社員の主体性を高めて成果を出すためのモチベーション・マネジメント(考え方編)

モチベーションは、日本語に訳すと動機です。行動を起こす際の意欲のことを指します。ビジネスの世界では、仕事に対するやる気のことを指して使うことが多いですね。

社員が意欲的に働けば、その分事業活動の成果も大きくなります。

社員のモチベーションを維持する、あるいはアップするための取り組みは、経営企画部門、人事部門において非常に重要性の高い施策と言えるでしょう。

 

モチベーションの向上には、大別して2つの方向性があります。

  • 外発的動機づけ
  • 内発的動機づけ

外発的動機づけは、報酬や職場環境等。外部からの刺激によって生じる動機を利用する方法です。

例えば、「この仕事をやれば満足のいく収入が得られる」というのは、自分の外側のものごとから刺激を受けており、外発的動機が働いている状態と言えます。

内発的動機づけは、承認欲求や達成感、興味関心等、自分の内面から生じる動機を利用する方法です。

例えば、ある仕事に対し「この仕事は自分のスキルが磨かれるから面白い」というのは、自分の好奇心が刺激されており、内発的動機が働いている状態と言えます。

モチベーション理論から内発的動機づけの有効性を考える

現代では、外発的動機づけよりも内発的動機づけに対する評価が高まっています。その背景を2つのモチベーション理論から説明したいと思います。

マズローの欲求5段階説

ご存知の方も多いかと思いますが、アメリカの心理学者マズローは、その名の通り、人間の欲求を5段階に分け整理して理論化しました。

下の階層の欲求が満たされると上の階層の欲求を満たそうとする傾向にあると説明しています。

例えば、一番下の生理的欲求は、食べたい、寝たいなど生きていく上で最低限必要な欲求です。

生存に必要な最低限の欲求が満たされると、「安全に暮らしたい」という安全欲求、さらには、「仲間に加わりたい」という社会的欲求を求めるようになります。

自分の外にある事象に対して満足感を得られると、自身の内側の心に向き合い始め、内的な要因に対して欲求を感じるようになります。

内発的/外発的という区分けで言うと、概ね下の社会的欲求から生理的欲求までが外発的動機、自己実現欲求および承認欲求が内発的動機に相当します。

マズローの理論では、外発的動機が満たされると内発的動機が現れると言えるでしょう。

ハーズバーグの動機づけ・衛生理論

アメリカの心理学者ハーズバーグは、仕事に対する満足感と不満足感を感じる要因は、ひとつながりの連続したものではなく、全く別物であると考えました。

実地調査を行った結果、仕事の満足感は達成感や承認、仕事そのものの楽しさ等が要因として挙げられる傾向があることが分りました。このような、成長や自己の発現を求める欲求をもたらす要因を「動機づけ要因」と呼びました。

一方で、仕事の不満足感は会社の方針や監督者との関係、労働条件等の外部環境に関する事柄が要因として挙げられる傾向にあったのです。このような、苦痛を避けようとする欲求をもたらす要因を「衛生要因」と呼びました。

この理論の重要なポイントは、衛生要因をいくら改善しても満足感が増すことはなく、不満足感を減少させる効果しかないということです。仕事の満足感を向上させるには、衛生要因ではなく動機づけ要因の改善を行わなければなりません。

外発的/内発的の区分けで言うと、衛生要因は外発的であり、動機づけ要因は内発的であると言えますね。仕事のモチベーションを高めるには、内発的動機を満たしてあげる必要があります。

内発的動機とモチベーション

2つの理論は、欲求に種類や階層があることを示しています。今回紹介した以外にも様々なモチベーション理論が提唱されていますが、概ね共通する示唆は、欲求はひとつながりのものではなくいくつかの種類にわけられるということです。

また、生存や安全を求める低次の動物的な欲求が満たされると、承認や自己実現といったより高次の欲求を満たしたいと志向するようになると説明するものも多いです。

現代では、ほとんど全ての人が最低限度の生活は保障されており、低次の欲求が満たされている環境にあります。昔と比べ、より精神的な充足を求めたいと考える人が増えています。

そして、その精神的な充足や自己成長といった欲求は内発的動機によって満たすことができます。

外発的動機づけによるモチベーション・マネジメントの限界

外発的動機づけの有効性が落ちてきた

ベストセラーになったモチベーション3.0の著者ダニエル・ピンクは、現代では、外的な報酬や罰による外発的な動機づけの有効性は低下していると述べています。

産業革命が起こり大規模な工場で働く人が経済を支えていた工業社会では、外発的動機づけによるマネジメントが大成功しました。

当時フレデリック・テイラーが提唱し成功をおさめた「科学的管理法」は、「具体的にどのくらいの時間で何をするか」労働者の作業手順を細かく取り決め、指示に従って望ましい行動をとった場合には見返りを与え、望ましい行動を取らなかった場合には罰を与えます。こうして望むどおりの行動をさせるように労働者を統制しました。

ルーチンワークによって成り立っている大規模工場では、労働者自身に創意工夫の余地はなく、あらかじめ決められた手順を効率的にこなすことで生産性が向上します。

このような時代背景もあり、外発的動機づけが大きな効果を発揮しました。

ところが、経済が大きく進展し複雑化した現代では、非ルーチンワークの仕事やクリエイティブで柔軟な発想が要求される仕事が増えています。「これをやれば高い成果が得られる」という正しい道筋、決まりきった方法はなくなりつつあるのです。

外発的動機づけは「決められた手順の遂行を強要する」働きがあり、そのような仕事に対しては成果を下げる要因として働き、有害であると述べています。また、内発的動機づけの方が有用であり、成果に寄与する度合いが高いと説明しています。

外発的動機づけは思考の柔軟性を狭める

カナダの心理学者、サム・グラックスバーグは「インセンティブが課題解決能力にどのように影響を与えるか」を調べる実験をしました。

参加者に、ロウソクと画鋲、マッチを渡されて「テーブルに蝋がこぼれないようにロウソクを壁に取り付けてください」という指示を出します。また、「早く正解にたどり着いたグループには賞金を出す」というインセンティブをあわせて提示しました。

この問題の正解は「画鋲が入れられている箱を使って、箱の上にロウソクを置き、箱ごと壁に画鋲で取り付ける」です。

一見簡単そうに思えますが、「箱は画鋲を入れるためのもの」という固定観念を外し、柔軟な発想ができないと正解できません。

実験の結果はどうだったのでしょうか。

なんとインセンティブを提示したグループの参加者は、報酬なしのグループの参加者と比べ、問題を解決するまで平均で3分半程度遅かったのです。報酬を提示すると逆に成果が下がるという奇妙な結果になってしまいました。

報酬のような外的な動機づけは思考の焦点を狭める働きがあるというのがこの結果のカラクリです。報酬を提示されると、報酬を得るために最短で効率のよい方法を求めようとする気持ちが生まれるのです。

解決の道筋が決まっているのであれば、焦点を絞って最短で行動をしようとする働きを生むこの性質は有効です。しかし、柔軟な発想が問われる課題に対しては悪影響があり、向いていません。

内発的動機づけによるモチベーション・マネジメント

内発的動機づけの構成要素

創造性や柔軟性が求められる仕事においては、外発的動機づけよりも内発的動機づけの方が有用であると言われています。内発的に動機づけられている状態とは、外部環境ではなく活動そのものから得られる面白さのためにそれに取り組んでいる状態のことです。

例えば、趣味のスポーツなど。特に報酬がもらえるわけではありませんが、自分自身が面白い・楽しいと感じて夢中になって取り組む人も多いと思います。

内発的動機はその言葉の通り、人の内部から生まれるものであり、外部から強制し与えるものではありません。あくまでも個々の社員が自ら動機を形作るように仕向けなければなりません。

外発的動機づけと比べた難しさは、外からのコントロールがやりづらいということにあります。

アメリカの心理学者エドワード・デシは、内発的動機づけの要素を3つ挙げています。

  • 有能感
  • 自己決定感
  • 関係性

有能感
取り組みを通じて高い成果を出し、自分の能力の向上や能力自体へ高い評価をしている状態。

自律性
主体的に行動し、自らが判断を行い自分の活動のやり方を自由に決定できること感じられること。

関係性
周囲と良好な関係を築き、共同してものごとの遂行を行える状態であること。

デシは、内発的に動機づけられている状態を獲得するために一番重要なのは自律性であるといいます。

自分が何をやるかを自発的に決めて、行動をコントロールできることが一番大事であり、仕事であれば、社員にある程度の裁量を与えて、業務内容自体や業務のやり方を自分自身に選択させることがポイントだと言えます。

内発的動機づけの基本的方針として、まずは自律性が生まれる風土や仕組みを作ることを意識すると良いでしょう。

外発的動機づけの活用も必要である

一貫して内発的動機づけのメリットに着目してきましたが、外発的動機づけがどのような場面でも有害であるというわけではありません。

適正な給与が払われていないと感じると、誰しもモチベーションは下がります。低次の欲求は当然満たされている必要があるのです。

また、内発的動機づけには効果が出づらいというデメリットがあります。一方で、外発的動機づけには即効性があります。

さらに、外発的動機が次第に内発的動機に変わっていくということもあり得ます。

例えば、最初は業務命令で新しい分野の仕事をやらされていたのが、自分で調べているうちに興味が湧いてきて、楽しさを見出しやりがいを感じるようになった。

そんな経験をされたことがある人も多いのではないでしょうか。

外発的動機づけと内発的動機づけのメリット・デメリットを把握した上で、それらをバランス良く活用していく必要があります。

 

最後に

今回は、社員の成果を高めるためのモチベーション・マネジメントとして、内発的動機づけが有効であることを紹介しました。

  • 動機づけの方法は、大きく分けて外発的動機づけと内発的動機づけの2種類があります。現代の多くの仕事においては、内発的動機づけの方が有効であるといえます。
  • 内発的動機づけが作用する職場を作るには、社員の自律性を高めるような社風作りや業務設計が肝要です。
  • 内発的動機づけと外発的動機づけにはそれぞれメリット・デメリットがあり、それらを把握した上で、適切に活用することが大事です。