始める!プロジェクト原価管理(7) 生産性向上につながる!プロジェクト原価管理のシステム化
生産性とはアウトプット/インプットで定義される指標です。
分母と分子に当てはめる対象の違いによって複数の指標が存在していますが、本記事では一番代表的な労働生産性という指標を用いて、プロジェクト原価管理業務のシステム化と生産性向上の関係について考察したいと思います。
労働生産性=生産量/労働投入量 と定義されます。
システム化は分母(労働投入量)の削減を通じて労働生産性の向上に貢献します。
目次
システム化のメリットが活きる条件
システム化するからといって、どんな場面でも十分な生産性向上がもたらされるという訳ではありません。場合によっては、システム化しない方が生産性が高いケース、システム投資額に見合う効果が出ないケースもありえます。
業務の現状を鑑みて適切な判断をしましょう。プロジェクト原価管理のように集計作業の負荷が高い業務については、システム化による生産性向上のメリットが発揮できるかどうかを判断するポイントとして以下を考えました。
一般的に、Excelよりもシステムの方が、入力項目が増える、動作が重くなる、エラー制御がかかる等の理由で入力者の作業負荷が重くなる傾向にあります。一方、次節以降でご紹介する通り、Excelよりもシステムの方が、集計者の作業負荷は軽くなる傾向にあります。
業務量が少ないうちは、集計の手間はそれほどかかりません。この段階では、もともとの集計者の負担が大きくないため、システム化してもそれほど大きく作業負担を軽減できません。それよりも集計者の負担軽減を諦めて入力者の負担を軽くすることに注力した方が業務全体としての作業量を抑えられます。
したがって、生産性向上という観点では、業務量が少ないうちはExcelでの業務運用の方が良いでしょう。
一方、業務量が一定規模を越えると、データが増えるにつれて集計者の負担がどんどん増していきます。すると、システム化によって見込める集計者負担の軽減量が大きくなります。
業務量が多くなってくると、システム化での業務運用の方が良いでしょう。また、業務量が非常に多くなるとそもそもExcelが計算負荷に耐えられなくなります。そのような状況では、システム化は必須です。
以上のことを念頭に置いた上で、次節でプロジェクト原価管理のシステム化でなぜ生産性が向上するのか解説していきたいと思います。
システム化による生産性向上3つの理由
集計効率向上
まず、システム化することによって、Excel運用の場合と比べてデータの集計効率が大きく向上します。
プロジェクト原価管理をExcelで運用しているケースを考えてみましょう。プロジェクト型事業では、主な原価は人件費です。人件費を計算するためには、社員の作業工数を把握する必要があります。
社員は、個人用のExcelファイルに日々のプロジェクト毎の工数を入力します。集計者は、一定のタイミングで工数が入力されたファイルを集めて、一つのファイルや一シートにデータをコピーもしくは転記します。
原価計算はExcelの関数やマクロを利用して自動化できますが、上記のようなデータを集計する作業は人力で行う必要があり手間がかかります。
システム化すると、入力されたデータはデータベースに即時に登録されます。Excel運用のようにデータを一件一件あちこちから集める手間がかかりません。
原価計算に必要なデータが複数のシステムに分かれて登録されるケース(工数管理、購買管理システム等)も考えられますが、それぞれのデータは個別のシステムより工数、外注費等の費目毎にまとめて入手できます。かかる手間はExcelのようにデータを一つ一つ集める手間と比べると微々たるものです。
また、Excelの場合、データ量が膨大になるとファイルへの負荷が高くなり、計算処理が遅くなります。 データベースの場合、サーバスペックにも依存しますが数百万件のデータ処理も可能です。データ量が多い場合、システム化によって処理速度を大きく向上できます。
入力の強制力の担保
Excelの場合、「このセルに情報を入力しないと保存できない」という入力統制が効きません。そのため、必要な情報に抜け漏れが生じるリスクがあります。
情報に抜け漏れがあった場合、必要な情報を揃えるために、入力を促すよう本人に通知する手間がかかりますし、そもそも抜け漏れをチェックするのに手間がかかります。
一方、システムの場合、特定の情報は必ず入力しないと保存、申請できないという統制が可能です。計算に必要な情報が揃っている状態が担保されるため、集計者の確認や通知の手間を削減できます。
正確性向上
Excel運用の場合、入力〜集計の各ステップに人が介在する作業が多々あります。
前述したようにデータの入力に漏れが発生するリスクがありますし、その他、セルの関数を消してしまう、ありえない数値を登録してしまうなどの入力ミス、集計時のデータ転記ミス、ファイルの改ざん等によってデータが不正確になってしまうリスクがあります。
データの正確性を担保するためには、上記のようなミスのチェックを行う必要があります。チェックするためにはデータを細かく確認する必要がありますが、これは大きな負担です。データの正確性が担保されれば、煩雑なミスチェック作業の負荷を軽減することができます。
システム運用の場合もミスチェックの必要はありますが、入力項目を必須化する、エラー制御をかける、適切な権限制御を行う 等により、Excel運用と比べてデータの正確性を高く保つことができます。
これにより、正確性担保のためのチェック作業を軽減することができます。
まとめ
データの集計が大きなウエイトを占める業務では、システム化することで、集計作業の軽減を大きく推進することができます。集計作業を削減することにより、労働生産性の向上に繋がります。
ポイントは入力の負担ではなく、集計の負担を減らすことができるという点です。一般的には入力の負担は増えます。生産性向上という観点でいえば、業務量が多くなってきてシステム化によって見込める集計負荷の削減量が入力負荷の増加量を十分上回ることが見込める段階で導入の判断を行うべきと思います。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!
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