プロジェクトにおける工数見積もり方法のコツ、成功に導く開発計画を
開発プロジェクトの計画段階で、工数見積もりは非常に重要です。工数見積もりが正確であれば、計画通りにプロジェクトが進みやすくなります。ところが、見積もりの方法がわからないと頭を悩ませるエンジニアや管理者も多いのではないでしょうか。
当社もERPを開発しているシステム会社ですので、見積もりの重要さや難しさを理解しています。本記事では当社が考える見積もりの方法のコツや見積もり時の注意点についてもお伝えしながら工数見積について説明します。
工数管理とは何かを知りたい方は以下の記事をご覧ください。
目次
工数見積もりの精度が重要視される理由とは
なぜ、工数見積もりは重要なのか、その理由を見てみましょう。
ビジネスにおける信頼を得るため
プロジェクトが計画通り完了し、顧客に納める納品物を納期にきちんと間に合わせる、ということはビジネス上で重要であることは言うまでもありません。
計画通りに動けるのは、高い正確性をもって見積もりを実行しているからです。 計画通りに完了させることで、周りからの信頼を得ることができます。
誤った見積もりによる納期遅れや予算超過は、クライアントとの関係に悪影響を及ぼし、信頼関係を損なう要因ともなり得るのです。
無理のない労働環境を構築するため
見積もりがどんぶり勘定でいつも納期間際になると徹夜が続くという職場もあると思います。このような職場では、従業員たちは疲弊しきってしまうでしょう。
正確な見積もりのもと計画を立てることで、プロジェクトの進行に余裕が生まれ、従業員たちの無理のない労働環境を作ることができます。見積もりの精度を高めることは従業員のメンタルヘルスを守ることにもつながります。
また、工数見積もりを適切に行うことにより、業務負荷を均等に分散させることが可能になります。こうした配慮があれば、従業員のモチベーションも向上し、より良い成果が期待できるのです。
根拠のない見積もりはプロジェクトの失敗に直結する
あなたの職場では、スケジュールを立案する際にどのような方法で見積もりを出しているでしょうか?そして、その見積もりにどのような根拠があるでしょうか?
見積もりに根拠がなければ、プロジェクトの失敗は目に見えています。納期が決まればおのずと計画は決まるというのは、見積もりを考慮できていないと言えます。納期から逆算して計画を決めるということは、決してやってはいけません。
よく起こりがちなのが、過去の実績ベースで工数を見積もるという方法による失敗です。確かに、前回は同じような作業をこれくらいの工数で終わったから、次も同じで良いだろうという考え方は間違っていません。
しかし、仕事には様々な要素が関係してきますから、それを考慮に入れる必要があります。例えば、担当者のスキルや体調、予定なども重要です。
前回の作業はベテラン社員が担当したが次は経験が浅い新人が担当するのであれば、同じような計画にすべきではありません。また、前回と同じような作業だったとしても、今回は他部署との連携が必要、扱うシステムが異なるなど、事情が変わる可能性もあるでしょう。前回の実績をそのまま流用しても、参考にならない場合もあります。その時の仕事内容を慎重に吟味する必要があるのです。
工数見積もりにおいて意識すべきこと
見積もりで当社が意識していることは、「見積もり担当者によるブレ」を少なくすること、「見積もり項目の抜け漏れを減らすこと」です。実現するための方法・コツについて当社のプロジェクトマネージャー(PM)に話を聞きました。
作業ステップの抜け漏れをなくす
作業見積もりをする際には、作業を細分化して把握する必要があります。どのような作業があるのか、どの作業の難易度が高いのか、時間がかかる作業はどれなのか、作業の内容を認識するためです。
まとまった作業をそのままの単位で見積もると、どんぶり勘定になりがちです。例えば、コーディングをする際には、設計書の読み込み、モジュール単位の決定、モジュール内容の決定という作業があって初めてコーディングを行うと思います。
単にコーディングの規模だけから2人日などと工数を決めてしまうと、誰がどの作業を行うのかが分からず見積もりが甘くなります。作業単位を細分化して個々の作業ごとに工数を見積もることで、より正確性が向上するのです。
「何を」「どのくらいの時間で」「誰が」行うのかを明確にすることで、各タスクにかかる工数をより正確に見積もることができます。そのためにも、タスクの抜け漏れをなくすことが大切です。
当社では、ゼロから細分化をはじめると、パラメータ設定工数を入れ忘れていたなどの抜け漏れが発生してしまう可能性があるため、テンプレートを用意し対策しています。
見積もり担当者によるブレをなくす
見積もりをする担当者によって、内容が大幅に変わってしまっては顧客からの信用を失ってしまいます。当社では、担当者によるブレを防止するために、顧客要望に対して、作業内容の種類はなにか、それぞれの難易度はどれくらいかを選択できるような見積もり用のテンプレートを作成しています。
顧客の要望に対して、それぞれ種類と難易度を選択すると自動で基本的な見積もりが出る仕組みです。
またその他に以下のようなパラメータを使って見積もりを算出しています。
- スコープから要件定義工数の工数を算出
- カスタマイズ規模からテスト工数を算出
- 画面数からパラメータ設定工数を算出
上記のような仕組みで担当者ごとのブレをなくしています。
ただし、前述したとおり、プロジェクトは毎回同じという単純なものではないため、それぞれで考慮すべき内容に応じて多少の調整を行う必要があります。
スケジュールにバッファを設定する
バッファ(余裕)を設定することはとても重要です。どんなに正確に作業を見積もって計画を立てたとしても、不測の事態が起きることは十分考えられます。関係者の予定が空かずに仕事が中断する、渋滞で仕事に必要な資材が届かないなど、計画段階では予測できない問題が起こることがあります。あらゆる事態に対応できるよう、計画にはバッファを持たせましょう。特に、経験の無い作業がある場合などは、十分にバッファを取る必要があります。
もし、計画通り順調に進んで納期前に仕事が終わったとしても、それはそれで問題ありません。ただし、バッファを取りすぎて仕事が終わるのが早すぎる場合は、計画が甘いという批判を受けるでしょう。適正な範囲のバッファ設定が重要です。
例えば、全体の工数に対して10%のバッファをあらかじめ計上することを検討してみてください。予想外の問題や遅れに対処できる余裕を持ってスケジュールを組むことで、納期の遵守が可能になります。
第三者に確認をしてもらう
工数見積を作成したら、必ず第三者がレビューを行いましょう。複数人で確認できるとなお良いです。
当社では受注前の正式なお見積りでは、プロジェクトマネージャー(PM)が作成した見積もりを複数の担当者が確認・承認をしないと、お客様へ提示することができないルールとしています。これにより、抜けている箇所はないか、それぞれの見積もりは適切か、リスクが考慮されているか等を確認し、見積りの精度を高めています。
代表的な見積もり手法で工数を算出する
すでに世の中で確立されている実績のある見積もり方法を利用するのも有効です。
ここでは、いくつかの代表的な見積もり手法を紹介します。仕事内容や担当者に合った手法を選んでみてください。
類推法(トップダウン見積法)
類推法(トップダウン見積法)は、過去の似たような仕事内容や規模のプロジェクトデータをもとに、大まかな工数を算出する方法です。
この手法の利点は、迅速に見積もりを出せることです。例えば、設計書作成やコーディング作業などは、過去の実績を参考にするだけで十分正確な見積もりを出せることがありますので類推法が有効な手法となります。
ただし、類推法は詳細な情報が不足するため、精度が低くなる可能性があります。
ページ数やステップ数などの作業規模、担当者のスキルや経験値、作業の難易度などが似ているプロジェクトでなければ、全く参考にならないので注意が必要です。類推法を使う際には、できるだけ同じ条件の実績を参考にしましょう。
また、あくまで参考値であるため、必ず他の見積もり手法と組み合わせて使用し、信頼性を高める必要があります。
WBS積算法(ボトムアップ見積法)
WBS積算法(ボトムアップ見積法)はタスクを細分化し、各タスクごとに工数を見積もり、それを積み上げて全体の工数を導き出す方法です。この方法は、各タスクの具体的な作業内容をもとに見積もりを行うため、全体の計画が非常に明確になります。 それぞれのWBSの見積もりが詳細であればあるほど、正確な見積もりを出すことができます。
プロジェクト全体のスケジュールを立てる際に、各工程を洗い出し、タスクごとの負荷や必要なリソースを把握できれば、リスクの特定や進捗管理がしやすくなります。
全体像を把握しながら、詳細を詰めていくボトムアップ見積法は、特に複雑なプロジェクトに向いている方法です。
パラメトリック法(係数法)
パラメトリック法(係数法)は、全ての作業の工数を決める要素を変数として設定し、関数を利用して工数を計算する手法です。変数は過去のデータをもとに算出するため、類似のプロジェクトから得られた知見を活かしやすくなります。
工数を決める要素としては、作業規模や作業の難易度、担当者の人数、スキルなどがあり、適切なパラメータの選定が重要になります。
この方法のメリットは、数値化されたデータをもとに見積もりを行うため、感覚に頼ることなく客観的な決定ができる点にあります。
ただし、パラメトリック法は必ずしもすべての状況に適しているわけではなく、関連するデータが不十分な場合や、変数間に強い相関関係が存在しない場合には、精度が低くなる可能性があります。そのため他の見積もり手法と組み合わせて利用することが推奨されます。
過去の実績や経験に基づき設定する
見積もりを出す際に、過去の実績をそのまま流用してしまうのは問題がありますが、ある程度経験に基づいて設定することは有効です。見積もりを決める要素として、作業規模や作業の難易度、担当者の人数やスキルなどがあります。
作業規模や担当者の人数などは定量的な情報ですから疑いの余地がありません。しかし、作業の難易度や担当者のスキルなどという情報は定性的な要素であり、経験豊富な管理職しか算出することができないでしょう。あの時の作業はこうだった、こんな難しい問題があったのでこういうスキルがある担当者が必要だ、など見積もり時に経験が必要になる局面が出てくるでしょう。
過去の結果を鵜呑みにするのではなく、現在のプロジェクトの特性に応じて調整が必要です。
見積りは作成後も随時アップデートする
見積もりの甘さが見つかったり、見積もり情報に変化が現れたりすることがあります。情報は随時、必ずアップデートしましょう。アップデートを重ねていくことで、より精度の高い見積もりができるようになります。
また、タスク終了後に実際の進捗に対する見積もりと比較することも有効です。実際にかかった工数と見積もりを比較し、どこで誤差が生じたのかを振り返ることで、次回に向けた改善点を探ることができます。
工数管理に便利なツール紹介
見積もりの精度を高め、プロジェクトの進行をスムーズにするためには工数をきちんと管理することが大切です。正確な工数を管理するためにはツールを導入することをオススメします。適切なツールを使用することで、タスク管理や進捗の把握も容易になり、チーム全体の生産性向上にも貢献します。
エクセル
エクセルは自由度が高いため、工数管理表を作成することが可能です。エクセルは多くの企業で採用されているため、追加費用なく利用でき、汎用的なテンプレートが豊富にあることもメリットの1つです。ただし、自社に合わせた調整は少なからず必要になる点は注意が必要です。
また、複数人が編集する必要がある場合に同時編集ができない、変更履歴が残らないなどのデメリットもあります。
プロジェクトの規模や数がそれほど大きくなければ、エクセルでも問題ないでしょう。
工数管理ツール
工数管理のツールを利用することで、プロジェクトの状況を可視化し、正確な進行管理が可能となります。エクセルと違って同時編集ができ、スマートフォンやアプリからの入力に対応している場合もあります。
初期費用や月額費用がかかることが多いですが、中には無料で利用できるものもあります。ただし無料のツールは利用機能やユーザー数に制限がある場合が多いため、自社で利用したい範囲を確認して適切なものを選択しましょう。
ERP
ERPシステムは企業が必要とする様々な機能が1つになったシステムです。プロジェクト管理や工数見積もりに特化したERPを導入することで、見積、受注、アサイン、人件費や外注費の管理なども1つのシステムで統合できるため、業務効率化に大きく貢献します。
ただし、導入にはそれなりの期間と費用がかかるため、自社に本当に必要なのかを慎重に検討する必要があります。
エクセル管理では不十分となったタイミングで、検討を始める企業も多いです。
株式会社ビーブレイクシステムズが提供するクラウドERP「MA-EYES」は、主にシステム開発業向けのプロジェクト予実管理に特化したシステムです。日々、システムに工数を入力すると、それぞれの単価に応じてリアルタイムに予定との比較ができます。
標準機能を豊富に備えているだけでなく、自由度高い基盤で作られているため、プログラミングの知識がなくても自由にカスタマイズができる機能が豊富です。例えば、汎用分析機能では、集計・分析したい項目を選択することで、レポートに出力することができます。
まとめ
工数見積もりはプロジェクトの成否に直結するだけでなく、チームの働き方や顧客との信頼構築にも深く関わります。正確な工数見積もりを行うためには、過去のプロジェクトデータや類似案件の分析を基に、きちんとした根拠を持った数値を提示する必要があります。
工数管理に便利なツールを活用することも効果的です。タスクの進捗管理を見える化し、負荷調整が容易になります。
工数管理に課題のある方は、是非、IT業向けのERPシステム「MA-EYES」をご検討ください。
筆者プロフィール
- 新しい「働き方」やそれを支えるITツールにアンテナを張っています。面白い働き方を実践している人はぜひ教えてください!
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