海外送金をめぐるFintechの潮流と高まる外国人労働者のニーズ
目次
外国人労働者は増加傾向
日本国内の少子高齢化、人口減少が進行していて、日本の総人口は2008年から減少に転じています。一方、外国人労働者は増加傾向になります。外国人労働者は2017年時点で128万人と、2008年の48万人から比べなんと約3倍に増加しています。
出典:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成29年10月末現在)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192073.html
近年、都内の居酒屋やコンビニエンスストアで働く外国人を多く目にします。日本国内で労働に従事する外国人の年齢層は若く、生産年齢人口の維持への貢献が期待されています。
日本で働くことができる外国人の資格は以下の3つです。
- 留学
→留学生は週28時間までアルバイト可能 - 技能実習生
→農業や工場等で日本の技術を学びながら働く。最大5年間滞在可能 - 高度外国人材
→大学教授や医師など高度な専門性を有する労働者
現行、長期間の労働を認められているのは、高度外国人材のみです。しかしながら、外国人労働者の内訳を見ると、高度外国人材の割合は外国人労働者全体のうち19%にとどまっています。短期の就労しかできない資格外活動(留学)や技能実習の割合が多く、実態としてこれらの層が外国人の就労の大きな部分を担っていることが分かります。
出典:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成29年10月末現在)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192073.html
2018年に出入国管理法の改正案が可決されました。改正案では、特定の14業種で新たな在留資格が追加されます。人手不足解消のため、外国人労働者拡大の方向に政策の舵が切られたといえます。
これにより、今後さらに外国人の雇用が加速していくものと思われます。
海外送金
外国人労働者には、入国当初は祖国から送金を受け取り、収入を得てからは家族へ仕送りしたいという国境をまたぐ送金のニーズがあります。外国人労働者の増加に伴い、海外送金の利用の増加が予想されます。
海外送金には銀行を利用するのが一般的でしたが、銀行利用には次のような問題点がありました。
- 時間がかかる
→メガバンクのウェブサイトでは所要日数を公表していませんが、通常数日から一週間程度かかります。現行の仕組み上、中継銀行を介して送金処理を複数回行う必要があり、複数の銀行間で都度送金手続き、確認が生じるため、送金完了まで時間がかかるのです。
- 高額な手数料
→メガバンクでは、およそ8,500~10,000円ほどの手数料がかかります。(送金額を100,000円とした場合)
内訳は、送金自体にかかる手数料が3,000~4,000円、受取銀行で発生する手数料が2,000~3,000円、円為替取扱手数料(円のまま海外に送金する際にかかる手数料)が送金額の1/20(最低金額2,000~3,000円)です。
10万円を送金する場合、概ね一割程度が手数料としてかかります。前述の通り、複数の銀行を経由して取引を行う必要があるため、その分手数料が高くついてしまいます。
海外を中心に、このような高い負担を解消するためのサービスが生まれています。
仮想通貨
仮想通貨を利用して海外送金を行うことも可能です。そもそも仮想通貨の場合、国境という概念はなく、海外送金の場合も送金の仕組み、方法は国内送金となんら変わりありません。一般的な取引所での手続方法は以下の通りで、非常にシンプルです。
・送金先のアドレスを入力
・送金する仮想通貨の数量を入力
送金に要する時間は、仮想通貨の種類やトランザクションの状況等によって変動しますが、通常1時間もかかりません。また、取引所や取引通貨の種類、取引時のレートによって変わりますが、手数料は通常数百円程度です。
ただし、現状、法定通貨と比べて価格の変動が大きく、また、仮想通貨を有していない人は当然利用できない等の問題点もあります。
他の方法と比べて非常に安価な手数料や短い送金時間は利用者にとって魅力的でしょう。想通貨自体に対する信用が高まり保有が進めば、仮想通貨を利用した海外送金も普及していくものと思われます。
モバイル送金サービス
モバイル送金のプレーヤーも海外送金に参入しています。英国発のWorldRemitというサービスは、既存のモバイルマネーの事業者と連携してサービスを展開しています。
利用者は、銀行口座がなくてもPCやスマートフォンから国際送金が可能です。送金先は現在150カ国に対応しており、送金方法を現金、銀行預金、モバイルマネー、携帯電話のクレジットから選択可能です。
銀行インフラの整備が遅れているアフリカやアジア等で急成長を遂げています。
日本では、ベンチャー企業を中心とした海外送金への参入の動きは現状あまり見られず、セブン銀行の「海外送金(国際送金)サービス」や新生銀行の「Goレミット新生海外送金サービス」等、銀行を中心に新しい送金サービスを展開する動きがあります。
メガバンクを始めとする大手銀行も、サービスの利用拡大に対抗する動きを進めています。
従来の銀行間の国際取引のシステムを通さない新たな海外送金の仕組みの構築の検討も進められています。三菱UFJ銀行はブラジルやタイ等の銀行と連携し、米ベンチャーのリップルのブロックチェーン技術を使った送金の仕組みの構築を検討しています。
SBIホールディングス、みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀など約50行が参加する「内外為替一元化コンソーシアム」もブロックチェーン技術を応用した24時間対応可能な送金インフラの構築をめざしています。
まとめ
金融包摂という言葉があります。金融サービスにアクセスできない人に対して金融サービスを提供することで、貧困層の生活を改善していこうとする考え方のことを指します。
こうした言葉に代表されるように、既存の枠組みでは十分に満たせなかったニーズを、IT技術を利用して満たそうとする動きが広がっています。海外送金もその一つです。外国人労働者の増加に伴い海外送金に対する需要も高まっていくものと思われます。
本記事でご紹介した通り、海外送金には以下のような問題点がありました。
- 取引に時間がかかる
- 手数料が高い
これは、国際送金を行う場合、複数の中継銀行を介さなければならない仕組みになっているからでした。一方、本記事で紹介したサービスは、以下のような方法で上記の問題点を解消するものでした。
- そもそも既存の国際送金の枠組みを使わない(仮想通貨やモバイル送金の仕組みを利用する)
現状、多様なプレーヤーが参入しており、今後も既存サービスの拡大や新サービスの誕生が予想されます。今後の展開を注視していきたいと思います。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!
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