新システム導入時のデータ移行や他システム連携時に注意すべきポイント

本記事はEnterpriseZine「IT担当者のための<新>業務の基礎知識」転載記事です。(2017/09/06 06:00掲載)

これまで「現行業務をシステム化する際に注意すべきポイント」として、初めて現行業務をシステム化することになった企業のシステム導入担当者を想定し、注意すべき基本事項を紹介してきました。最終回の今回は「データ移行や他システムとの連携」にスコープを当て、システム化の際に注意すべき基本的なポイントについてご紹介していきます。

 

データ移行や他システムとの連携に対する基本的なポイント

企業には様々なシステムが存在するため、新システム導入時のデータ移行や統合的な業務管理システムとの連携は必須要件となります。

 

最終回である今回は「データ移行や他システムとの連携に対する基本的なポイント」として、以下3つのフェーズに分けご紹介します。

  1. 各種マスタデータの移行・連携時のポイント
  2. プロジェクトに紐づく関連システムとの連携時のポイント
  3. 会計システムとの連携時のポイント

 

各種マスタデータの移行・連携時のポイント

マスタには社員マスタ、役職マスタ、組織マスタ、得意先マスタ、仕入先マスタなど様々なものがあります。

現行業務が統合されたシステムで管理されていない場合、以下のような管理方法が考えられます。

  • マスタ情報をExcelで管理している
  • 個別に存在する各種システムにてそれぞれ管理されており統一されていない

 

マスタ情報の一元管理化を行うためにも、業務の中心となる統合的な業務管理システムの導入を機会に不要なマスタや管理している項目の精査を行い、分散している情報をまとめて新システムへ移行することも検討すべきポイントとなります。

 

もし何らかの理由で個別のシステムにてマスタデータをそれぞれ管理しなければならず、一元管理化が難しい場合は連携についての検討が必要になります。

 

検討内容の1つとして、連携用にマスタ管理番号を共通化する、ということが挙げられます。

管理番号を共通化することができれば、取込側のシステムに共通情報が無いマスタであれば新規登録され、既に存在する場合は取込元のデータへ更新させる、などを見込むことができ、マスタ管理の効率化を図ることができます。

 

次に検討しなければならないのは、組織や役職が変更になった場合のワークフローへの影響です。

連携先のシステムにワークフロー機能があり組織や役職により承認ルートを設定している場合には、マスタデータの連携により自動で承認ルートが変更されるのか、連携の都度手動で設定を変更しなければならないのか、設定変更には費用が発生するのか、などの確認が必要になります。

 

上記の他にも、新組織が設立された場合や組織の分裂があった場合など、連携時にどのような方法で承認ルートを設定するのかも事前に確認しておくべき内容になります。

 

 

プロジェクトに紐づく関連システムとの連携時のポイント

プロジェクト管理システムにて作業実績(工数)を管理しており、勤怠管理システムが別に稼働している場合、勤怠管理システムとの連携を検討する必要があります。

 

理由としては、勤怠管理システムで登録された出退勤情報をプロジェクト管理システムへ連携させ、その情報より作業実績を算出することでその情報の整合性を保つことができるからです。

 

ただし、連携には考慮しなければならないことがあります。それは連携のタイミングです。

夜間の日次バッチ処理にて出退勤情報を連携させる場合、作業実績の登録は連携後になるため、基本的には翌日以降に登録することになります。

 

複数のプロジェクトにアサインされている場合を考慮すると、正確に作業実績を登録するためにもその日中に登録することが望ましいです。

 

勤怠システム側にて作業実績も管理できるシステムの場合では、プロジェクト管理システムへ連携させた際、どのプロジェクトへ紐づける作業実績なのかを示すプロジェクトコードなどの共通情報が必要となるため、どのように双方のシステムへ認識させるかも検討が必要です。

 

上記はプロジェクトに紐づく経費管理をプロジェクト管理システム以外で行っている場合も同様となります。

 

これらが考慮されておらず、月末に各システムで確定したデータにてプロジェクトの収支管理を行うと、月中での予実管理ができず原価管理面での問題を早い段階で発見することができません。

 

どのタイミングでプロジェクトを管理するのか、なども考慮し連携のタイミングを検討することも重要なポイントとなります。

 

会計システムとの連携時のポイント

統合的な業務管理システムを導入していない場合、個別に管理された契約情報や売上情報、費用情報などを経理担当者が集約し、手動で会計システムへ登録していることが多く見受けられます。

 

業務管理システムへ登録された情報をもとに仕訳データを生成・会計システムへ連携することができれば、経理担当者の業務負荷の軽減や締め処理期間の短縮を見込むことができるため、会計システムとの連携に関する検討も重要なポイントになります。

 

会計システムとの連携を検討する際の基本的な確認・検討事項は以下になります。

  • データ連携の際、会計システム側ではどのようなデータであれば取込可能なのか
  • 日毎、週毎、月毎など、どのタイミングで連携を行うのか
  • 得意先、仕入先、勘定科目など業務管理システムと会計システムとで、それぞれ管理している情報の紐づけはどのように行うか
  • 会計システム側で管理されている勘定科目・補助科目の構成に対し、業務管理システム側で生成される仕訳データが対応できるものとなっているのか
  • 会計システム側で各種分析を行っている場合、必要な情報が連携対象データに含まれているか

 

会計システムへのデータ連携は非常に重要な検討事項です。

連携する情報が会計システム側で正しく取り込まれ、適切なタイミングで正確に確認できるよう、慎重に検討していくことが必要となります。

 

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これまで4回にわたり「初めて現行業務をシステム化する際の基本的なポイント」をご紹介してきました。本内容が皆様に参考情報として少しでもお役立ちできれば幸いです。最後までご覧いただきましてありがとうございました。

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