は法改正の内容を確認し、必要であれば施行までに対応できるよう準備をしましょう。
※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2025年5月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。
筆者プロフィール

- ビーブレイクシステムズ
- 家電量販店でウィンドウショッピングするのが好きです。
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