海外アウトソーシングの成功は、円滑なプロジェクト管理による生産性向上から

海外の労働者の賃金は日本に比べると安いことが多く、日本企業の多くが海外アウトソーシングを活用することで生産コストを抑えたいと考えています。ところが、海外アウトソーシングをすれば必ずしもコストが下がって利益が上がるわけではありません。適切なプロジェクト管理が成功の鍵を握ります。

今回は、海外アウトソーシングを成功させるためのプロジェクト管理の秘訣について解説していきます。

海外アウトソーシングは生産性の向上が必須

海外アウトソーシングを成功させる肝は、生産性の向上にあります。生産性が特に重視される理由や、どうすれば海外プロジェクトの生産性を向上させることができるのかについて、細かく分析していきます。

生産性はコストに直結する

海外アウトソーシングを行う目的のほとんどが、企業経営におけるコストカットでしょう。日本における人件費は高騰する一方ですが、海外では国によっては人件費や資源が安い状態がまだまだ続いています。海外アウトソーシングすることで大きくコストを抑えられる可能性は十分にあります。

ところが、人件費や資源がいくら安くても、生産性が低ければコストカットにはつながりません。海外アウトソーシングにプラスして現地での生産性の向上が図られることで初めて、コストカットが実現します。

つまり、現地でどれだけ生産性を高められるかによって、コストカットの達成率は大きく変わってくるのです。

文書・人材の取り交わしを最少にするプロジェクト管理で生産性を向上

生産性を上げるために最も重要なのは、日本の本社と現地のスタッフとの文書や人材のやり取りを最小限に抑えるプロジェクト管理です。常に人材が日本と現地を行き来したり情報が錯綜したりする状態だと、プロジェクト管理がスムーズに行えないでしょう。

例えば、現地スタッフの勤怠管理やマニュアルの整備、現地スタッフの教育のための人材派遣など、日本の本社から管理すべきことはたくさんあります。ところが、これらの文書や人材の取り交わしを行うケースが多すぎると、現場も日本本社も混乱してしまいます。できるだけ、現地で対応できることや作成できる文書は、現地で処理したいものです。

管理体制の確立のためには、現地で海外スタッフを束ねるリーダーの存在やスムーズに情報共有ができるシステムをつくる必要があります。日本の本社の意向を正しく理解し現地で海外スタッフを教育して取りまとめられる優秀なリーダーと、勤怠管理やマニュアルなどの情報共有が行えるシステムをもって、生産性の向上が達成されます。

海外拠点の生産性を高める円滑なプロジェクト管理体制の確立

では、海外拠点の生産性を高めるためには、具体的にどのようにしてプロジェクト管理を確立するのが望ましいのでしょうか?

リソース配置の最適化

海外アウトソーシングで最も重要な位置を占めるのが、人材リソース配置の最適化です。

すでにお話ししましたが、海外アウトソーシングを行う上では、海外拠点でスタッフを取りまとめる優秀なリーダーが必要です。日本本社の経営方針や方向性を正しく理解し、かつ、現地の文化や習慣の違いを理解し現地スタッフを教育して取りまとめていくことができる優秀なリーダーがいなければ、海外拠点での生産性の向上は難しいでしょう。

しかし、日本本社における中核的存在である優秀なスタッフを海外に送り出すことが難しく、特に人材不足が進む中小企業などでは困難かもしれません。ヘッドハンティングで海外プロジェクト経験がある優秀な人材を引き抜くという方法もあります。

最適な人材リソースを配置することで、海外拠点の生産性向上を目指す必要があるでしょう。

現地とのリアルタイム性のある情報共有

海外アウトソーシングを成功させるためには、海外拠点と日本本社との情報のやり取りをスムーズに行わなければなりません。しかし、日本から遠く離れた海外と多くの情報をリアルタイムにやり取りする際には、時差の影響や通信の問題などがあるため様々な工夫が必要です。なお、前にも述べたように、人材と文書でのやり取りを最小限に抑える努力もしなくてはなりません。

まずは、現地とのネットワークをつなぎ、リアルタイムに情報共有ができるシステムを構築しましょう。現地スタッフの勤怠管理や生産管理などに関するさまざまな情報をシステム化します。

日本本社に提供する情報を整理したり日本時間に合わせたりするために、現地で無駄な労力を費やすのでは生産性の向上は見込めません。現地と日本をつなぐネットワークとシステムが整備されれば、現地で働く日本スタッフや社員たちをバックアップできるでしょう。

徹底した業務整理・工数削減

人材リソースや情報共有ネットワークとシステムが整備された後は、現地での徹底した業務整理と工数削減に対応します。

海外のスタッフは、日本との生活習慣や考え方の違いがあります。異なる国民性の人たちに、無理に日本式の働き方を植え付けるのではなく、現地のスタッフの考え方を理解しながら、日本流の効率の良い働き方を理解してもらうようにしましょう。

また、仕事自体を分かりやすいものにする、作業を見える化して効率をアップするなどの工夫も必要です。現地スタッフが働きやすい環境を整えつつ、業務整理と工数削減に取り組みましょう。

明確な目標を設定し自発的に動かせる

人は他人から言われて受動的に動いていると、生産性を上げるのは難しいものです。あらかじめ明確な目標を設定して、現地スタッフにはその目標に向かって自発的に動いてもらうことで、生産性の飛躍的な向上が見込めるでしょう。

例えば、合理性や売り上げアップを重視するタイプのスタッフには個人ノルマを設定する、仕事をさぼりがちなタイプには時間給ではなく能力給を設定するなどです。

それぞれに明確な目標があれば自発的に働くようになり、生産性の向上につながる可能性が十分あります。

海外でのプロジェクトでは入念なリスク管理も必要

海外プロジェクトでは、国内プロジェクト以上に入念なリスク管理が必要です。

例えば、企業に対する帰属意識が高い日本人の正社員は、突然出社しなくなるということはあまりありません。ところが、海外では企業に対する帰属意識が薄く、簡単に転職したり出社しなくなったりするケースが頻繁に起こる場合もあります。

海外プロジェクトでは、日本で考えられないようなトラブルも起きるものです。大きな問題としては、その国との外交問題が発生し反日運動が起こる、現地で紛争やテロが起こる、通貨危機により激しいインフレが発生するなどということがありえます。また、従業員による不正や情報流出などの可能性もあるでしょう。

海外のプロジェクト管理では、国内プロジェクト以上にリスク管理を入念に行っておく必要があることがわかります。

まとめ

海外アウトソーシングを成功させるカギは、生産性の向上にあることを分かっていただけたと思います。生産性を向上させるためには、海外拠点との文書や人材の取り交わしを最小限にするプロジェクト管理を行うことが最も重要です。

そのためには、リソース配置を最適化し、現地との情報共有の仕組みを作った上で、徹底した業務整理と工数削減を行い、現地スタッフに目標を設定して自発的に働いてもらうなどの対策が必要になるでしょう。また、海外には思わぬリスクが潜んでいますから、入念なリスク管理も重要です。

留意すべきことは多岐にわたりますが、適切な管理体制の確立をもって生産性の向上ができれば、海外プロジェクトを成功に導くことができるでしょう。

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