工数の削減でムダのない開発を。質を落とさずプロセスを円滑化させるポイント
プロジェクトを開始した当初は工数を見積もって納期までに仕事を終わらせるように計画しているのに、なぜか納期前に仕事がギリギリになってしまうということはありませんか?また、もっと工数を減らしたくても、仕事の質は落としたくないと悩む管理職も多いと思います。
今回は、工数を削減するための有効な方法やプロセスを円滑化するためのポイントについてご紹介します。
目次
工数削減によって得られる効果
仕事の工数を削減することで、どのような効果が得られるのかを見ていきましょう。
生産性の向上
工数削減の効果としてまず挙げられるのは、生産性の向上です。
企業経営をしていくうえで、生産性アップは最も重要な課題の一つです。作業の無駄を減らして工数を削減することで、少ない人員で高い生産性を実現することができます。生産性が上がれば人件費などのコストを削減し、売上アップにもつながります。
働き方の改善
工数の削減は、働き方の改善にも効果的です。
工数を削減するためには、冗長な作業や優先順位の低い仕事などの必要性を見直し、不要と判断できれば無駄をカットします。また、手作業の部分をツール化する、社内の配置を見直して動線を改善したり資料を見える化したりして仕事しやすくするなどといった手法もあります。
これにより、仕事の負担が減り、残業の削減や精神的負担の軽減につながります。工数の削減は、ビジネスパーソンの働き方改革において大きな効果をもたらすのです。
働き方改革が進めばその相乗効果により、仕事の生産性もますます上がるでしょう。さらに、工数削減で余裕のできた時間は仕事の知識や資格の習得などに充てることが可能となり、職場全体のスキルレベルが上がるなどの効果も期待できます。
工数削減で意識したいポイント
工数削減に取り組む際に、ただやみくもに工数削減に取り掛かっても良い結果は得られないでしょう。なぜなら、安易な工数削減は、作業の混乱や品質の低下を招くおそれがあるからです。
ここでは、作業の質を下げずに工数を削減するためのポイントについて解説します。
現状のプロセスを細部まで把握する
まずは現状の仕事のプロセスを細部まで把握しましょう。そうしなければ、どの作業が無駄でどの作業が必要なのかがわからず、作業を削減することができません。
例えば、ITシステム開発の現場で、設計書作成作業の工数を削減するとします。設計書作成工程は、インプットとなる要件定義書の読み込み、設計書の構成の作成、有識者によるチェック・修正、設計書作成、有識者によるチェック・修正の繰り返しという作業の流れになります。そして、作業の棚卸しをしたら、どのような作業がどんな手法で行われているのか、担当の人員のスキルはどれくらいかなど内容を細かく把握します。そのような細かい内容を洗い出すことで、さまざまな問題点が浮かび上がってくるでしょう。
それぞれの作業の問題が判明したら、対応を検討します。上記の設計工程の例だと、最初の単純な転記作業をツール化する、設計書を作成するルールや記述規約を取りまとめるなどの対応が必要という結論に至るでしょう。
工数の削減を行う際には、必ずしも作業をなくす方向の対応だけを行うわけではありません。新たな作業を設けることで、結果的に工数削減につながることもあるのです。
人材と作業範囲を確定する
工数を削減したい業務の現状把握と問題の確認ができたら、工数削減を担当する人材と作業範囲を確定します。
工数を削減するという作業も、仕事の一つです。「何でもかんでもできる限り削減しろ、でも人員はそんなには割けない」といった状況では、工数削減作業自体が働き方改革に反します。工数削減対応についても、しっかりと人員と作業範囲を確定して計画を立てる必要があります。また、作業範囲をできるだけ狭くして、最も大きい効果が得られる範囲はどこなのかを考える必要もあるでしょう。
例えば、上記の設計工程作業改善の例の場合、ツール化に対応できる人材と作業ルールや作業フローの改善のみを対象にした人材に分けるなど、適した人材に役割を振り分けていくこととなります。
また、改善対象をある程度絞っても十分効果が期待できるならば、少ない対応で最大限の効果が得られるでしょう。
チーム全体の連携を強める情報共有・伝達体制を構築する
チーム全体の作業を改善する際には、チーム全体の連携と協力が不可欠です。なぜ作業を改善するのか、工数を削減することで得られるメリットは何かなどを事前にチーム内で共有しましょう。そして、作業を変更する際にいつからどのように変更するのか、問題があれば誰に問い合わせれば良いのかなど、伝達体制を整える必要もあります。
初期の作業計画に注力する
チーム全体が関わる仕事を大きく変える際には混乱が伴いますから、初期の計画が最も重要です。最初は小さい範囲で実施する、スケジュールを多めに取る、いつでも元に戻せるようにするなど、初期の計画に注力して取り組みましょう。
単純・繰り返しプロセスを自動化する
工数削減のために最も効果が大きいのが、単純な繰り返しプロセスを自動化するということです。上記の設計工程改善の例の場合、インプット資料を設計書として転記する作業が単純な繰り返しプロセスになります。すでに行っている作業の棚卸しと洗い出しから、自動化できるプロセスはどこかを考える必要があるのです。
開発とテストを分離する
システム開発において開発後のテストは非常に重要なものですが、最も工数に無駄が生じやすい工程でもあります。そこで、開発とテストの工程を分離して担当も分けることで、効率良く工程を進めることができます。
例えば、要件定義工程が終わったらテスト担当者に要件定義書を渡し、すぐにテストケースの作成を始めてもらいます。
そうすれば、設計・製造・システムテストが終わった段階で無駄なくすぐにテストに入ることができます。設計段階でも同様です。設計書を担当者に渡してテストケースの作成を始めてもらい、製造完了後にすぐにテストを開始できます。このように、開発とテストを分離することで、抜本的に工数を削減することができるでしょう。
「ECRSの原則」で各プロセス内のスリム化を図る
工数削減に対応する際には、ECRS(イクルス)の原則を適用すると良いでしょう。これは、業務効率化のフレームワークと呼ばれ、以下の頭文字を組み合わせてできた言葉です。
- 「Eliminate」→無駄な作業を捨てる
- 「Combine」→似たような仕事を結合し、違う仕事は分離する
- 「Rearrange」→作業フローを変え、あるべきフローに入れ替える
- 「Simplify」→無駄をそぎ落とし簡素化する
現状の作業にこの原則を当てはめれば、工数削減が進むでしょう。あなたの職場の作業にも、この原則が当てはめられないか考えてみてください。
まとめ
長い間同じやり方で仕事を進めていると、時代の流れや人の考え方の変化により現状から乖離しがちです。仕事を見直さず何も対処を打たなければ仕事は増え続け、生産性は落ちる一方です。そうならないためにも、工数削減のフレームワークなども用いながら、仕事のやり方を見直し、無駄をなくしていく必要があるでしょう。多くの検証と洗い出し、そして計画や人材配置を行ったうえで、適切な工数削減を行い、生産性アップや働き方改善につなげていきましょう。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!