注目度上昇中のビジネスモデル「ソーシャルビジネス」にフォーカス!“ミッション”は儲かることよりも社会的課題の解決?

ビジネスの形が多様化してきた昨今、儲けを生み出すための仕組み「ビジネスモデル」が関心を集め、その必要性が叫ばれるようになってきました。優れたビジネスモデルを構築することは、企業にとって事業の継続と成長を実現するための重要なファクターになります。しかし近年、「儲けること」を第一の目的としない「ソーシャルビジネス」というモデルが注目を浴びています。

今回は「ソーシャルビジネス」にフォーカスを当て、その背景や課題についてまとめました。

ソーシャルビジネスの概要

ソーシャルビジネスとは何か

ソーシャルビジネスは、「様々な社会問題をビジネスの手法を用いて解決しようとする」ビジネスモデルです。

環境問題や貧困問題をはじめ、少子高齢化、介護や子育て人材の不足、都市への人口集中化に伴う地方の過疎化など、現代では多種多様な社会問題が顕在化しています。このような問題を社会的課題として位置付け、解決を図るための取り組みを持続可能な事業として展開するのがソーシャルビジネスです。

NPO法人のみを対象としたビジネスモデルであると誤解を招くこともありますが、近年、一般企業でもソーシャルビジネスを理念に掲げる企業が増えています。

ソーシャルビジネスの構成要素

ソーシャルビジネスに求められる要件は、以下の3要素であると説明されます(出典:経済産業省「ソーシャルビジネス推進研究会報告書(平成23年3月)」)。

「社会性」:現在、解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。
「事業性」:ミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。
「革新性」:新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。

ソーシャルビジネスの立ち位置

ソーシャルビジネスは、「社会的に有意義な活動をする」という意味合いでは、ボランティア団体やNGOなどの活動、一般企業のCSR活動と似ていますが、両者とも異なる立ち位置にいます。

国からの助成金、寄付のファンドを主軸として活動しているものは、事業性の観点からソーシャルビジネスとは言えません。ソーシャルビジネスはあくまで、自らの事業の中で儲けた資金を回すことに重点を置いています。

また、ソーシャルビジネスはメイン事業の「目的」そのものが社会的課題の解決である必要があります。そのため、一企業として社会的責任を果たすという意味合いのCSRとも異なる性質を持っています。

注目される背景とその課題

なぜ今、ソーシャルビジネスが注目されるのか

時代の変化に伴い社会問題が多様化・複雑化していること、また、ネットの発達によりそれらの問題が顕在化してきたことが、ソーシャルビジネスが注目される理由の一つであると推測されます。

現代では社会問題が多様化しているだけでなく、ネットの発達によって、今まで死角になっていた社会問題が浮き彫りになってきました。行政の活動だけでは、多種多様な社会問題すべてに対し、十分に対処することは難しいです。

行政が対応できない部分を非営利の慈善活動で補おうにも、資金不足から取り組み自体が継続不可能になることもあり、安定しません。

そのため、「社会的課題やニーズを市場として捉え、その解決に向けた取り組みを継続できる」仕組みが必要となったのです。ソーシャルビジネスの仕組みは実に合理的と言えます。

ソーシャルビジネスにも課題はある

ニーズがあり合理的で、一見問題がなさそうに見えるソーシャルビジネスにも、課題はあります。それは、資金と人材の調達の難しさです。

まず、ソーシャルビジネスのモデルを構成する上で、どこ(誰)から儲けにあたる資金を得るかは大きなポイントとなります。社会的課題を解決するという性質上、サービスの受益者からは資金を得にくいです。

例えば、相対的貧困に苦しむ子ども達の学習支援を行う事業を立ち上げたとして、対象となる子ども達やその家庭から資金を得ることは困難であり、モデルとして破綻してしまいます。つまり、実際のサービス受益者以外から、どのように資金を得るかは工夫が必要です。

また、利益の創出が主な目的ではないため、従業員に対する福利厚生などの待遇面で一般的な企業より劣ってしまうこともあり、人材確保に苦戦することもあります。そうなると採用は、「社会をより良くしたい」という個人の意思の強さに大きく依存してしまうのです。安定的な人材確保、教育が自社内だけでは整わず、他企業の高スキル社員の副業として従業員を受け入れるケースも珍しくありません。

もちろん上記のような課題は一種の傾向であり、企業の悩みは様々です。ただ、一般的な企業が問題を抱える理由とは異なった側面から、悩みが生まれることもあり得るのです。

まとめ

ビジネスモデルは儲けを生み出すための仕組みですが、ソーシャルビジネスの場合、単に儲けを生み出すだけでは「成功」とは言えません。

ニーズが増え事業が拡大すればするほど、売上が拡大することはビジネスの常ですが、ソーシャルビジネスにおいては、それはあまり喜ばしいことではありません。ニーズがあるということは、それだけ社会問題も大きいということを意味するからです。

本来であれば、ソーシャルビジネス自体が必要なくなる社会こそ、ソーシャルビジネスを掲げる企業が目指す社会の理想形であり、これは、ソーシャルビジネス業界特有のジレンマとも言えます。

参考資料

■経済産業省:<報告書>ソーシャルビジネス推進研究会報告書(PDF形式:1079KB)

https://www.meti.go.jp/policy/local_economy/sbcb/sb%20suishin%20kenkyukai/sb%20suishin%20kenkyukai%20houkokusyo.pdf

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