【インタビュー】「どこまで本気で取り組んでいくか!!」組織が一体となり働き方改革を実現
オエノングループは、持株会社であるオエノンホールディングス株式会社を中心に、酒類事業、加工用澱粉事業、酵素医薬品事業、不動産事業などを展開する11社で構成されています。コア事業である酒類事業は、合同酒精株式会社のしそ焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」をはじめとする焼酎、清酒を中心に、チューハイ、ワイン、製菓用洋酒など幅広く取り扱っています。
本日は、オエノンホールディングス株式会社 経営戦略企画室 人事担当マネージャー 和泉 亨様にお話を伺いました。
目次
経営方針に位置づけワーク・ライフ・バランス推進を図る
—働き方改革の取り組みを始めた目的や背景を教えてください。
10年前の2008年にオエノングループ経営方針の1つにワーク・ライフ・バランス推進を位置づけ、会社の方針として積極的に取り組むことになりました。
長時間労働の抑制などの時代背景もあり、仕事と生活に潤いが持てる働き方や生き方を実現し、会社と社員がともに成長できる労働環境を整えるために、業務の見直しをすすめ組織全体の業務効率化や生産性の向上を図っています。
経営職の意識や行動を改革するための目標設定
—取り組み内容について教えてください。
部署を統括する事業所長、部長等のライン経営職の業績目標管理にワーク・ライフ・バランス推進の項目を設け、必ず目標設定するよう要請しています。経営職は業績達成に向けた取り組み同様、ワーク・ライフ・バランスに関する目標についても昨年度の実績を踏まえて、改善が必要とされる項目を自ら設定しマネジメントしています。
具体的には「年次有給休暇の取得促進」、「振替休日の完全取得」、「時間外労働の削減」のうち2項目を選択し、ワーク・ライフ・バランスの実現に繋がる組織全体の意識改革や良好な職場環境づくりを進めています。
また、本年からは「男性の育児休職取得促進」の項目も新たに加え、両立支援についての意識醸成に取り組んでいます。
交替勤務にも働き方改革
—働き方改革への体制づくりはどのように行ったのですか。
当社は職種に限らずワーク・ライフ・バランスの実現を推し進めています。
酒類製造には発酵をともなう製造工程があるため、工場や生産部門では「日勤業務」に加え
「夜勤業務」があります。働き方改革を進めていく上で、それぞれの立場でどのようにして業務改革を進めていくべきなのか考えることが重要です。
年次有給休暇の取得促進に向け「仕事を人に任せられる体制」の整備
業務を特定の社員に集中させると、担当者不在時に業務が滞ったり、トラブルへの対応が遅れたりするため、結局はなかなか休みを取ることができません。
そのため事務・営業部門では主担当・副担当によるフォロー体制、生産部門では「多能工化(マルチスキル)」など担当業務のローテーションにより、社員ひとりひとりの業務領域拡大と情報共有を促進し「仕事を人に任せられる体制」を整備しています。
「多能工化」は、1人で複数の異なる作業や工程を遂行できる技術を習得させることで部門内のバックアップ体制の強化となり、主担当が休みのときに副担当が主担当に代わり業務を遂行できるようになり、年次有給休暇や連続休暇を取得しやすくなりました。
また、人員不足の際に、担当や事業所を超えて人手を融通することができる助勤制度を設けています。たとえば、一時的に繁忙を極める工場があった場合に、比較的余裕のある工場から人手を供給することで効率的な生産体制を整えることができます。
この仕組みを活用し、特定事業所での業務繁忙時や連続休暇取得時などによる人員不足の際に、担当や事業所を超えて人手を融通することで、休みを取りやすい体制づくりに寄与しています。
年次有給休暇の取得率向上、所定外労働時間の削減
—「長時間労働の抑制」の取り組みについて教えてください。
東日本大震災による電力事情への対応も契機となりましたが、新しいライフスタイルの確立を目的に、2011年から24時間操業が必要な部門や家庭の事情を有する一部社員を除く全社員を対象とした「朝型勤務」を実現し就業時間帯を1時間繰り上げて8時00分から16時30分とし、不要・不急の所定外労働をしないよう周知しました。
また「ノー残業デーの導入」や「不要な業務、無駄な会議の削減」などの見直しを行うことで仕事の生産性を高めています。たとえば会議時間を削減するために、事前に会議資料を読み込んでから参加することや、スタンディングテーブルなどのミーティングスペースを新たに設置し、簡単な打合せなどは座らずに短時間で終わらせるような工夫もしています。
これらの活動を継続したことにより、社員ひとりひとりに就業時間内に効率よく業務を遂行し早帰りする意識が定着した結果、取り組み前に比べて現在の所定外労働時間は半減し、年次有給休暇の平均取得日数が増加しました。
・オエノンホールディングス株式会社・合同酒精株式会社
「所定外労働時間」、「年次有給休暇の平均取得日数」の推移
—朝型勤務の導入には苦労されたのではないでしょうか。社員の方が懸念された点はどのようなことでしたか。
朝型勤務により不利益が生じるのではないか、生活リズムの変化に対応できるだろうかなどの戸惑い、また子どもの送迎や遠隔地から勤務する社員や取引先などからも様々な意見や懸念が寄せられました。
そこで、会社として規則変更の趣旨と目的について理解を得られるよう、社員に対しフレックスや時短勤務、社宅の適用を含め説明を重ねたことにより問題を解消しました。
私自身の体験で感じていることは、朝型勤務は業務効率を上げる側面があると感じています。長年の生活習慣から朝型生活に体が慣れるまでは多少時間を要しましたが、慣れてくると朝の1時間を使って効率的に業務ができるようになりました。午前8時始業は、外部からの電話が少ないため、多くの企業が始業する午前9時までの一時間に集中して業務に取り組むことができます。そして午後4時間半以降は余暇となり家族や友人と過ごしたり、自己啓発で学びに活用するなど仕事と生活に潤いがもてると思います。
このほか、長時間労働の抑制を会社がすすめるにあたり、社員は多くの苦労があったと思います。同じ業務の仕方をしていれば休みやプライベートの時間は同じくらいしか取れませんので、社員それぞれが創意工夫した結果なのだと思います。
ダイバーシティプロジェクトが始動
そのほかに取り組まれたことはありますか。
2016年から社内公募メンバーによる「ダイバーシティプロジェクト」が始動し、①テレワーク導入、②女性の活躍推進、③男性育児休職取得の向上の3つを主要テーマに掲げ、各制度や施策を実施しています。
男性育児休職について、今期(2018年1月~10月末時点)は既に8名の取得及び申し入れがあり昨年の実績を大幅に超えている状況です。利用促進策にある、対象者への取得の推奨や、補助金の案内をすることに加え、上長に対しても取得をしやすい環境整備に会社として理解を求めていることが、奏功していると思います。
女性の活躍推進に資する施策として、自立的なキャリアを自ら主体的に切り拓くことを支援するために、女性社員が受講したい対外研修やセミナー等の費用を会社が負担する制度を導入しました。
テレワークは、現在試験導入段階です。昨年から適用事業所を拡大し、グループ会社を含めて全社でトライアルを行っています。希望制として週1回を目標に実施し、1回目の反省点を2回目で改善しながら制度を使いやすいものにするべく試行錯誤している状況です。
そのほか、社員間コミュニケーションについて、組織横断型プロジェクトチーム「鍛高譚プロジェクト」を立ち上げました。
主力製品であるしそ焼酎「鍛高譚」発売25周年を盛り上げようと、「鍛高譚」の浸透及び、若者の酒離れ脱却のためのアイディアを創出し、精力的に活動を展開しています。
「鍛高譚プロジェクト」メンバーは、各部署の中から若手中堅を中心とした社員が選ばれて構成され、プロジェクトのあらゆる企画を立案し運営しています。
2017年8月11~12日に開催された音楽イベント「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」に「鍛高譚ブース」を初出店しました。若者に人気の音楽フェスやSNSコミュニケーションを通じ今後も更なる活性化を期待しています。
どこまで本気で取り組んでいくか!
—これから「働き方改革」を始める企業の担当者に向けてメッセージをお願いいたします。
働き方改革は、組織全体で一体化した取り組みをすることが重要です。個々の業務を見直し改善することで生産性向上に繋がりますが、取り組みは個人でなく、1つの業務グループ、事業所、部門と組織全体で一体化した取り組みを行うことで削減できる内容は増えていくと思います。
当社は働き方改革に取り組み始めてから10年経っていますが、何か大きな目標を一度に達成したのではなく小さな取り組みを積み重ねてきました。小さいことをコツコツ積み重ねていくことで働き方に対する意識改革が進み、多様な働き方を認める社内の意識・雰囲気が醸成されてきたと考えています。
結局のところどこまで本気で取り組んでいくかということだと思います。本気でやらなければ、せっかく導入した制度がいつまでも定着しないまま形骸化してしまい何も変わらないからです。会社が働き方を本気で変えようとしている姿勢を社員にきちんと説明したり伝えていくことが重要だと考えています。
■会社データ
http://www.oenon.jp/
社名:オエノンホールディングス株式会社
所在地:東京都中央区銀座6-2-10
設立:1924年(大正13年)10月31日
従業員数: 955名(連結)
資本金: 6,946百万円(2017年12月31日現在)
売上高:787億3,900万円(連結・2017年12月期)
代表取締役社長:西永 裕司
上場市場:東京証券取引所
業種:製造業
事業内容:
【酒類事業】
主力カテゴリーの焼酎を始め、清酒、チューハイ、洋酒、ワイン等、グループ計1500アイテム以上のバラエティに富んだ酒類を製造・販売。また、製菓・加工用原料や酒類原料用・工業用アルコールの製造・販売
【酵素医薬品事業】
約100年にわたって培ってきた独自の発酵技術と免疫関連技術をコアテクノロジーとして、酵素・原薬・診断薬などの開発・製造・販売
※上記内容はインタビュー時点の情報に基づき作成されています。
※RISING SUN ROCK FESTIVAL は株式会社ウエスの登録商標です。
※その他、記載されている社名、製品名またはサービス名は各社の商標または登録商標です。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!
業務の自動化を実現する「WinActor」
製品サイトではWinActorのシナリオを実行した動画などを数多くご紹介しています。ぜひご覧ください。