初めてでもわかりやすいIT導入補助金2021
IT導入補助金(正式名:サービス等生産性向上IT導入支援事業)は2017年からはじまった制度です。
ビーブレイクシステムズはIT導入支援事業者として登録されていますので、IT導入補助金を利用したシステム導入をこれまで何度もお手伝いしてきました。回を重ねることにいろいろと改善され、以前に比べ最近はスムーズに各種申請登録を行えるようになったと感じています。
新規にシステム導入をするための支援という性質上、ITツールを導入するユーザーの方からすると毎年利用するものではなく、多くの方にとっては初めてのIT導入補助金利用となると思います。本記事では、IT導入補助金について初めて聞くという方にもわかりやすいように、IT導入補助金2021の概要を、実際に申請する際のポイントを交えて説明をしていきます。
目次
IT導入補助金の概要
事業の目的について
IT導入補助金2021のホームページにはこのように記載されています。
通常枠(A・B類型)
「IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のみなさまが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、みなさまの業務効率化・売上アップをサポートするものです。
自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図っていただくことを目的としています。」
低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)
「低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)は、新型コロナウイルス感染症の流⾏が継続している中で、ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換に向けて、労働生産性の向上とともに感染リスクに繋がる業務上での対人接触の機会を低減するような業務形態の非対面化に取り組む中⼩企業・小規模事業者等に対して、通常枠(A・B類型)よりも補助率を引き上げて優先的に支援するものです。」
[サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト(以下、「IT導入補助金サイト」)|事業概要(https://www.it-hojo.jp/overview/)より]
A・B・C・D類型の違いについては後述します。
申請・手続きの概要
事務局、ITベンダー、中小企業・小規模事業者、それぞれにおける手続きがあります。交付申請や事業実績報告のようにITベンダーと中小企業・小規模事業者が共同で進めていくところもあります。
IT導入補助金を受けられる企業(補助事業者)について
補助を受ける事業者のことを「補助事業者」と呼び、条件は以下のようになっています。
「中小企業あるいは小規模事業者であること」
(業種ごとに資本金、あるいは従業員数が下記の数値以内であること)
「その他、親会社が大企業でないこと等」(具体的には下記にあてはまらない企業であること)
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
- 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額を①~③に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・小規模事業者等
- 1~3に該当する中小企業・小規模事業者等の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業・小規模事業者等
- 確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等
[IT導入補助金2021 公募要領 通常枠(A・B類型)版( https://www.it-hojo.jp/r02/doc/pdf/r2_application_guidelines.pdf ) P10より]
ほかにもいくつか申請の対象外になる事業者があります。そちらについては公募要領をご確認ください。
IT導入支援事業者について
補助事業を申請者とともに実施する、補助事業を実施するうえでの共同事業者(=パートナー)を「IT導入支援事業者」と呼び、ITベンダー等がこれにあたります。
中小企業・小規模事業者のみなさまの生産性向上のために、ITツールの提案・導入及び事業計画の策定支援をはじめとし、各種申請等の手続きのサポートを行います。
IT導入支援事業者の役割は、以下になります。
中小企業・小規模事業者等の生産性の向上に資するITツールを事務局に登録
補助事業を進めようとする申請者に対し、適切なITツールの提案・導入・アフターサポートを実施
補助事業に関する申請者からのお問い合わせ・疑問等について、事務局に代わって対応を行い、円滑な事業推進のサポートを実施
申請者による補助金不正受給等の不正行為を防止し、適切な補助金交付が為されるよう、補助事業の管理・監督を実施
導入されるITツールにより、申請者にとって生産性の向上効果を最大限引き出すことを支援
[IT導入補助金サイト|IT導入支援事業者の役割・要件(https://www.it-hojo.jp/vendor/requirement.html)より]
補助事業者、IT導入支援事業者、IT補助金事務局の関係図
それぞれの関係は以下の図のようになっています。
申請する類型(通常枠AB類型、低感染リスク型ビジネス枠CD類型)の比較
IT導入補助金2021には、前述した通り、通常枠のほか、低感染症リスク型ビジネス枠という枠があります。導入したいITツールの金額・範囲・機能・条件により、申請可能な類型は決まってきます。以下の図にまとめました。
例えばB類型で申請するためには、導入するITツールが対応しているプロセスが4つ以上必要です。CD類型はコロナ対策の「低感染リスク型ビジネス枠」のため、非対面化が必須となりますし、その中でもC類型は連携型ソフトウェアが必須となります。尚、申請可能な類型より補助額の低い類型で申請することも可能です。
プロセスとは
プロセスとは、ITツールがどのような業務に対応しているか、以下3種類に分類したものです。
業種共通業務プロセス 5種類
「顧客対応・販売支援」(SFAやCRM)、「会計・財務・経営」(財務経営システム)など
業種特化型業務プロセス 20種類
不動産業の建物管理、宿泊業の部屋割り管理など
汎用プロセス 1種類
OCR、WEB会議システムなど
「業務プロセス」とは、ソフトウェアが保有する機能を導入することによって、特定の業務の労働生産性が向上するまたは効率化される工程のことを指します。「汎用プロセス」とは、業種・業務に限定されず、業務プロセスと一緒に導入することで更に労働生産性を向上させるものを指します。
非対面化ツールとは
事業所以外の遠隔地から業務を行うテレワーク環境の整備をはじめ、対人接触の機会を低減するよう非対面又は遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルへの転換(業務形態の非対面化)に資する、労働生産性の向上を目的としたITツールのことをいいます。
例えば、対人接触無しで申請・承認といった業務が進められるワークフローシステムは、非対面化ツールとなります。
[交付申請の手引き(https://www.it-hojo.jp/r02/doc/pdf/r2_application_manual.pdf) P7より]
連携型ソフトウェアとは
連携型ソフトウェアとは、複数プロセス間での情報共有や連携を行うことを可能とする連携型ツールの総称です。今年から適用された項目であり、C類型の申請に必要となります。単一ツールを組み合わせて、連携型ソフトウェアとして登録することが可能です。登録はIT導入支援事業者によって行われます。異なるプロセス間で連携可能であれば、導入するツール数について単一か複数かは問われません。交付申請時に連携型ソフトウェアを選択し、C類型の要件を満たす場合は、その連携型ソフトウェアに加え、別途、他の連携型ソフトウェアを含む非対面化ツールを併せて申請することが可能です。
賃上げ目標とは
B類型、C-2類型で必須となっている賃上げ目標とは、具体的には以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し従業員に表明することになります。
- 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加すること)
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
[交付申請の手引き( https://www.it-hojo.jp/r02/doc/pdf/r2_application_manual.pdf ) P9より]
未達であった場合、補助金の返還が発生する場合があります。なお、「給与支払総額」なので、社員が増加している成長企業では容易な目標となりえます。事務局に提出するだけでなく、「従業員への表明」が必要となります。
補助対象となるITツールの分類
補助対象経費は、IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用とします。
補助の対象となるITツールとは、大分類Ⅰ「ソフトウェア」、大分類Ⅱ「オプション」、大分類Ⅲ「役務」の3ついずれかに分類されます。加えて、各分類内は下記図のとおりカテゴライズされます。
交付申請を行う際に必要となるITツールの要件
補助事業者は、IT導入支援事業者により事務局に対して事前に登録されたITツールの中から導入するITツールを選択し交付申請を行います。
その際、選択したITツールは、大分類中の大分類Ⅰ「ソフトウェア」のカテゴリー1・2に設定されたプロセス“共P-01~汎P-07”を必ず2種類以上含んでいる必要があります。
[IT導入補助金2021 公募要領 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)版(https://www.it-hojo.jp/r02/doc/pdf/r2_application_guidelines_tokubetsuwaku.pdf) P16より]
ツールの組み合わせと申請類型例(ビーブレイクシステムズ製品の場合)
どのようなツールを組み合わせるとどの類型で申請できるか、ビーブレイクシステムズが販売しているクラウドERP「MA-EYES」のツール登録の場合を見てみます。
「MA-EYES」は機能群(モジュール)ごとに登録されています(MA-EYES V SaaS 販売管理/MA-EYES V SaaS 経理/MA-EYES V SaaS SFA、等)。仮に、単体ソフトウェア4つで4プロセス、クラウド対応、非対面化対応、機能拡張ツール2つで200万円(年間)の場合、A類型もしくはD類型での申請が考えられます。単体ソフトウェアを組み合わせて連携型ソフトウェアとして登録されている場合は、連携型ソフトウェアを申請することでC類型での申請が考えられます。
このように、金額やツールの組み合わせによって申請できる類型が変わるので、事前にベンダーと相談し、よく検討して決めていくとよいでしょう。
参考までに、公募要領に載っている類型判別チャートを記載します。
現時点で公表されている実施スケジュール(2021/8/5更新)
A~D類型共通
交付申請期間 2021年4月7日(水)受付開始~終了時期は後日案内予定
事業実施期間 交付決定後~6ヶ月間程度※詳細日時は別途指定
1次〆切分(終了)
締切日 5月14日(金)17:00
交付決定日 6月15日(火)
2次〆切分
締切日 7月30日(金)17:00
交付決定日 8月31日(火)
3次〆切分 (追記)
締切日 9月30日(木)
交付決定日 10月29日(金)
4次〆切分 (追記)
締切日 11月17日(木)
交付決定日 12月15日(金)(予定)
過去に10次まで募集していたこともあるので、事務局のホームページでスケジュールを確認してください。
https://www.it-hojo.jp/schedule/
補助事業者が申請に必要な作業
- gBizID取得(行政WEBサービス用アカウント)
- SECURITY ACTION宣言
- 添付書類準備(履歴事項全部証明書、納税証明書)
- 労働生産性計画策定
- 賃上げ計画策定、従業員への表明(必要に応じて)
- ベンダーへのITツール個別登録依頼(必要に応じて)
情報が揃っていれば申請内容の登録自体は1,2日に完了しますが、gBizIDの取得に3週間以上かかるため、申請する可能性があればまずgBizIDを取得しておくことをお勧めします。
[交付申請の手引き(https://www.it-hojo.jp/r02/doc/pdf/r2_application_manual.pdf) より]
まとめ
最近の状況を見ていると、IT導入補助金を利用したいという中小企業・小規模事業者は増加傾向にあるようです。
初年度は事務局に電話をかけてもなかなかつながらないこともありましたが、現在そのようなことは解消され、制度として定着しつつあるように感じます。
IT補助金の予算は、2017年4月の当初予算は約100億円、2018年には約500億円、2021年は、複数年に及ぶ中小企業生産性革命推進事業の総額で3600億円+特別枠2300億円(「IT導入補助金」「ものづくり補助金」「持続化補助金」の3事業)と、予算は年を追う毎に増額され、申請あたりの補助上限も年々向上しています。
現在(執筆時2021年5月)3次募集まで予定されていて、今後追加募集がある可能性もありますが、定められた予算の範囲内での補助金制度なので予算を使い切ったら終了になります。
IT化・デジタル化の推進は国としても大きな課題となっていますので、ITツールの導入を検討されているようでしたら、補助金が使えるかどうか、まずはベンダーに問い合わせてみてはいかがでしょうか。
※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2021年5月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。
※本記事内の実施スケジュールは適宜変更、追加していますが、必ず最新情報をご確認ください。
筆者プロフィール
- 家電量販店でウィンドウショッピングするのが好きです。